筏(かせ)黒鯛 四季織々・・

ホームグランドである千葉県 富浦筏(かせ)釣りをメインに日々の戯言を綴る忘備録ですわ。

たった一つのガン玉で・・・

2012年08月30日 | 日記
前週に今期初の2桁釣果で気を良くした訳ではないのだが、社業も本店が改装中と言う事もあり束の間の夏休み、おさらいの意味も含めて行ってきた。
過去の経験から言っても、拙さ故に良い釣りが出来た次は得てして外す事が多く、今釣行も別段浮き足立つほどでも無く、淡々としたものだ。



仕事の都合上比較的木曜釣行が多いのだが、春夏秋冬問わずこの時間のエアプレイからはご機嫌な90’sのオンエアー。折りしも晩夏~初秋の時節、流れる車窓からの風景も手伝い、当時を思い出しセンチメンタルになったり心中交錯する大切な時間。



程なくして港に着く。今日はいつものワンドもややざわついている。沖を見やれば少々ウネリがある様で遠巻きに見ても筏のアップダウンが見て取れる。
今日は前週同様カセ船での釣りを期していただけに果たしてどうだろうか。



港では既に旧知の常連さんがいらっしゃり今日はお仲間3人とご同行との事。
出船時間となり舫いを執り親船に曳かれ沖を目指す。





港では北東風で心配はなかったのだが海原へ出ると西南西からのウネリ。沖へ向うと予想以上のウネリで危や恐怖症のスイッチが入る前に、急遽1番筏へと舵を執ってもらい渡筏。
我ながらこの程度のウネリで・・・と思うも苦笑いで船頭に詫びる。



写真ではそんにでもなく見えるが、1番筏もそこそこなれど2番筏は時折筏裏が見える程。平常心を装いながら、早々にスタンバイを済ませる。今日は干潮が9時半~満潮が15時の前中潮。水温は27,5℃。
潮色はやや笹濁り。
釣り始めは沖へと向う潮流れが速い。二枚潮でないのがせめてもの救いだろう。細糸仕様のロッドに持ち替えるのと同時に、俄然速い潮流れに合わせてコマセを手直しする。
重目、軽目の2種類とし当然アンコ入りと無しの2パターン。速潮時にアンコ入れはポイントがボケるのは言うまでも無く、潮が速いからと言って流れに乗せてどこまでも仕掛けを長し続けるのでなく、むしろその逆で、エリアを決めて打ち返しの手数で稼ぐのがこの時期、自分なりの攻め。

釣り始めてから2時間弱、それらしいアタリは一つも無く時折陰気なゴンズイが顔を出す。
10時前になりようやく潮が緩み始める。と、同時にカセ組が掛ける。まずまずの型に会話も弾んでいる様子だ。
こちらは午後に照準を合わせコマセに手を入れるのと同時に腹ごしらえし一服。
今度は2番筏でのヤリトリが見える。タモが入り型モノを仕留めたようだ。
カセ組も都度タモが入っている。

程なくして釣りを再開する。
が、アタリらしいアタリが出ない(出せない)。
ふと気になる事があった。
いつもなら既に何本かの電話が鳴るはずなのだが、今日はそれが今の所無いのが気になり携帯電話を取り出しチェックしようとすると、なんと電源が飛んでいるではないか!
乗船前にいつも通りフル充電していたにも拘らずだ。実は平時においても度々ある事だった。
最近替えたスマホにはつくづく嫌気が差す。当たり前だが便利だからこそ使うのであって、こう度々不具合では不便極まりない。何度かクレームとして窓口にも出向き不具合を説明するも、交換なら有料では開いた口も塞がらない。数万円の携帯が高いか安いかの問題ではない。窓口対応のマズさはマニュアル通りに終始。埒があかないので時折発生する故障、不具合に渋々使っていたのだが・・・。
事もあろうに海の上、有事の際にはどうしたらいいのか、朝からのウネリこそ収まりつつある海況だが、不安に加えて焦燥感で一気に萎えてしまう。

