Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

工作 黒金星と呼ばれた男

2020-07-31 | 外国映画(か行)
★★★★☆ 2018年/韓国 監督/ユン・ジョンビン

工作員、諜報部の人間関係を把握しようと終始頭はフルスロットル。北朝鮮と韓国の政治的な駆け引き、ここまで踏み込むかの圧倒的リアリティ。身元がバレたら殺されるかも、のスリリングな展開が続き、終盤まさかアイツとアイツの友情に泣かされるとは。見応え抜群。力作。

小道具がの使い方が上手い。最も印象的なのはピカピカに磨かれた眼鏡だ。主人公のかけた眼鏡に相手の持ち物や部屋の様子が映る。そこに映る物を信じていいのか。緊張感が一気に高まる。そして北朝鮮の風景が圧巻。現地撮影ではないかというクオリティ。自分も潜入員になったように鼓動が早まった。

劇場

2020-07-31 | 日本映画(か行)
★★★★ 2020年/日本 監督/行定勲

身勝手な男に狂わされる女の話という古典。その金字塔は成瀬の「浮雲」だと思う。こんなクズとは早く別れろと念じながら見る。 太宰を令和に放り込んでみたい。又吉氏の思いは見事に映像化された。淀み、溜まる、男の自意識。不快でも共感でもいい。観客もまた自分の淀みに対峙する。

ただし、良くも悪くも東京の映画であり私自身は作品との距離感を感じた。「おろか」「まだ死んでないよ」など敢えて厨二病丸出しのネーミング、そして下北沢。それらをもっとクソダサく見せてくれたら。まだまだオシャンティに見える映像に監督の自意識を感じる。それも距離感の理由の一つ。

ユキサダ作品のいかにも業界人ですよといったムードを感じ取ってしまう自分もたいがい自意識過剰なので、ユキサダ作品がしんどいのだと思う。あと、松岡茉優氏は最高の役者だと思うが、この手の役柄はいささか飽きた。もっと違う役を見たい。

ドロステのはてで僕ら

2020-07-27 | 日本映画(た行)
★★★★ 2020年/日本 監督/上田誠

2Fの部屋と1Fのカフェが2分後の世界で繋がるSF喜劇。これ2分という長さが絶妙! タイムTVで遊ぶうちに現在が未来に操られているような錯覚に。今を生きる自分の自由意志は?そこもちゃんと答を提示してくれる。ワンシチュエーションの長回しも見事。やられた!を楽しむべし。

透明人間

2020-07-25 | 外国映画(た行)
★★★★☆ 2020年/アメリカ 監督/リー・ワネル

あの手この手の男性支配に苦しめられる女性を描くフェミニズム映画として秀逸。横移動するカメラに何も映らない映像。こちらの予想の斜め上を行く暴力描写。恐怖演出もキレキレ。 また、見えない物の恐怖はSNSの中傷やコロナウィルスにも当てはめられる。間違いなく2020年を代表する一本。

踏み込んだなと思うのは女性の「まだ子供はいらない」という考えが亀裂の一因になっていること。これはどのカップルでも起きうる案件で女性側としても見る人によっては複雑な感情を抱くはず。 男のあまりに異常な精神的な束縛をあのような形で決着させる。危険な情事の現代版アンサーではとも感じた。

地獄の逃避行

2020-07-23 | 外国映画(さ行)
★★★ 1973年/アメリカ 監督/テレンス・マリック

テレンスマリックデビュー作。 男女の逃避行作品は多数あるが、本作はマーティン・シーンとシシー・スペイセクの取合せが絶妙。 ジェームスディーンに似ている(裏を返せば顔しか取り柄がない)清掃員マーティン、無垢をまとったファムファタルのシシー。2人の眩しいほどの若さが魅力。

ウインド・リバー

2020-07-17 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/テイラー・シェリダン

テイラーシェリダンによるフロンティア三部作を締めくくる重厚な作品。凍てつく雪原での殺人事件、先住民差別と石油発掘。アメリカ北部地域の抱える闇が心に重くのしかかる。人種差別と暴力がはびこる地に生まれた宿命には抗えない。宿命を受け入れ強く生きる人たちの姿が切ない。

GIRI/HAJI

2020-07-14 | TVドラマ(海外)
★★★☆ BBC

父の役割、娘の役割。警察の掟にヤクザの掟。 そうした我々を縛るものを解体する物語と感じた。偶然の玉突きのように人と人とが交わり、暴力に巻き込まれる。それらの交わりのきっかけが「寂しさ」という点が特異。決して爽快感はない。ラストのピナバウシュにも驚かされた。

これまでのどんなドラマにもない後味と言ったらいいだろうか。本当に変わった物語だ。 平岳大、窪塚洋介、本木雅弘。イギリス人と同じ画面に入っても、ルックが実に際立っている。爽快感があるとすればそこだろう。4話くらいまでは全くノレなかったが、終わってみるとS2を期待。

否定と肯定

2020-07-14 | 外国映画(は行)
★★★★ 2016年/アメリカ・イギリス 監督/ミック・ジャクソン

ホロコーストはなかったという男に名誉毀損で裁判を起こされた主人公。裁判に勝つにはホロコーストはあったことを証明しなければならない。自明の理をなぜわざわざ…の焦燥感にも負けず粘り強く立ち向かう主人公の姿勢と戦い方に学べることは多い。

