万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

teacup.ブログ“Autopage”から引っ越してきました。

1053 田辺福麻呂歌集

2008-11-19 | 巻六 雑歌
吾皇 神乃命乃 高所知 布當乃宮者 百樹成 山者木高之 落多藝都 湍音毛清之 鴬乃 来鳴春部者 巌者 山下耀 錦成 花咲乎呼里 左壮鹿乃 妻呼秋者 天霧合 之具礼乎疾 狭丹頬歴 黄葉散乍 八千年尓 安礼衝之乍 天下 所知食跡 百代尓母 不可易 大宮處

吾が大君 神の命(みこと)の 高知らす 布当の宮は 百木盛(ももきも)り 山は木高(こだか)し 落ちたぎつ 瀬の音も清し 鴬の 来鳴く春へは 巌には 山下光り 錦なす 花咲きををり さを鹿の 妻呼ぶ秋は 天霧(あまぎ)らふ しぐれをいたみ さ丹つらふ 黄葉(もみち)散りつつ 八千年(やちとせ)に 生(あ)れ付かしつつ 天(あめ)の下 知らしめさむと 百代にも 変るましじき 大宮所


「わが天皇よ。神の命の“高知らす”布当の宮よ。“百木盛り”山は木々が高く(そびえ)、“落ちたぎつ”瀬音がさわやかに、ウグイスが、(飛んで)来て鳴く春には、岩石が、山のふもとで光り、美しい、花々が咲き誇る。牡鹿が、連れ合いをよぶ秋は、“天霧らふ”時雨れがせつない。“さ丹つらふ”もみじが散るよ。

非常に長い年数もの、生まれながらに備わる、日本全国、(その御名を)知らしめて。長い年月にも、変わらぬままの。天皇ならびに日本の都よ」