それでも何とか気分を入れ替え釣りを続けていたが、気になるものはやはり気になって仕方が無い。無常にも昼のチャイムがこだまする。
気が気でないので言わずと一服の回数も増える。カセ組に大声で呼びかけ、迎えを頼もうかと思うも止めた。程なくして止まっていた潮がゆるりと動き出した。
上潮のみだが港方向に、下潮は止まっている。
午後一時を回り朝からの自分の釣りを反芻してみた。カセ、2番筏共に復数枚の型が出ている。
自身のコマセは効いているはず。筏下~周辺にはきっと沢山の黒鯛がいるはず。釣る為の手数手順も然り。
が、アタリらしいアタリもないままにこの時間になってしまった。
いくらウネリや携帯の件があろうとも、それは単なる言い訳にしか過ぎない。

何気なくガン玉を噛み付け仕掛けを入れる。着底~上潮でラインが孕む~孕みを修正しようとリールを巻く~仕掛けが立つ・・・「!きゅっ・・!ギュンっ!」不意をつかれたアタリに少々気後れしながらのヤリトリで上がって来たのは36cmの黒。

愕然とした。

朝からノーシンカーの釣りをいつも通り展開。「いつもなら」の慢心が透けて見える様だ。
それにしても、何故今の今まで気づかなかったのか。やろうとしなかったのか。
たった一つのガン玉で釣りが変わる。そもそもガン玉を打つのは基本中の基本。それをノーシンカーの釣りでそこそこの釣りが出来ていたと言う甚だしい勘違いに、自身の釣りが屈辱的でさえある。
されどこうなったら検証するしかない。
今一度同様の攻めを試みると、すぐに結果が出た。27cmの海津。
その後、そこそこの型を確信させる引き味だったがバラシてしまう。

コマセもまだ10数投出来るくらいは余っていたが、後追いせずに道具を仕舞う。



朝からアタリも出ない(出せない)理由めいたものを十分すぎるくらい理解し、
悔し紛れに飲み込む。




食べる為の魚が欲しいんじゃない。
思い出の魚が欲しい訳でもない。

ただ、ひたすらに少しでも釣りが上手くなりたいと言う、プロセスが欲しいのだ。

そして、自分の中で「何か」が芽生えはじめた。











(JUST LIKE) STARTING OVER

2012年08月29日 | 日記







平成14年に出店した弊社店舗の全面改装工事が始まる。
思い出の沢山詰まった店だ。
色々な意味でも今日の礎を築いた本店である。

当時は20~30坪前後、席数にして30席程度の小体店舗を複数店舗運営していたとは言え、テラス3面含めて約100席近いやや大箱の出店は、ノウハウも無かった当時は
一か八かの賭けでもあった。

若気の至り。
この店の成功で以降拡大路線に突っ走り脇目も振らず、そこそこのペースで出店攻勢をしていくのだが・・・・。
文字通り毎日が生きるか死ぬかの生き地獄と辛酸を嫌と言う程味わう羽目になるとは
この店を出店した頃の若い自分には想像もしなかった。

この10年間は、もしかしたら”失われた10年”だったかも知れない。
だけど、この場所にこの店があったから何とか生き延びられた。
そこはまさに己を知る上での戦場と言えば少々キザだが、生業としている以上満更でもないと思う。



”がらん”とした現場に佇んでいると本当に色々な事、思いが頭をよぎる。





ISM(イズム)~RYTHM(リズム)~弾む

2012年08月24日 | 日記
先日の富浦ではつくづく自分の釣りを見直す良い機会になった。
24日金曜日に再訪を決めていたが、ここ数回の釣りを振り返るにあたり朝の目覚めから今一つ盛り上がらない自分も居た。
行きの車中、何気なくつけたラジオからのエアプレイ。ボサノヴァの調べが、気乗りしない心中に染み渡る。



山間を照らす朝の陽光も灼熱のそれを感じさせる程でもなく、どことなく空が高くなった気がする。
仕事でもそうだが、当然釣りにおいても「自分に何が足りないのか」を、常に意識している。





予定時刻に港へ着く。
いつもの景色が迎えてくれる。
今日は満潮が9時半~干潮が14時半の小潮。快晴ベタ凪の海に、今日はいつも乗る1番筏ではなく沖合いの2番筏かカセ船に乗ろうか、同じ海でも少し目先を変えてみようと思っていた。



