吉村京花☆歌う門には福来る

Jazz, Bossa Nova, Sambaを愛するシンガー、吉村京花のブログです。

音楽家にありがちな・・・・

2012年11月12日 | ライブ情報
映画「情熱のピアニズム」鑑賞
渋谷のシアターイメージフォーラムにて上映中。
http://www.imageforum.co.jp/theatre/
ジャズピアニストのミシェル・ペトルチアーニの生涯を描いたドキュメンタリー。
まあ、この方は尋常ではない。
天才? 鬼才? 神の子?
いろいろ形容はあるかもしれないけど、何とも言葉では言い尽くせない方だ。
南仏の田舎町オランジュで出生。奇しくも私と同じ1962年生まれ。
生まれつきの障害で骨が折れやすく、発育不全のため、成人しても身長は1メートルとちょっとまでしか伸びなかった。小さな巨人。怒涛の人生を走り抜け36歳で亡くなったピアニスト。

映画の中心はもちろんペトルチアーニの紡ぎだす音楽。
他の誰にもたとえようのない、大胆かつ繊細で魂がそのまま音に乗り移る音楽。
80~90年代のジャズが失っていた音楽の魂を取り戻してくれたというようなコメントを共演したミュージシャンのだれかが言っていたような気がするが、彼はまさに音楽の塊。
音楽なくしては彼ありえないし、「彼そのものが音楽」であることは容易に伝わってくる。
音楽人として刺激を与えられたのはもちろんのこととして、この映画にはもう2つテーマがある。
生まれ持った障害を受け入れて前向きに生きること。
そして、恋愛・・・・・というか、男の性。
障害があるからこそ、長く生きられないことを知っているからこそ、瞬間瞬間を完全燃焼しながら生きていく。
彼にとって「明日」はない。「今」が大切。
だから妻を放り出してツアー先で見つけた女性といきなり同棲もあり。4回の結婚・離婚を繰り返した。子どももつくった。
女性に対してはかなり「やり手」だった。
それが証拠に、別れた妻たち、あるいは放置された妻たちは、皆今も彼の思い出をいとおしげに語っている。
「しょうがないわね~。だってそれが彼なんだもん」的な発言は、内田裕也と樹木希林をもってしてもなしえなかったであろうと思わせる。
もう、彼に恋しちまったらどうにもとまらい。みたいな。
見ていて障害とか忘れてしまうくらい。
1メートルちょっとのおっさんなんだけど、あまりにも魅力的すぎる。
いや、常識で考えたらだめですよ。
妻放置してツアー先で新しい恋人見つけて、二度と帰ってこないんですよ。
アーティストにはありがちなことは一般論としては理解しつつも、自分がその関係者となってしまったときにゃ心穏やかではないでしょう。
でも、あの人と出会ってよかったと思わせる何かを持っている。
ん???
だれかに似てるな。
前に見た映画で、ボサノヴァの詩をたくさん残したヴィニシウス・モラエスのドキュメンタリーがあったけど、ヴィニシウスは4回どころじゃない。9回結婚している。
なのに、死後も愛されている。
ペトルチアーニと関係した女性たちも、今も彼のことを愛している。
どういう人格なのか?
ヴィニシウスは67歳まで生きたけど、もう一人ブラジル人の作曲家で早死にした女好きといえばノエル・ホーザだ。26年という短い生涯に200曲以上の作品を残した天才。
彼は容姿にコンプレックスを抱いていたが、女性には積極的。モテル男だったようだ。
音楽だけではない。
ペトルチアーニは容姿は確かにちっちゃいおっちゃんだけど、キース・ジャレットやチック・コリアからは感じられないようなセクシーさを持っている。
このセクシーさはどこから来るのだろう? 
そのことがすごく気になってしまった。
やりたい=セクシーなのか?
ペトルチアーニの場合はかなり絶倫だったと映画では描いているが。
常識はずれ、破天荒、放っておけない子どもっぽさ・・・・・などなど
ミュージシャンにはありがちなこと。
でもペトルチアーニはただのダメなおっちゃんではないのだよね。
こいつどういうヤツなのかようわからん!というままに終了した。
この映画は結論なんか出そうとしてない、人間ペトルチアーニの魅力が、フィルターなしにときに残酷に伝わってくるものだった。
コメント
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