栗太郎のブログ

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出羽三山の旅(5) 南岳寺

2015-09-11 23:53:36 | 見聞記 東北編

次に、山近くのロケーションを離れ、鶴岡市街へ。
はじめて足を踏み入れた鶴岡の町は、ゆったりした平野部の中核都市らしく、建物が高くなく、道幅も広く、空も大きい。
目的地の南岳寺は、鶴岡市内旧国道7号線からわずかに入ったところ。周りは住宅に囲まれた場所にある。
こちらもかつては注連寺の末寺で、御行寺と呼ばれていた。



コンクリ造りの本堂。かつての堂舎は、昭和31年に火難にあい焼失している。
事前予約もなしに訪れてみた。幸い、若い僧侶の方がいらっしゃって案内をしてくれた。
若いながらも熱心に説明をしてくれ、日頃より熱心に勉強されている空気を醸していて、好感。

こちらにいらっしゃる即身仏のホトケ様は、鉄竜海上人。
秋田県の旧仙北町、新藤家に生まれ、当山の天竜海上人に弟子入りした。
鉄門海上人が通した加茂隧道を、火薬を用いて改修工事を施した人でもある。
この上人も鉄門海上人と同じように左目がないが、さすがに刳り貫いたわけではないようで、トラホームという伝染性の眼病を患い失明したものだとか。
大日坊からここまでの4体の即身仏、どういう所以かすべて「眼」に何らかの謂れが残る。
55歳で湯殿山仙人沢に山籠、五穀十穀断ちの木食行の修行ののちに、宗祖弘法大師と同じ62歳にて入定。
ときに明治元年8月8日。さすがに明治と聞けば、なんだか時代が近く感じてくる。

仮の話として、もし即身成仏を志す人間がいま現れたとして、現在の刑法上、即身仏になることは無理らしい。
繰り返すが、即身仏になるためには、土中入定して息絶えたのちに、穴を密閉し腐敗を防ぎ、3年ほどのちカラカラに干からびた頃を見計らって掘り起こす作業が必要となる。
つまり、一人の力では成し得ることは能わず、誰かの助けがいるのだ。
現在、その助けをするということは、「自殺ほう助」にあたるらしい。即身成仏は「自殺」と見做されるからだ。
諸民救済の崇高な覚悟も、そんな扱いをされてはたまったものではない。

即身仏の解説をいただいてから、ホトケ様の周りの宝物の紹介をしていただく。
即身仏の話を十分聞いたので多少満足気味になっていて、話の内容をやや聞き流していると、
「・・・男根を祀っております。・・・」的な言葉が、僕の耳を通り過ぎようとした。(たぶん、男根と言ったと思うが記憶は不明瞭。)
「????? 男根? ??? いま、そう言ったよね? ??? え?誰の? ??? なんで? ???」
僕は小さな厨子を指差し、「あの、今言ったこの厨子の中にあるナントカって、おちんちんですか?」と聞いた。(こちらも、おちんちんと言ったと思うが記憶は不明瞭。)
若い僧侶は、「そうです。鉄門海上人の男根です。」と顔色も変えずに答えた。
このときの僕はまだ、鉄門海上人が訪ねてきた遊女(漫画では志乃という女性だったが)に、形見代わりに自分のおちんちんをちょん切って渡したことなど知らなかった。
知らなかったこそ、僕は目玉をひんむくらいに驚き、次に聞くべき質問さえ口から出てこなかった。
実際にこのおちんちんは、どんな経緯を経てこの寺にたどり着いたのであろうか?
鉄門海上人自身がこの寺の住職になっていた縁であるのは違いないだろうが、まずその遊女が、捨てたりすることなく、大事に仕舞っておいたことから始まっているはずだ。
その後は、どんな人からどんな人の手を渡ってきたのだろう?
上人のこの地方での人気を考えれば、その時々の所有者たちはけして疎かな扱いをしていたとも思えず、当然、守り神(もちろん恋の)として崇められてきたはずだ。

漫画『鉄門海上人伝』作者のとみ新蔵氏は、かつて漫画の縁で南岳寺を訪れたことがあった。
そのときはまだ火災にあったそのままでお堂さえもなく、しかも無住で、古びた一軒家に安置された鉄竜海上人の即身仏は、近所の方が管理していたらしい。
しかしその時には鉄門海上人のおちんちんのミイラはなかった。近所の方も聞いたこともないといっていた。それがのちに見つかって、こうして今は一緒に安置されている。
切り取られたおちんちんと言えば、帝国ロシア末期に暗殺されたラスプーチンのホルマリン漬けのそれがことに有名であるが(知りたい人はご自分でググってください)、
200年以上も経ち、おそらく干からびているであろう鉄門海上人のおちんちんは、さていま、厨子の中でどんな状態になっているのだろうかと気にはなる。
そんな興味は深まるばかりだが、厨子の中に納められた玉(おちんちん)は、まさに字のごとく「宝」である。やすやすと余人に見せるものではあるまい。






さてさて。

鶴岡市では未年御縁年特別企画として、市内(つまり旧朝日村も含まれる)にある「湯殿山系即身仏めぐり」を実施していた。
即身仏をもつ4寺院すべてで集印をいただくと、先着400名にオリジナル手ぬぐいが貰えるのだ!






この南岳寺で全部押印してもらえた僕らは、一枚ずつ手ぬぐいをもらった♪




(つづく)



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