Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

クーリエ 最高機密の運び屋

2022-02-17 | 外国映画(か行)
★★★★  2020年/イギリス・アメリカ 監督/ドミニク・クック

カンバーバッチ、これでアカデミーノミニーでしょ?ってくらいの熱演。一般人が図らずもスパイをさせられ怒涛の展開。究極の状況で人は正義を貫けるのか。国家は個人を助けるのか。ブリッジオブスパイにも通じる。巻き込まれサスペンスとしても実に面白い。力作。

Girl ガール

2021-10-14 | 外国映画(か行)
★★★★  2021年/ベルギー 監督/ルーカス・ドン

女性になるために、バレリーナになるために、血の滲むような努力を続けるトランスジェンダーのララ。ドキュメンタリーのような手法がさらにその痛々しさを増幅させる。周囲の大人は親身だし理解もある。それでも突き当たる壁。ララの悩みもがく姿とひたすら受け止める父に心打たれた。

KCIA 南山の部長たち

2021-10-04 | 外国映画(か行)
★★★★☆  2019年/韓国 監督/ウ・ミンホ

まるでスピルバーグのスパイ物のような風格。端正な絵作りで抑えに抑えた演出と森で逃げ惑うパク部長のスローモーションなど叙情的シーンとのコントラスト。そしてあのラストカット。暗殺を成し遂げてどうなる?と高まる気持ちをあのカットで収めるセンスに完敗。傑作。

イ・ビョンホンとクァク・ドウォンが確執の関係というキャスティングが最高。2人とも絶体絶命のところで足元を見るというシーンがあるし、日本語で友情を交わすシーン、盗聴中に歌い出すシーンなど、さらりと差し込まれるカットが心を揺さぶる。まるで付け入る隙がない。完璧。


THEGUILTY/ギルティ

2021-10-03 | 外国映画(か行)
★★★☆  2021年/アメリカ 監督/アントワン・フークア

オリジナルよりも感情の起伏が前面(こんなキレ気味な911担当者は困るぞ)になり、それが却って作品の邪魔をしている感。自分が正義だと思った行動、その顛末によって己の罪を再び深く認識する。タイトルの持つ意味がオリジナルより伝わりづらくなったのではないか。


CLIMAX クライマックス

2021-09-04 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/フランス・ベルギー 監督/ギャスパー・ノエ

誇りを持って世に出すフランス映画、ドーン!もうタイトルで痺れ、冒頭ダンスシーンで5億点。ダンサーたちの驚愕の動きに酔いしれる。バッドトリッパーたちの一夜の鬼畜大宴会。妊婦の腹を蹴るという絶対に許せない不道徳行為をも呑み込む狂乱の宴。背徳的な魅力に抗えない。

ただのバカ騒ぎのように見えて、いろんな伏線が仕込まれている。LSDによって見える幻覚は自身の心の闇によるものゆえ、それぞれのダンサーの奇行は彼らの何を呼び覚ましているのかと想像を巡らせてしまう。嘔吐、肉欲、発火、暴力。混沌の地獄絵図とわかっているのに、リピート鑑賞してしまった。

コラテラル 真実の行方

2021-08-26 | 外国映画(か行)
★★★★☆ Netflixドラマ

傑作。デビッドエアー脚本、キャリーマリガン主演の骨太ポリティカルサスペンス。全4回なので長めの映画を見たよう。タイトで緊張感あふれる演出、警察・陸軍・MI5の三つ巴のスリリングな駆け引き。そして重要人物は全て女性。驚くほどに抑えた演出がBBC印。

中東移民問題を幾度となく扱ってるBBCドラマだが、配信されるもの全部傑作ってどうなってるんでしょうか。妊娠7ヶ月の刑事を演じるキャリーマリガン。なんと撮影中実際に妊娠していたとか。陸軍将校役も女性だが単なる目配せではなく、女性であるべき意味がしっかり落とし込まれており何度も膝を打つ。

一人の移民青年の殺人事件をきっかけに、解決への道があっちに行ったりこっちに行ったり、最後の最後に大逆転。それをこれ見よがしに見せないのがほんとBBC!これがアメリカなら「どうだー!」みたいな演出になるはず。静かにロンドンタクシーに乗ってキャリーが去っていく。渋い。渋すぎる。

恐怖のメロディ

2021-08-16 | 外国映画(か行)
★★★☆ 1971年/アメリカ 監督/クリント・イーストウッド

バーで引っ掛け一夜を共にした女。翌日から彼女気取りで狂気のストーキング。完全に一線を超えた女の思い込みが怖いのなんの。何度も命を狙われる展開は完全にホラー。刃物を振り回すシーンがまんまサイコなのは笑った。御大イーストウッドもヒッチコック演出をしていたんだと感慨。

今やミソジニー映画として名高い危険な情事の元ネタとも評される本作。確かに女は怖いという印象の植え付けもなくはないが、イブリンが元々DJであるデイブのファンであるため、純粋にストーカー恐怖を描いているように感じられる。熱狂的ファンの暴走という視点では、ミザリーの方が近いのではないか。

クレイジー・リッチ!

