この本の作者は戦中戦後を生きた祖母のことを彼女が亡くなって後
「ひとり語り」という形で本にしました。
主人公の祖母は少しばかり私より年長ですが、
私も体験したことばかりで心に沁みました。
色々なエピソードがある中の一つが印象に残りました。
家の二階が海軍航空隊(浦戸航空隊)に
借り上げられ、若い特攻隊員と一時期同じ屋根の下で暮らしました。
ある時急に皆が出ていくことになりましたが、
軍隊のことですから尋ねることもしませんでした。
ときを経て戦後みなで会う機会がありその時のこと尋ねました。
その時の上官(中隊長)がしみじみと答えました。
「おれはあのおばぁさんが一番こわかった。
若い君たちをあの家から他所へ移したのは、
あんな人間的な人の家にいては、君たちの精神がにぶり
いよいよ最後というとき、ひるみはせんかとそれを心配した・・・」と。
それは当時、上官の制裁を飛び出して行って止め、
「こんなむごいことここでするなら出て行ってくれ」と
上官の胸倉をつかんで迫ったことを言っています。
孫のような若者が制裁を受けるのを見ていられなかったのでしょう。
特攻隊員ですから、命令一つで明日にも出撃しなければならない、
上官もそのことを慮って、他所へ移って行ったのです。
私がその「祖母」の立場にいたら同じ行動取れたかどうか疑問です。
いいお話と思いました。
※ 浦戸(高知県)予科練生の教育機関として急遽造られた