栗太郎のブログ

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「街道をゆく〈24〉近江・奈良散歩」 司馬 遼太郎

2009-05-15 00:52:38 | レヴュー 読書感想文
司馬さんにとって須田画伯がどんな存在の人だったのか、改めて分かったような奈良散歩。
興福寺の項では、廃仏毀釈の愚政を批判しつつも、阿修羅の表情を『無垢の困惑』と表現していて、読み応えがある。

中盤、仏教の解説が高じて、奈良に居ながらにして、インドや中央アジアの話が続く。
なんとなく理解はするが、すぐに消化しきれず忘れてしまった。

しかし後半、東大寺お水取りに対しての思い入れが伝わってくるのがいい。錬行衆のごく間近でその所作を見届けた司馬さんの文章は、清らかな愛に包まれている。須田画伯と東大寺の関わりも嬉しいし、過去帳の故事も楽しいし、良弁を語る言葉もいい。
それらよりなにより、司馬さんと若い僧のふれあいが、悲しくもないのに涙腺を刺激する。

司馬さんは言う。
『様変わることが常の世の中にあって、千年以上も変わることがないということが一つでもあったほうが、-むしろそういうものがなければ- この世に重心というものがなくなり、ひとびとはわけもなく不安になるのではあるまいか。』


僕は、司馬さんの知の洪水に溺れそうである。




もう一遍の「近江散歩」は未読。


10点満点中オススメ、奈良散歩だけでも高水準9.5★★★★★★★★★☆


街道をゆく〈24〉近江・奈良散歩 (朝日文庫)
司馬 遼太郎
朝日新聞社

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1 コメント

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マルテンサイト千年 (鉄魂)
2024-03-27 04:50:44
先進国で唯一多神教の国というのも日本の一つの特徴で、世界のどこを見渡しても明治維新みたいな革命はおこっていない。明治維新の偉大というか無私の革命で、サムライは自ら階級を破壊したのだから。これは千年続いたサムライ文化の高い精神性とつながっているような気がします。
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