しかし訴えられた方に立証責任がある英国の裁判、キッツイな…。差別主義者は言いたい放題だし、ユダヤ人の生存者は侮辱行為を避けるため証言台に立てないし。しかし、一つ一つ検証する作業をオープンにしていくことに大きな意味がある。そうしないと「あれはなかった」野郎はいつまでも出てくるんだ。

アス

2020-07-14 | 外国映画(あ行)
★★★ 2019年/アメリカ 監督/ジョーダン・ピール

がっかり。ドッペルゲンガーに襲われるというアイデアだけで走ってしまい細部がなおざり。観念的な存在ならまだしも、具体的な世界があるならその理由や構造についてもう少しきちんと説明されるべき。初見でわかりづらい不親切設計も好みではない。二役を演じた俳優陣の熱演は凄いと思うが。



イコライザー2

2020-07-14 | 外国映画(あ行)
★★★ 2018年/アメリカ 監督/アントワン・フークア

続編になってないと思う。本作の魅力は物静かでインテリで思慮深いマッコールのキャラクター。それがうまく引き継がれていない。そこ肝だと思うのですが。19秒で暗殺シーンもとりあえず入れときましたって感じだし。悪役も登場してすぐにわかっちゃうし。ああ、もったいない。

工作 黒金星と呼ばれた男

2020-07-14 | 外国映画(か行)
★★★★☆ 2018年/日本 監督/ユン・ジョンビン

工作員、諜報部の人間関係を把握しようと終始頭はフルスロットル。北朝鮮と韓国の政治的な駆け引き、ここまで踏み込むかの圧倒的リアリティ。身元がバレたら殺されるかも、のスリリングな展開が続き、終盤まさかアイツとアイツの友情に泣かされるとは。見応え抜群。力作。

小道具がの使い方が上手い。最も印象的なのはピカピカに磨かれた眼鏡だ。主人公のかけた眼鏡に相手の持ち物や部屋の様子が映る。そこに映る物を信じていいのか。緊張感が一気に高まる。そして北朝鮮の風景が圧巻。現地撮影ではないかというクオリティ。自分も潜入員になったように鼓動が早まった。

レイニーデイ・イン・ニューヨーク

2020-07-11 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ウディ・アレン

恋のときめきと苛立ち。新しい出会いへの有頂天と不安。 クルクル変わる若者たちの心模様が雨のNYを舞台に描かれる。 NYセレブの豪華な暮らしっぷり。現実社会を反映するリアルな作品群が隆盛を誇る中、これもまた映画なり。スクリーンの向こうに広がる別世界。

ティモシーの魅力全開。弾き語りまでしてくれちゃって観てる私が有頂天。何に対してかはわからんが「ありがとう」と心の中で呟いていたらディエゴルナの突然の登場でハートバクバク。「天国の口」から全然変わってねえ!超かわいい!アレンは女子目線でイケメンをさらにイケメンで撮ってくるの一体何!?

フロリダ・プロジェクト

2020-07-10 | 外国映画(は行)
★★★★ 2017年/アメリカ 監督/ショーン・ベイカー

子どもたちを取り巻く悲惨な現実が鮮やかな色彩の映像美で語られるほど、その明暗の落差に胸が締め付けられる。 ラスト手持ちカメラで誘われる夢の国。親に連れられた子らとこの子たちは一体何が違う?無邪気な彼らにどうか明るい未来を。願いの映画だ。

ある女流作家の罪と罰

2020-07-06 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/マリエル・ヘラー

有名人の気分で手紙をでっち上げる。ほんの些細な出来心。金策のために一通、また一通。物書きだからこそ、この甘美な違法行為がやめられない。ベストセラー作家でも見えない未来。孤独な独身女をメリッサ・マッカーシーが好演。全編染み渡る孤独感、寂しいけれど心地いい。

とにかくNYが舞台の映画にめっぽう弱い。摩天楼の街並、大都会で生きる人間の孤独、そしてジャズ。本作も冒頭からNYムード全開で一気に引き込まれた。地味だけど、手堅い1本。もし、私なら誰に成りすまして手紙を書こうか。不謹慎にもそんな事を考えてしまった。

SKIN スキン

2020-07-06 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/ガイ・ナティーブ

人は孤独と貧困から逃れるため、いともたやすく差別主義者になってしまう。愛に気付けた事は幸運だが、それはまた地獄の始まり。普通の生活を手に入れるにはあまりに罪深き所業の数々。1つずつ消し去るタトゥーはこれ迄の罪の1つずつ。激痛に耐え未来の扉を叩く。希望はある。

己の罪にもがく主人公の生き様は確かに壮絶だが彼らを転向させる黒人運動家の、その忍耐強さに感銘を受けた。本作で登場シーンは少ないがぜひ彼の視点からの物語も見てみたい。そして初めて出会った少年少女にタバコを与え「ママと呼んで」と言う、そういう悪魔は日本の都会の闇にもうじゃうじゃいる。