露の音 幽かな独り言

 
軌跡を見失わないよう
     追憶のよすがを
       記憶の欠片を遺したいのです

錦秋文楽公演

2015-11-06 10:20:41 | 日記


錦秋文楽公演第2部玉藻前曦袂を観てきました

7月の文楽の世界展で白狐さんのお人形を見て

10月の野外文楽で白狐さんが跳ね回る舞台を観て

今回は金毛九尾の妖狐が跳梁する舞台

最近のわたしが観る文楽は狐さん尽くしですね

白狐を遣う黒衣さんのストラップに一目惚れした程

狐さんが大好きなので嬉しいです


さてさて、今回は大がかりな舞台装置の転換があったり

イリュージョンの様な演出で、狐の魔力が表現されたり

大阪に素晴らしい劇場が存在している幸せを実感する演目でした


よく考えてみると

大阪に住んでいて良かったと心から思えるのは

文楽を国立劇場で観ている時くらいしか思い当たりませんね


さて、時代物でわたしが一番楽しみにしているのがお姫様

動くにつれてキラキラ揺れる簪が美しい

それに今回は桂姫と初花姫の姉妹2人が登場して更に華やか

館で2人が会った時に

手をとりあって、互いに逆方向へ首を傾げあいながら

じっと見つめ合う仕草が本当に可愛いかったです


その姉妹の死を掛けた双六勝負と

親たちの義理と人情のせめぎ合い

金藤次の苦し気な息遣いと娘への叫びが胸に迫りました


そんな悲劇の後に、宮中へ姿を現した金毛九尾の狐

客席を笑わせていた仕丁2人を脅かして

玉藻前と名を変えた初花姫のもとへ

襲い掛かって取り殺し、几帳の陰から出てきたのは

姫の体でありながら顔は狐の奇怪な姿

その後、一瞬にして姫の顔に戻って、その姿を喜ぶ


この時は髪を振り乱していたので

首を回転させて、髪の中にもう一方の顔を隠している

そう推測したのですが

その後、きちんと髪を結いあげた首でも瞬時に顔が変わっていたので

本当に不思議でした

パンフレットの解説によると「両面」と「双面」という首だそうです

図書館に文楽の首の本があったので、それに載っていないか

今度調べてみようかと思います


お話に戻りますと

時代物ながら女形もたくさん登場して嬉しかったです

廊下の欄干に凭れかかり

鳥羽帝の寵愛が玉藻前ひとりに向けられていることを嘆く

正室の美福門院の姿も美しかったのですが

玉藻前を憎むあまり、物騒な考えに至り

しかも同調する他の局たち3人

しかしながら、その4人の闇討ちも怪しげな光で退ける玉藻前


玉藻前の妖術のためか、病に倒れた鳥羽帝

玉藻前と与して帝位を狙う薄雲皇子は

政治を寵愛する遊女の亀菊に任せる

亀菊による裁定は滅茶苦茶で、笑いが起こるほど

玉藻前の思惑通りに国が乱れたかと思いきや

亀菊は実は帝方に通じていて、形勢が逆転しつつありました

しかし、薄雲皇子に事が露見し、刺し殺される亀菊

仰向けに倒れた姿は真に迫り、そして美しくもあり

生と死を容易に飛び越える人形の本領発揮


玉藻前と陰陽師安倍泰成の対決も引き込まれました

公事の場では、安倍泰成の詰問にも余裕をもって言い負かし

祈祷の場では、苦しみながらも、幣で綱を断ち切り

終には逃亡を余儀なくされるとしても堂々と振る舞い

何だかとっても恰好良かったです


それに対して、玉藻前の野望を助ける筈の薄雲皇子

八咫の鏡は遊女に載せられて簡単に手放すし

辺境へ遺棄すべき獅子王の剣も陰陽師の手に渡ってるし

悪だくみする割には詰め切れない小物という感じでした


そんな小悪党は捨て置きまして

獅子王の剣を向けられて狐の本性を顕した玉藻前

その一瞬の変化も凄かったのですが

何と、飛んだんです!!

九尾の狐が、遣っている桐竹勘十郎さんが宙に浮き

そのまま中空を横切って去って行きました


そして最後の段「化粧殺生石の段」

うら淋しい那須野の中央に据わる大きな石

退治され、石に変じた後も、跳梁する姿を表すために

桐竹勘十郎さんが独りで9つの姿の玉藻前を演じて

イリュージョンの様な目まぐるしく凄まじい段でした

特に感歎したのは

狐の姿で殺生石の後ろに駆け込むと

少しもその速度を落とさないままに遣い手が黒衣さんに変わっていて

勘十郎さんはまた別の場所から別の姿の玉藻前を遣って登場した時です

最後はまた狐に戻り、そして石の上では姫の姿をとり

扇を広げて堂々と立つ姿に

やはり恰好良いと思いました


女形を綺麗、可愛い、美しいと思うことは度々ですが

恰好良いと思ったのは玉藻前が初めてです

悪者なのですけど、何だか恰好良い


パンフレットで見て欲しくなって、休憩時間に

玉藻前の3つの姿が配されたクリアファイルを買って正解でした

お人形の写真が綺麗で、よくチラシを持ち帰るので

そのチラシをいれるファイルにしようと思います


次はどんな演目が観られるのか、とっても楽しみです


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