0365 笠金村 2006-12-31 | 巻三 雑歌 塩津山 打越去者 我乗有 馬曽爪突 家戀良霜 塩津山(しほつやま) 打ち越え行けば 我(あ)が乗れる 馬ぞつまづく 家恋ふらしも ――――― 「塩津山を超えてゆくと、私が乗ったウマがつまづいた。きっと、(留守番の)家族が私のことを思っているからだろうか?」
0364 笠金村 2006-12-30 | 巻三 雑歌 笠朝臣金村塩津山作歌二首 大夫之 弓上振起 射都流矢乎 後将見人者 語継金 ますらをの 弓末(ゆずゑ)振り起し 射つる矢を 後(のち)見む人は 語り継ぐがね ――――― 笠朝臣金村が塩津山で作る歌二首 「“ますらをの”(勇者が)弓末を振り起こして(大木に)射った矢であろうか。(その矢を)見た人は、(彼の勇猛ぶりを)後世に語り継いでほしいものだ」 ・弓末:弓の上端 ・塩津山:島根県安来市
0363 山部赤人 2006-12-29 | 巻三 雑歌 或本歌曰 美沙居 荒礒尓生 名乗藻乃 吉名者告世 父母者知友 みさご居る 荒磯に生ふる なのりその よし名は告らせ 親は知るとも ――――― 或る本の歌に曰く 「ミサゴが生息する、荒磯には名乗藻が生えるもの。さあ、おまえの名を俺に教えておくれ。親バレしたって構わやしないよ」
0362 山部赤人 2006-12-28 | 巻三 雑歌 美沙居 石轉尓生 名乗藻乃 名者告志弖余 親者知友 みさご居る 磯廻(いそみ)に生(お)ふる なのりその 名は告(の)らしてよ 親は知るとも ――――― 「ミサゴが生息する、磯辺にはホンダワラ(名乗藻)が生えるもの。さあ、おまえの名を俺に教えてくれ。親バレしたって構わないさ」 ・ミサゴ:タカ目タカ科 つがいの仲がよい ・名乗藻(莫告藻):ホンダワラ なのりそは「海藻」と「名乗るな(名告りそ)」の意味を含む「掛け言葉」として用いらる ・旅の途中で出会った女性(遊行女婦?)をナンパしている内容といわれる
0361 山部赤人 2006-12-27 | 巻三 雑歌 秋風乃 寒朝開乎 佐農能岡 将超公尓 衣借益矣 秋風の 寒き朝明(あさけ)を 佐農(さぬ)の岡 越ゆらむ君に 衣(きぬ)貸さましを ――――― 「秋風が冷たい夜明け。佐農の丘を超えてゆくあなたに、上着を貸してあげたかった」