既に港には荒川区からお見えになったご夫婦がいらっしゃり近況など交えつつ2番筏はお譲りし、自身数年振りとなるカセ船に乗り込む。目指すは5m。漁協の高山さん曰く「朝ぅお餌撒くとぅお~い~っぺぇ居るんだぅお~、黒でぇ(鯛)がさぁ~、
よぅお~く見えるんだけんどさぁ釣れねぇってさぁ~、ガハハハ・・」。
沖上がりの際に高山さんに釣って破顔一笑を約束して親船と分かれる。水色もすこぶる良い。水温は27℃との事。




         仲睦まじき後姿・・・今日の一日への想いは一緒。












前釣行も然り、今日はガツガツ釣ろうとせずに、むしろ仮に一枚釣れたとしても次ぎの一枚を獲る為のインターバルを長く、そして場作りの為のコマセの濃淡に始まり、底でも見せ餌もしっかりと効かせて囮の黒を釣りきらぬ様、また釣り始めのバラシも十分過ぎる程肝に銘じてもいた。



いつもの1番筏からの見慣れた景色も良いものだが、いつもとは違うカセ船からの視点は釣り方をも見直す良い機会だ。

渓の山女魚や岩魚も流心先には必ずと言ってよいほど伏兵魚が居る。
最初にそいつを釣ると周りの魚は怯え、口を使わなくなる。よって流心下のカタに付く魚から順に釣り上がるのがセオリーなのだ。やはり魚は魚。渓魚だろうと黒だろうと答えは同じ。
前章で頂いたコメントの数々にもハタと気付かされた。



釣り始め、潮行きは左から右へゆったりとした流れ。やや澄み気味の潮で団子の航跡が底まで見て取れるが水色は良いので然程心配は要らない。中層には早くもボラが見え始めるが気にはならない。むしろこのボラが上ズリ出す頃が午前の勝負と見て様子を伺いつつ打ち返す。
「コソこそ・・」としたアタリは陰気なゴンズイ。時間を追うごとに底でのアタリも徐々に賑やかになってくる中、先の「コソ・コソ・・」アタリの合間に「・・っがっ・・ガツっ」とそれらしいアタリに、まだアイゴも姿を見せていないのを良い事に、棚を一気に一ヒロ弱上げてくると竿先が力強くモタレる。そっと訊くと「・・!ギュンっ!」と入り、32cmの海津にバラさずに済んだ事に、思わず頬が緩む。潮が追っ付けに変わった10時半過ぎ。上潮は足元へ、底潮は沖へと向いている。
底はそれなりに賑やかなので、下から2ヒロ強で団子を割らせゆっくりとフォールさせると36cmの黒に「これから」を期した。この後コンスタントに30分に一枚のペースでポツリポツリと拾い釣りを展開。



ピッチが一気に上がったのが昼前~午後1時半迄。底で餌取りに遊ばせて即棚を切り1ヒロ~2ヒロ弱の棚で、手元で取るアタリ、視覚で取るアタリを掛け合わせリズムに乗る。棚切りの読み~流し~フォールの妙を大いに愉しみ、そして呼応してくれた
黒達。



数を目指せばそれなりに稼げる日並だったかも知れない。
しかし今日のテーマは違う。いかにしたら”自分の釣りが出来るのか”を知る為に来たのだ。
一尾一尾、愛おしむ様に釣る。人も魚も一期一会。だからこそ大切にしたいものや事がある。
幸い今日は52cmを頭に年無し含めて中型主体海津交じりで12枚の釣果。
久しぶりに「ズシリ」と重いスカリを持つと「あぁ・・夏も終るなぁ・・」と、富浦での釣りで季節を知る。
2番筏のご夫婦も40cm級頭に海津数枚他と今日一日を存分に愉しまれた様子で何より。

秋の数釣りはもう少し先にとっておこうと思う。











Less than ZERO ~ ジレンマ

2012年08月20日 | 日記

世間は盆の休み明けとなる週明けの月曜日。
いつもなら湿気を含んだ纏わりつくような生温い南風なのだが、今朝は涼しげな北東風がそよそよと吹きぬける未明。
ほんの僅かだが季節は確実に移り変わっている。

先日の釣りの復習をどうしてもしたかった。
前週末には前倒しで所要をこなしての今日。
港に着くと昨年来、ここ富浦で顔馴染みとなった方がいらっしゃった。今日は2人のみの出船。






