吉村京花☆歌う門には福来る

Jazz, Bossa Nova, Sambaを愛するシンガー、吉村京花のブログです。

ブラジルから来たおじいちゃん

2009年09月13日 | ライブ情報
映画を見て感動したのは久しぶりです。

最近、いろいろな刺激に慣れてきたせいか

ちょっと不感症ぎみだったのですが

この映画は、すばらしいです。

ぜひたくさんの人に見てほしいです。

9月18日まで渋谷のアップリンクにて


『ブラジルから来たおじいちゃん』は
栗原奈名子監督の作品

日系ブラジル人で73年前に移住し
映画撮影の時点で92歳の紺野堅一さんの
足跡を淡々と映し出す。

紺野さんは言葉もわからず不況のどん底の日本を脱出し
ブラジルにわたった移民1世。

平成の大不況以上にがけっぷちから突き落とされるような
1929年の世界大恐慌を背景に。

人口の増えすぎた日本人を国土の外へ追い出そうという
国策の一環で移民政策は進められた。

ブラジルの大地で様々な仕事を経験し
自己破産しながら、無一文からの再出発も。

苦難を乗り越えて子、孫の世代で
ようやく生活の基盤を築く。

今はリタイヤした身でも、じっとしている人ではない。

ブラジルの不況と日本の好景気を背景に
日本に「出稼ぎ」に来た、
日系ブラジル人たちの生活状況を見届けに
毎年日本を訪れている。

血はつながっていなくても
まるで本当の家族のように
心を通い合わせる。

日系ブラジル人の日本への出稼ぎ

これだけでもう頭が混乱させられる。

この人たちはいったい
日本人なのかブラジル人なのか?

顔は日本人。
でもメンタリティや生活習慣は生まれ育ったブラジルに
より影響を受けている。

アイデンティティをどこに求めれば???


経済の乱高下にふりまわされる人々。
まじめに地道に働く弱い立場の人々がいつも
大きな波に巻き込まれる。

その中でも、自分を信じ
自分の生き方から目をそらさない紺野さん。

そのひたむきさ、前向きさに多くのことを教えられる。

「ブラジルに来て一番の収穫は、人生とは生き甲斐のある生活をすること、人間の幸福とは何事にも満足することだとわかったこと」と
紺野さんは映画の中で語っている。

一つ一つの言葉が、
激動の人生のひだの中からつむぎだされた深い言葉だ。
うすっぺらい演出なんかいっさいない。

ありのままをただ映し出す。
それで十分。

だって、紺野さんという人間自身
そして、日本で懸命に生活する日系ブラジル人たち自身
存在そのものがあまりに尊く稀有であるから。

虚飾の一切ない映画です。

ちまちましたことで悩んだりしている
自分の了見の狭さを恥ずかしく思った。

栗原監督ご自身も上映後のトークショーに登場された。
虚飾のない人。
ありのままを受け止める人。
自分を大きく見せる必要なんて微塵もないんだ。
そんな人間としての基本に今さらながら気づかせてくれた。
終了後にお話させていただいて
さらにその確信を得た。

ありのままであることが
これだけ人を感動させるのか。

いやおうなく自分を省みてしまう。
自分が表現者であるということ
そうでなくてはいられないということ。
それなのに、人から評価されないことを恨んでしまうときさえある。
世間に毒を吐くことさえある自分。
これが自分の力なのだと観念せねばならないだろうに。
まだまだ自分の潜在能力を発揮してさえいないのに
早計に評価を決めてしまうなんて浅はかだろうということ。
出し惜しみなんかしてる場合ではないだろう。

そして今、日本が不況に陥り
日系ブラジル人の出稼ぎ労働者は
その波を最前線で受けている。
その事実を受け止め、
多くの人と一緒に考えて行けたらいいと思う。

この日記を読んでくださった方。
ぜひ、見てください。

18日までです。
http://www.uplink.co.jp/x/log/003160.php
http://amky.org/senhordobrasil/story.html

主人公の紺野さんは今年5月に永眠されました。
合掌
コメント
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