甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

亀は千年、馬は志千里

2024年05月26日 16時06分29秒 | 中国の歴史とことば
 
 四月の四天王寺の古本市で、中公新書の『志のうた』竹内実・吉田富夫著 1991 という本を手に入れました。知らないことばかりで、このシリーズで愛の歌・閑適の歌という二冊も出ているようです。今度どこか、本屋さんか古本市で見つけたら手に入れたくなりました。どんな愛の漢詩があることやら……。

 さて、その中で、三国志の英雄・曹操の詩が取り上げられています。「歩出夏門行(ほしゅつかもんこう)」という題名がついています。

神亀(しんき)寿(ながいき)すといえども
猶(なお)竟(おわ)る時有り

神様の亀は、長生きする(寿命が千年!)とはいうものの
いつか命が終わる時があるだろう。

騰蛇(とうじゃ)霧に乗るも
終(つい)には土灰(つちくれ)と為(なりは)てん

空に飛ぶ神獣のヘビが霧に乗ったとしても
これもどこかで死んでしまったら土へと返るはずだ。

されど老驥(ろうき)櫪(れき)に伏(ね)るとき
志千里に在(あ)り

年老いた名馬がうまや(厩)で寝ているといっても
その気持ちは千里を走ることに向かっている。

烈士(れっし)暮年(としおいて)も
壮心(そうしん)已(おとろ)えず

正義に生きようとする者が年老いたとしても、
若き日の志は衰えることはないのだ。

されば盈(えい)と縮(しゅく)との期(さだめ)は
ただ天のみに在(かか)るにはあらず

「盈」という長生きすること、「縮」という短命であることは、
天がそのカギを握っているのではない。

怡(い・おだやかなこころ)養いたる福(しあわせ)
永年(えいねん)得(てに)すべし

穏やかな心をいつも心に育てることにより
長き命を手にするべきなのだ。

この幸(よろこび)甚(さて)も至(いたる)ものかな(哉)
歌いて以(ここ)に志詠まん

この幸せを手に入れれば、それは無上の喜びだ
詩を詠んで我がこころざしを伝えよう



 本のよみと、私のふりがなと、合わせた訳とを書いてみました。

 この中国の歴史と言葉シリーズは、まだ戦国時代のはずでしたね。でも、不勉強で「史記」も途中で終わっているし、あれもこれもやれていなくて、行き当たりばったりでやっていくことにしたんでした。

 だから、突然に曹操さんが出てきても、もういいことにします。最後までやれないかもしれない。それはまたそれ、私の不勉強の結果ですから、甘んじて受けるしかありません。先が見えないですし、どれだけ発見があることやら……。





 とりあえず言葉としては、

【老驥(ろうき)櫪(れき)に伏(ふ)すとも、志(こころざし)千里に在り】……年老いた名馬は、馬小屋の中で身を横たえながらも、千里の彼方まで走ることを考えている→偉大な人物が、年老いてもなお覇気を持ち続けている様子のたとえ。

 後漢王朝末期の武将、曹操[155~220]が作った「歩出夏門行」という詩の一節にあります。

 これは赤壁の戦いの前に作った詩ということですから、たしかに五十男ではあっただろうけど、おいぼれ馬ではなくて、もっとギラギラしたものがあったと思います。年寄りを気取ってみたのでしょう。

 年寄りになるのがカッコ良かったり、若ぶってみたり、男の美学は揺れるんでしょうね。そして、彼は赤壁では敗れたかもしれないけれど、着実に天下を取る実力と実績を積み、子どもたちにその権力を伝えて行くんでした。大したものでした。

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