Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

スパイの妻

2020-10-28 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2020年/日本 監督/黒沢清

人間のおぞましさ、そして狂気と裏腹の愛。そこに、気味の悪い死体や不気味なフィルムという黒沢らしさが加わり、今まで見たことのない夫婦愛映画に。私こそ夫と運命を共にするのにふさわしい。退屈な日常を捨て、狂気に走る妻を演じる蒼井優が「お見事!」でした。

恐怖描写が少ないだけに本作で監督賞はファンとしては残念…と思っていたが、いま考えるに、これ「寝ても覚めても」の濱口監督らしい脚本で、人の脚本をいかに黒沢的に演出・撮影したかというのが見て取れる。なので監督賞がふさわしいんだなと納得。でもやっぱりもっと怖い黒沢が好きです。

82年生まれ、キムジヨン

2020-10-22 | 外国映画(は行)
★★★★ 2019年/韓国 監督/キム・ドヨン

女に生まれてしまったことの業が全方位から攻めてくる。肉親、会社、社会。放たれ続ける矢にジヨンの心は崩壊する。様々な立場の女の苦悩をジヨンが代弁する。まるでイタコのように。成仏できなかった女たちの無念。それらが可視化され嫌が応にも自分の人生を振り返ってしまう.

私はチーム長と同世代。雇用均等法が成立し、男たちの作ったルールの中で男たちと同じ様に働いた。体を壊して辞めていく先輩を何人も見送ったあの時代。この手の物語を見聞きすると、後輩の女性たちに何も残してなくて申し訳ないという思いで心が張り裂けそうになる。

映画のラストは原作とは違うと言う。確かジョーダンピールの「ゲットアウト」も現実があまりに辛いためラストを変えたと聞いた。たぶん社会はそう簡単には変わらない。しかし、女の生き難さをここまでストレートに、つまびらかに表現する事から新たな一歩が始まるということを信じたい。

シカゴ7裁判

2020-10-19 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/アーロン・ソーキン

裁判が進むに連れ明かされるデモの経緯。時系列を行き来させ、裁判の行方と暴動の行方、両方にハラハラさせられる語り口が上手い。個人の主張を国家や警察が阻む時、私たちはどうすればいいのか。BlackLivesMatter、香港デモ、そして日本でも。現在進行形の問題として突きつける力作。

ただ配役に関しては少し馴染めない部分も。特にヒールを演じるジョセフゴードンレビットと活動家のエディレッドメイン。今までのイメージとは違う役だからこそ何かインパクトを残して欲しかったがハマっていない印象。対してサシャ・バロン・コーエン、おいしい所をかっさらう。さすがです。

鴛鴦歌合戦

2020-10-17 | 日本映画(あ行)
★★★★ 1939年/日本 監督/マキノ正博

この陽気なオペレッタが戦時中の1939年制作ということに驚く。時代劇だが堅苦しい言い回しは皆無。「ねえねえお茶を入れてくれよ」「なななんと」と言ったセリフが小気味よい。底抜けの明るさに映画は自由だということを教えられる。色とりどりの番傘はカラーなら美しかったに違いない。

ナルコス メキシコ編 シーズン2

2020-10-14 | TVドラマ(海外)
★★★★  Netflix

主人公、頭はいいが人望がないというのが致命的。自分もそれがわかっているから恐怖政治に走る。荒くれ者たちの駆け引きが目まぐるしく展開される脚本がすごい。中南米の大邸宅やホテルでの豪華さにも目を奪われる。カリカルテル再々登場で点と点がつながる面白さ。

各地方を牛耳るプラサは暴力団の組みたいなもの。親玉同士の腹の探り合い、裏切り。まさに仁義なき戦い。しかし、政治と警察の癒着ぶりがあれ以上に凄まじい。あと人物みんなめちゃくちゃクセが強い。私のお気に入りはニコラスケイジ似のアマド。次シリーズでどうなるか楽しみ。

アップグレード

2020-10-12 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/リー・ワネル

ブレランやターミネーターなどの名作エッセンス香る近未来SFの秀作。体に埋め込まれたAIチップが自分だけに話しかけてくる…そのシチュエーションはゾッとするものでホラー的面白さも。またその声がHALにソックリというのも2001年ファンには嬉しい。あと、近未来の人は禅がお好き。

イエスタデイ

2020-10-10 | 外国映画(あ行)
★★☆ 2019年/イギリス 監督/ダニー・ボイル

ビートルズのいないパラレルワールドというSF的ひねりを繰り出しておいて設定放置とは…。ちょっと脚本が甘々すぎやしませんか。版権の切れたビートルズをスクリーンでガンガン鳴らしたかっただけなのではと突っ込みたくなる。あと、エドシーラン人が良すぎ。なんでこんな評価高いの。

プリデスティネーション

2020-10-08 | 外国映画(は行)
★★★★ 2014年/アメリカ 監督/マイケル・スピエリッグ ピーター・スピエリッグ

TENETの余韻で再鑑賞。 それ全部●やん!というアクロバティックなオチが見事。バーカウンターで語られるジョンの数奇な運命。ハードボイルドとフェミニズムを両立させる展開も秀逸。人生を投げ出さず生きる意味を追い続けたからこそ、結末が切ない。人間ドラマとしても秀作

TENET テネット

2020-10-05 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン

キップソーン始め名だたる物理学者が監修。素人のツッコミは野暮というもの。科学的にはありうる世界で地球滅亡を防ぐ大スペクタクルアクション映画。時間の前と後から挟み撃ちなんて、よく映像にしようと思うなー。映像はもちろん爆音にも痺れる。可能な限りIMAXで!

時間逆行という難しさは確かにあるが、最終的には愛が人を動かすという超絶ベタな落とし所があるので、そこはあまり気にならない。それに「そいつは●●だった!」という単純な仕掛けが十分面白い。ルドウィグ・ゴランソンの音楽もめちゃくちゃかっこいい。あー楽しかった。