ふつうの暮らしとリハビリテーションとケア

もし、障害を負ってしまったらどうするか?
今までの生活は??
暮らしを支えるリハビリテーションとケアを考えます。

何もしないという選択

2011年08月26日 | 生と死と
久しぶりの更新(^_^;)

さて、先日、10年来お付き合いのあった利用者さんを見送った。
思えば、前の職場からのお付き合いであった。

そのことはすっかり忘れておたれたけれど。

そのAさんが最後は悪いものが見つかった。

特にリハビリテーションにこだわった方だった。
私の姿をみると、個別理学療法の要望を出されるくらい、
ほぼ毎日と言っていいほど提供した。

歩くことにこだわられ、補装具をつけようが、杖をつこうが、
介助が多かろうが少なかろうが、とにかく「歩く」ことにこだわれた。

そして、我々ケアスタッフもそれに応えるべく応じていた。

それが単なる機能訓練と言われようが、本人の要望であるなら、
それに応じることも個別ケアだと思う。

そんななか、急激に食欲が落ちた。
本人も不安になった。
そんな本人さんをみて、ケアスタッフも不安定になった。

個別理学療法の提供もとぎれとぎれになった。
しかし、時には他の利用者さんに提供していようがいまいが、
お構いなしに希望されるようになった。

提供できることも、できないことも多くなった。

そんな時、受診され、悪いものが見つかった。
それと同時に、食欲はますます落ちた。

水分のみの日も増えて行った。
しかし、個別理学療法の希望は伝えられた。

しかし、食が入らなくても、お出かけしたり、ホールで悠々と過ごされていた。

ここで、迷う。
果たして、そんなAさんに、個別理学療法をすべきかどうか?

迷った末、お出かけしたり、悠々ホールで過ごされることを、
私は重きを置いた。

個別理学療法で、体力を奪うべきではない、と。
それをケアスタッフに伝える。
スタッフも意外な顔をしていた。
私も迷った末の判断。

それでも、と思わなかったことはない。
しかし、提供しないことを私は選んだ。
Aさんらしい日常を過ごしてもらうことを優先した。

そして、その日がやってきた。
血圧も下がって、ベッド上で多くを過ごされるようになっていた。
その中でも、看護師はお風呂を手伝った。
奥様にも介助してもらった。
私はそれをそっと眺めていた。

そして、その時が来た。
ご家族さんと送り出す。

私はそっと手足をさすった。
そこにはあれほどAさんを苦しめた麻痺も拘縮もなかった。

そして、私の理学療法を提供しない、という判断を確認した瞬間であった。
それが正しいかどうか、なんてもう確かめようもない。

しかし、手足をさすった瞬間、「ああ、よかった~・・・」と思った。
できる限り体力を消耗せず、それでいて拘縮が起きないように、
というギリギリの判断。

あれほど毎日と言っていいほど、理学療法をやったからなあ・・・
その貯金だね、と思いながら手足をさすり、見送った。