2021-07-05 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/ジョン・M・チュウ

ゴージャスな生活にめくるめくファッションとゲイのアドバイザー。これSATCじゃん!音楽や映像もSATC印満載でなるほど当たった理由がわかった。 彼の母とのケリのつけ方が中国由来の○○というひねりも面白い。清々しいほどのどんちゃん騒ぎ。こんなの映画でしか体験できない。

記者たち 衝撃と畏怖の真実

2021-06-21 | 外国映画(か行)
★★★☆ 2017年/アメリカ 監督/ロブ・ライナー

イラクに大量兵器はなかった。大手新聞が政府見解を垂れ流しにする中、地道な取材で隠された真実を暴く。911が起きた直後からイラクを攻撃する(したい)という説が政府内で発生していたという事実に驚愕。しかし映画的には実にあっさりとした進行で物足りなさも残った。

隔たる世界の2人

2021-04-21 | 外国映画(か行)
★★★★ 2020年/アメリカ 監督/トレイボン・フリー マーティン・デズモンド・ロー

黒人の生き難さをタイムループという手法で見せた傑作短篇。タイムループ物は「何度もやり直す内にいい方向に転じる」というのがほとんどだ。しかし本作はその王道の展開を裏切る。そういう意味では斬新だが、なんという皮肉。どんなに努力しても…静かな叫びに心が締め付けられる

獣の棲む家

2021-03-25 | 外国映画(か行)
★★★★ 2020年/イギリス 監督/レミ・ウィークス

スーダンの難民夫婦。英国政府に家を提供されるが怪奇現象が次々と起こる。 呪われた家ホラーの仮面を被った社会派。静かでアート作品のような佇まい。そして徐々に明かされる夫婦の秘密。生きる事を選択した人の苦悩が胸に迫る。ダルデンヌやケンローチを見た時のような余韻。

なぜ怪奇現象が起きるのかという興味を、この難民夫婦の秘密へとスライドさせる技法が見事。ドラマチックに見せない非常に抑制の効いた演出で、夫婦が抱える秘密が明らかになるシーンは真相を捉えられない人もいるのではと心配になる程だ。しかしそのあまりに静かな筆致が本作の個性でもある。

薬の神じゃない!

2021-03-13 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/中国 監督/ウェン・ムーイエ

人助けという高邁な精神ではなく単に金儲けでインドから白血病の薬を仕入れたチョン・ヨン。しかし、高額支払いに苦しむ患者との交流を通じ彼の心も変わっていく。演出がややベタだが、国と企業の暗部、患者の苦悩、詐欺師の存在など様々な要素を盛り込んだ社会派エンタメを堪能。

先ほど、バイデン大統領がインド製のワクチンを認めるというニュースをしていて、タイムリーな鑑賞に。個人の行いが国を動かしたというのは胸熱な展開だけど、穿った見方をすれば、中国も社会状況を見て変化しているというメッセージとも受け取れる。ひねくれてますかね私。

THE GUILTY ギルティ

2021-02-01 | 外国映画(か行)
★★★★ 2018年/デンマーク 監督/グスタフ・モーラー

声を頼りに誘拐された女性を助けようとする警察官。だがしかし。 誰かを救う善意の行動なのに、事件は予期せぬ方向へ。一刻を争う事態の中であぶり出される人間の先入観や保身。観客も現場が見えないだけに最後まで緊張感が持続。どんでん返しの展開に人間ドラマを盛り込む脚本が秀逸。

こういう映画で途中で展開がわかりましたなんて人がいるんですけど、私はそういう試しがなく、「ウヒョー」とソファでひっくり返ったりしているので、我ながら本当にいい観客だと思います。

国家が破産する日

2021-01-29 | 外国映画(か行)
★★★★☆ 2018年/韓国 チェ・グクヒ

1997年韓国で起きた通貨危機を描く。正義を貫く銀行人、腹黒い官僚、一攫千金を狙う金融マン、工場経営の庶民。物語の単なる駒ではなく、それぞれが1人の人間として立ち上る演出がすばらしい。白眉は20年後のエピローグ。最後の1分まで批評性を追求する姿勢に打ちのめされた。傑作。

庶民を切り捨て金持ちを助ける政府。ここで描かれる社会構造は日本とほぼ同じだが、このジャンルの映画では日本と韓国は途轍もない差がついてしまったと思わされる。韓国の政治や金融に詳しくなくても誰でも楽しめる饒舌な語り口、役者陣の力量、政治や社会に対する批評性。何もかも完璧だ。特に若い女性がハン部長の元に不正を訴えに来るという展開が胸熱。

コロンバス

2021-01-27 | 外国映画(か行)
★★★ 2017年/アメリカ 監督/コゴナダ

建築好きなので期待モリモリで観賞。序盤こそモダニズム建築の決まった構図に興奮したものの後半全くノレず。監督は小津ファンらしいがあの静かな佇まい効果は小津特有の毒あってこそと個人的に思っている。本作、年の差男女のうっすらした悲哀はあるが、薄味すぎて自分には合わなかった。まさかの眠気に襲われる。