やさしい芸術論

冬が来たなら、春はそう遠くない

「フランケンシュタイン」とアイデンティティ

2021年01月15日 | 文学

この世界にはあらゆる人種の人が住んでいて、

あらゆる考えを持ち、十人十色の個性を持ち、

それぞれ違った人生を歩んでいます。

 

性的マイノリティの人や、障害や、人と違う感性を持っている人、

宗教に入っている人など色々な人がいます。

 

それが人間の多様性です。

自然界でも、花や動物などが多種多様なのを見ても分かります。

 

しかし、人間は周りの人間を見て、

自分が周りと違う考えや容姿をしている事を気にします。

ひどい時は、いじめの対象になったり、差別をされたり、

社会から取り残されてしまうからでもあります。

 

アイデンティティとは、他と相対的に比べずに、

「自分は自分」という意識を持つ事です。

 

以前、美輪明宏さんは同性愛者である事を、

マスメディアでカミングアウトしました。

 

当時は同性愛は悪とされていて、

理解されていなかったので、周囲から猛反対にあうも、

美輪さんは毅然とこう語っています。

 

「わたしは人を殺したわけでもないし、

 ものを盗んだわけでもありません。

 人と人は変わっているのが自然なのだから隠す必要はない」

 

「フランケンシュタイン」は有名なSF小説ですが、

これを書いたのが、当時18歳の少女メアリー・シェリーでした。

 

 

フランケンシュタイン博士は、生命を生み出そうとして、

死体を集め、継ぎ合わせ、醜い怪物を生み出します。

しかし、その醜さに博士自身は恐怖を覚え、

怪物を捨ててどこかへ行ってしまいます。

 

この怪物は、2m以上の大型の男ですが、

頭が良く、言葉を覚えながら、人間と仲良くなりたいと思います。

やさしいこころを持っていたのです。

 

しかし、人に親切にしても、

そのあまりの醜さに、人間達は化け物扱いして、

逃げてしまいます。

 

自分の生みの親である、フランケンシュタイン博士さえ、

自分の事を捨てました。

人と仲良くなりたくても、親切にしても、

自分が世界でたった一人の醜い怪物である為、誰も友達になってくれません。

 

「フランケンシュタイン」に出てくる怪物は、

アイデンティティの中の最たるものの一つと言えるでしょう。

 

今の世の中でも、自分で産んだ子供を捨てたり、

虐待したり、可愛がらない親が何人もいます。

 

いくら優しいこころを持っていたとしても、

性的マイノリティや障がい者や、変わり者は見た目や偏見で軽蔑されたり、

顰蹙をかったりして、なかなか理解されません。

 

しかし、初めに書いた通り、命あるものは全て、

千差万別の個性を持っているものなのです。

 

なので、他者を理解してあげる。否定しない。

色々な考えの人と一緒に、共存していく事が、

平和で公平な社会を作る、とても重要な事だと思います。

 

誰にも理解されない、孤独な、こころやさしい怪物の事を、

やなせさんはずっと心に残っていたそうで、

アンパンマンは「フランケンシュタイン」の影響があるとおっしゃっていました。

 

やさしさは目には見えません。

人は見た目ではありません。そう信じています。

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