          男は背中で語るのだ。

夏の高気圧にどっぷり覆われた海は鏡の様なベタ凪。
日差しはまだまだ容赦ないが洋上を吹きぬける風が優しく頬を撫でる。
今日は満潮が5時半~干潮が昼の大潮。水温は26℃。



釣り始め、左から右への潮が重く、しかも速い。すかさず細糸仕様で攻める。
団子の打ち始めから容赦ないボラのタックルをやり過ごし、速い潮にラインを流せるだけ流す釣り。
止めると仕掛けも浮き上がりアイゴに手を焼く。
一向に緩む気配の無い速潮に10時過ぎに小休止。11時前に再開。相変わらず棚を切るとアイゴの洗礼。
この頃から5mカセに入った方の竿が、やおら頻繁に曲がりだし忙しそうだ。
一方、こちらと言えば、底を流せば陰気なゴンズイが顔を出す。団子に入ってこないナーバスな黒達との間合いを詰めるべく緩み始めた潮筋を読み広角など織り交ぜるが、答えが出ないまま正午のチャイムが谷冴する。
今の今まで、アタリらしいアタリも無いまま・・・。

「?????・・・ナ・ン・デ・・クワナイノダ・・?」

12時半、ラインを這わせての攻めにようやくの海津。
このサイズならまだまだ群れで居る筈と数釣りを目論むも、どうした事かシビアな時間が過ぎていく。
どうにかこうにか上がり前の3時半に二枚目の海津に安堵よりも今日一日の疲れを感じずには居られない。





5mカセでは36、37cmの黒が二枚。やはりアイゴに手を焼いたそうだ。

棚を切れば(上げれば)アイゴの猛襲にご用心。速潮に流す釣りでのアタリボケにもご用心。
活性の高い時期なれどシビアな釣況な一日。餌取り達を、蹴散らすくらいの黒の群れに期待したい。
そして、モット・・ツリガウマクナリタイ。

レクイエム~NEW HORIZON 新たなる地平線へ

2012年08月17日 | 日記


敬愛するオヤジの弔いも終えた。
先日のペルセウス流星群を見た。漆黒の天空に無数の雫は、まるでオヤジの涙を見ている様だった。

うっすらと明けてきた東の空を見やれば遥か彼方の上空には一筋の飛行機雲の航跡が何とも言えぬ幻想的な色合いを醸し出している。暦の上では既に秋。往く夏をまるで惜しむかの様に気忙しい蝉が、ひとつまた一つと鳴き始めた。



テーブルの上には一枚の手紙と共に家内の手弁当が添えてあった。
心優しい気遣いに感謝し返事を残しおおよそ一ヶ月ぶりとなる富浦へと向う。









予定時刻に港に着くとそこには旧知の常連さんがいらっしゃり出船準備をしながら四方や話に華が咲く。
「ブログさぁ・・全然更新してねぇっすねぇ!頼みますよぉ~楽しみにしてんですからぁ~」と茨城訛りでまくし立てられると沈みがちな気分も、このひと時で弾みがつく。
程なくして舫いを取り出船。悠然と佇む大房岬に抱かれる様に凪の富浦の海が出迎えてくれる。





一通りのスタンバイを終えて一服がてら見上げた空は秋色のそれ。
ゆっくりと移りゆく季節を愛でながら一足早い秋の数釣りをも目論んでいた。



先週末には古豪常連方々が各筏、カセ共に海津~型モノ交じりで数釣りを堪能された様だ。最近の傾向として一番沖にある2番筏が好調とも聞いている。

今日は干潮が10時半~満潮が17時の大潮。水温は27℃。風も無くベタ凪の海。
釣り始めは右~左へのゆったりとした比較的素直な潮流れ。緩み始めるであろう9時前後に照準を合わせ打ち返していく。
早くも尋常ではないボラの団子タックルが展開。団子を調整しながら底立ちを取りつつも底はまだ静かだ。
底トントンを中心に中層でボラに団子を割らせての落とし込みなど織り交ぜながら様子を伺う。
案の定9時前になり潮が緩み始める。
ボラも底を荒す程では無い中、徐々にではあるがフとした瞬間瞬間に感ずるものがあった。
水温は高目なれど活性が上がりきっていない釣況にラインを這わせインターバルを長く取る。
凪の海ならではこそ見て取れたアタリが穂先に僅かに出る。掛け合わせのタイミングを見計らうが決め手が無いまま数投。
じれったさにそっと訊いてくると「・・!」掛け合わせ魚が乗った!久し振りの魚信の嬉しさに一瞬怯んでしまう。
しばしヤリトリをしながら40cm強のサイズを想像していた瞬間、魚は抜けてしまった。



