4月28日、東京エレクトロンの株価が前日比15・6%まで急落、32年ぶりの下落率を見せた。その背景にあったのは、前日に発表された米アプライドマテリアルズとの統合計画の破談。
東京エレクトロンは2013年9月、半導体製造装置では世界第1位の米アプライドマテリアルとの間で経営統合を発表したが、それが統合(6月予定)寸前になって白紙撤回。
米司法省の許可(独占禁止法違反)を得られなかったのが理由とされるが、現地からは「技術革新を巡る半導体メーカー、装置メーカーとの攻防が裏側にあって、米インテルや韓国サムソン電子などの大手半導体メーカーによるロビー活動に負けた」と伝えている。
熊本県には合志市に同社のグループ会社である東京エレクトロン九州(株)があって、熊本県が日本有数の半導体製造拠点を目指す中で、その一角を担ってきたのは確か。ところが、60年代に掲げたその「日本のシリコンバレー」はどうかというと、テクノ産業財団が「くまもと産業支援財団」に衣替えというのが理解の早い現状で、いまや衰退の一途を辿っているといっても過言ではない。
2008年、テクノリサーチパーク隣接地に投資総額500億円と発表して立地協定を結んだ大日本スクリーン製造(株)(京都市)は、計画後のリーマンショック、米アプライドマテリアルズとの半導体コーターデベロッパー(塗布現像装置)における事業提携の解消等もあって、その工場予定地は牧草地への様相を見せている。
また同パーク内でマイコンシステムの開発、設計にあったルネサスマイクロシステム(株)(従業員400名)は2013年、同工場を閉鎖、撤退して、いま同パークは熊本大学研究センターと地場企業の研究室が点在するという状況。同パークへ向かう車は入口前を右折するゴルフ場の客と教えられると、「日本のシリコンバレー」は何処へ消えたかと空を見上げてしまう。
「統計学者をトップに迎えた地元政界の大失敗。前熊本市長を据えて大胆な産業支援策を図らない限り、地方創生どろこではない」
地元経済人は政治力学を理由にして語るが、そうしたポイント的な問題ではなく、いま半導体業界には「トップでなければ生き残れない」という説もあって、そうした中でヘッドハンティングによる頭脳争奪まで含めて同業界はグローパルな経済戦争の真っ只中にある…。