熊本レポート

文字の裏に事件あり

熊本空港駐車場の怪にも見えたノーパンしゃぶしゃぶ的な日本

2015-03-03 | ブログ

 1998年(平成10年)、時の三塚大蔵(現財務)大臣と松下日銀総裁の引責辞任まで発展した官僚汚職事件があった。それは大蔵官僚7人が逮捕されて、起訴という官僚汚職事件(1人は不可解な自殺)で始まったが、接待した大手証券、銀行のMOF担当(大蔵省・Ministryo of Finance)と彼らの舞台が、「ノーパンしゃぶしゃぶ」(下着をつけない女性スタッフが接客)だったということでも話題となった。そもそも震源地は該当店の楼蘭(ローラン)で、そこからマスコミ関係者に流出した顧客名簿で表ザタとなったわけだが、現在のような充実したネット社会ではなく、それを入手した記者らの刷り合わせで揃った各省庁官僚約400名の名簿は衝撃的であった。自分の金で食べて遊ぶならともかく、公人を売って飲食していたわけだが、その彼らがこの15年間、日本の中枢で活躍(1人の政治家は自らのブログで自白)してきたのもまた事実であって、これは我が国で何を意味し、また何を問うているというのか。

 人吉、球磨地方の人たちは、そのほとんどが鹿児島空港を利用するが水俣、八代市の中にも同じく「熊本空港より鹿児島空港を優先」と、フライト地を語る市民もある。彼らの理由が「送迎の際、ターミナルビル前での駐車は警備員が5分も認めず、駐車場に入れると10分でも150円を徴収。そんな熊本空港駐車場に比べて鹿児島空港の駐車場は2時間まで無料。その違いは何なのか」(精密機械メーカー社長談)とは言わないが、その駐車場の料金設定が鹿児島空港、北九州空港駐車場と熊本空港駐車場とでは違うというのは不可解な問題。短期出張、旅行者の2日で400円という差額はともかく、送迎の場合での食事を挟んで2時間の無料(鹿児島空港駐車場)というのは、熊本空港駐車場の利用者にとっては明らかに不満。

 それでは、その差額の背景とは何かということになるが、一言でいうと「開港時段階における政治力の違い」ということになる。


 1972年に開港した鹿児島空港は駐車場を県有地で整備したが、その1年前の1971年にオープンした熊本空港は、滑走路はともかく空港ビルディングの前まで運輸省(現国交省)へ譲渡させられ、そこに整備された駐車場を公益法人空港環境整備協会に託した。役員理事はもちろん、役職員(本部職員21名、航空環境研究センター職員13名、駐車場管理職員126人…2014年)の大方が国交省出身者による空港環境整備協会となると、国交省の天下り先である公益法人に熊本県は委託したとなる。当時、運輸省の意向に黙って従ったとなると、これは政治力の違いという以外に何があるだろうか。
 2014年度、空港環境整備協会の正味財産は約151億円。正味財産とは資産から負債を引いた金額で、民間企業では資本金や余剰金にあたる。また退職給付引当資産が約5億円、役員退慰労引当金は約7800万円(役員報酬は約1700万円)と、空港の多くが赤字経営で多額の税金を投入しているという中、この天下り法人は10分の送迎車まで挟み込み、そうした事業姿勢で熊本県でも財産を膨らませてきた。
 同協会は自ら運営する駐車場収入で公益事業を行っているとして、国からの補助金は入っていないが、国民の財産である国有地を使って独占的に収益を吸い上げているわけで中身は一緒。
 そもそも同協会の目的は航空環境に関する調査、研究により空港周辺の環境整備に努めるとしているが、簡単に説明し直すとスタッフ11人による空港周辺でのテレビアンテナの点検。
 福岡空港周辺なら時には必要性もあるだろうが、熊本空港や長崎空港周辺での電波障害の点検といわれても理解しにくいというのは市民の本音で、仮に必要な場合(不定期)があるとしても民間事業では無理という理由はない。
 同協会の事業維持費はその多くが人件費であって実質126名の現場職員によって余剰金151億円を生み出すとなると、この天下り法人の異様さが想像できるのではないか。
 2014年、同協会の事業計画に「高遊原相撲大会助成(益城町)」と「阿蘇くまもと空港総合時刻表作成助成」とあったが、国民の財産を使用しての独占事業ということを考えると、天下り法人の無駄という印象を拭い去ることは極めて困難。
 ところで2009年、この空港環境整備協会について朝日新聞特報部が一面で取り上げ、民主党政権の中で行政刷新会議によって「仕分け」に上げられ、同協会による空港駐車場事業の廃止が決定。同7月には前原誠司国交大臣が「空港環境整備協会の解散」も含めての見直しを発表。
 それが自民党、公明党の連立政権に戻って、なぜに白紙に戻ったのか。独立行政法人を順繰り回って2億円の特別退職金を懐にいれた元官僚について、毎日新聞も「破廉恥」と評したが、冒頭に述べた「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」の顧客名簿に名前を連ねた企画課長が国交省を退官後、独立行政法人運輸施設整備支援機構副理事長、そして空港環境整備協会の会長という天下りの順繰りは何を意味し、何を熊本県民に問いかけているか。
 政治力の弱さを嘆いてはおれないわけで最早、熊本空港駐車場は避けるという意地、抵抗こそ本来の「モッコス」と先述の経済人も語った…。