針にはしっかりと黒の口周りの鱗。誠に口惜しい限りだが自分の下手さ加減に呆れるのと同時に、折角集まりだしたであろう魚を散らす結果になる事は必至だが、憂いを持ちつつも攻めるしかない。
久し振りの海だが焦りは無い。まだ時間はたっぷりある事を自身に言い聞かせる。
時間も10時を回った頃、沖合いにある2番筏の釣り人の竿が曲がっている。時合と見るが、先のバラシが響いているのか、こちらはあまり気配が無いのと同時にスローテンポな釣りが続く。フォールの最中に引っ手繰っていくのはアイゴ。
潮流が完全に止まった11時頃から縦の釣りを実践。居食いも当然の様に想定し餌落ちのフォールから訊き上げ、はたまた逆に這わせなども織り交ぜつつ昼前に掛けるも、これも痛恨のバラシを演ずる。

文字通り「心技体」が噛み合っていない事に今更ながら気付き、自分でも珍しいくらいに半ば自暴自棄になりかけ早上がりも頭をよぎる。

こんな時はしばし目の前にある竿を置いて気分替え。
いつもならテンポ良く攻め、10時頃には午後の釣りを考察し組み立てと腹ごしらえも当に終っているはずだが、夢中で釣っていたのか惰性だったのか、気が付けば昼を回っている。2番筏ではまた竿が曲がっている。競る気持ちを抑えながらも手弁当を頬張りながら今日の釣りを半分は諦め、もう半分は拙い腕を棚に上げて午後に期する自嘲。

小一時間程休憩を入れ、気を取り直して釣り始める。
潮が動き出した様だ。上潮は右へ、下潮は左への2枚潮なれど釣り辛さは然程ではない。
旧知の常連さんは隣の5番筏で連発。
「やっぱ海津釣りは楽しいねぇ~っ!連ちゃんだっよ~♪」
5番筏から見た私の背中がそんなに淋しげに映ったのかどうかは知らないが、叱咤激励の煽りにこのまま終る訳にはいかないと、早々に負け惜しんだ自分を奮い立たせるには十分な声援に感じた。

この頃から南風がやや強く吹き出し海面がさざなみ立ってきた。午後の釣りを組み立て直し、今一度ゼロからのスタート。
時間を追うごとに潮が重くなってきたので、既にスタンバイをしてある細糸仕様のロッドに持ち替え攻める。
細糸ならではの潮切りの良さに釣り易さも手伝って気分も上がる。
そしてすぐに答えは出た。穂先を「・・きゅっ・・!」と抑え込むアタリで32cm。
程なく潮が緩くなったので2号ラインに戻す。潮行きがコロコロ変わる隙を見て道具も変える。
得てしてこんな時は型モノが出たりするものだ。案の定、モヤモヤアタリで訊き合わせ掛けた魚は46cmのムッチリとした黒。
この時期ならではのパワフルなヤリトリを堪能させてくれた。
おおよそ30分間隔で潮行きが、走ったり緩くなったり止まったり目まぐるしい中、再び細糸仕様で33cmを追加。



一気に数を稼ぎたかった時合所だったがコマセも底をついてしまい、また午後になり辛うじて魚は出てくれたが自身の今日一日の釣りの有り様が情けなく、早めに道具を仕舞うには丁度良い。
この日は2時で上がった2番筏の釣り人が40cmを頭に5枚。
5番筏に乗った常連さんが海津~黒交じりで7枚の釣果。



遡る事数年前。
自艇でオヤジと浦賀にあるマリーナに回航がてらセーリングを楽しみ立ち寄ったこの海に吹く風は、今も昔も変わらない。
海は想い出も優しく包み込んでくれる。
心地良いシーブリーズに吹かれながら、在りし日に想いを馳せる晩夏。