ふつうの暮らしとリハビリテーションとケア

もし、障害を負ってしまったらどうするか?
今までの生活は??
暮らしを支えるリハビリテーションとケアを考えます。

「ウチではちょっと・・・」

2005年05月13日 | ケアの話
医療・介護って、何を売り物にしているんだろう?
医療技術・看護技術・介護技術なんだと思う。

それに対し、ユーザーは信頼し、わが身・肉親を預け、料金を払っている。
そして、その保険料で我々は暮らしている。

こんなエピソードがあった。
とある施設でのこと。
生まれながらにして障害を負ってしまった方が入所してきた。

手足に麻痺があり、その気かない足を使い、車椅子を操っていた。
左足で床をけり、後ろ向きに進んでいた。

余りに不効率なので、手を見たところ、左手はさほど麻痺が無い。
指も思い通りに動いている。

そこで、所長に聞いた。
「電動車いすって、ないんですか?」

倉庫にある、とのこと。
その電動車いすを引っ張り出して、操作練習をしてみた。
いける。思い通りに操作できている。
なぜ、いままでの生活で誰も気付かなかったのだろう?

そこで、しばらく施設内を電動車いすで過ごしてもらった。
その間に、本人・家族に今後どうするか聞いた。

「購入したい」

それはそうだろう。
早速所長に伝えた。
答えは・・・

「ウチではちょっと、電動車いすは無理かと・・・」

ん?
何が無理なのだ?
そう聞いてみた。

「今まで、電動車いすを使っていた方が入所したことがない。
ケアスタッフもたぶん、介助できない」
という答えだった。

オイオイ、ここは施設だ。生活を支える施設だ。
それが無理だと?所長に噛み付いた。
「この施設は、電動車いすの方は受け入れないのですか?」

そうではなくて、介助に負担がかかって、とてもお世話できそうにない、
という返事だった。

ケアカンファレンスをするでもなく、試用期間があったにもかかわらず、
「無理だ」の答え。

いったい何事なんだろう?

「お世話」は素人でもできることだ。
食事介助も、おむつ交換も素人でもできる。

ところが、介護となると、そうは行かない。
戦略を持ったケアが必要となる。安全性が求められる。

「ウチではちょっと・・・」などといっている場合ではない。
お金をもらってケアを提供しているのだ。
「お世話」ではない。

介護が「お世話」レベルから「ケア」レベルまで駆け上る日まで、遠いかもしれないなあ・・・

さて、この電動車いすを希望された方。
後日無事購入され、代金の40万円は「自分で動けることが40万円は安い」
とおっしゃっておられる。

ケアスタッフに乾杯!