やさしい芸術論

冬が来たなら、春はそう遠くない

頭の中にある理想の家族愛

2021年01月16日 | 映画

ぼくが好きな映画監督ガス・ヴァン・サントさんが監督・脚本された

映画「マイプライベートアイダホ」。

 

この映画に、リバー・フェニックスとキアヌ・リーヴスという

名俳優二人が出演しており、映画の内容が同性愛について触れていたりして、

そちらの部分に注目が集まり、なかなか正当な評価をされていない気がします。

 

物語は主人公のリバー・フェニックス演じるマイクが

ナルコレプシー(発作的睡眠障害)である事に触れる所から始まります。

 

 

この映画は3つのパートに分ける事が出来ます。

 

1、オープニング(約5分)

2、本編(約90分)

3、エンディング(約5分)

 

そして最も大事なのは、1、のオープニングです。

ぼくが観た全ての映画の中で、一番良かったオープニングです。

 

オープニングで、主人公マイクは果てしなく続く道の真ん中に一人で立っています。

そして、ナルコレプシーの症状によって、突然深い眠りにつきます。

 

そして、夢の世界に行き、母親のひざに頭を置いて寝ています。

母親は息子マイクにこう言葉をかけてあげます。

 

「大丈夫。

 何にも心配いらないわ。

 すべてうまくいくから。

 分かってるわ。もう大丈夫。

 すまないなんて思わなくていいのよ。

 分かってるわ。」

 

 

主人公のマイクは、ナルコレプシーであり、孤児であり、

買春によって生計をたて、ドラッグを吸って気持ちを落ち着けます。

実の兄と母親との子供が主人公自身であったのです。

そして、どこにもいない母親を世界中探してまわります。

 

現代社会の闇が生み落としたような、悲劇の青年マイク。

刹那的に一日を過ごし、鬱々としながらも、

こころの中にはいつも母親の存在がありました。

 

オープニングのシーンのように

頭の中の理想の母親は、マイクにやさしい言葉をかけてくれます。

マイクのこころの支えは、現実社会には存在していませんでしたので、

存在していない理想の母親をずっと求め続けます。

 

ジョン・レノンや、フレディ・マーキュリーなども同様に

こころの中で母親を求め、ジョンレノンは「マザー」という曲で、

フレディは「ボヘミアンラプソディー」で母親に対する思いを歌っています。

 

世知辛いこの世の中において、

悲しみや苦しみがあふれ、何が正しいのか分からない世界において、

本能的に、希望の光のような「家族愛」を求めるのです。

 

この映画では、主人公の可哀想なシーンがたくさん描かれていますが、

だからこそ、家族愛、母親の愛が相対的にとても大事なものに映ります。

 

映画の最後は、この言葉で締めくくられます。

 

「Have a nice day」

「良い一日を」

 

 

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

 

 

 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 即興詩人のような生き方 | トップ | 人生はたからもの »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事