ＢＩＲＴＨ

寝室からのそれ程長くもない廊下。いつもならこの先のリビングからは登校前の愛息と家内の丁々発止のやり取りがいやでも聞こえてくる朝だが、今朝は静まりかえっている。
眩いばかりの朝日が独り身とはいえどことなく優しく包み込んでくれている様な気がした。

この春に授かった新しい小さな命。
昨日無事に我が家の新しい家族として迎え入れることが出来た。
社業はじめ自身を取り巻く環境は相も変わらず目まぐるしく、それでも夏くらいまでは何度か釣行を計画してはいたのだが、休みとあらば遺伝子検査やら他諸々にはじまり危やうくの切迫早産ギリギリの体を放っての釣りは不謹慎以外の何物でもなく、ただただこの日を迎えるのを待ち侘びていた。










その街並には少し不似合な瀟洒な建物。院長が少しばかりの知り合いと言う事もあってか粋な計らいに感謝しつつ、特別室フロアーはそれこそちょっとしたホテル並みの部屋の誂えに時代は随分と変わったものだと感じ入る。
家内のご両親もいそいそと駆けつけ家内を労い団欒しばし。
愛らしい女の子。まだ名前は決まっていない。
兎にも角にも慌ただしい年の瀬にあってこれでようやくの感もひとしおだ。
年明けからお宮参りにはじまり幼子を囲む機会も一層増えるとは思うが「釣り」という自分だけの時間をこれから少しずつ取り戻していきたいと思っている。