録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

二度と見られなくなる貴重な録画ディスクたち

2012-11-16 15:40:43 | 次世代ビデオへの懸念
時々コメントを頂いています、あらざねさんから、運営されているブログで公開されていたHDRecを自由化するスクリプトの公開を停止した、という報告をいただきました。HDRecはHD DVD規格が存続していたときから使われ始めたMPEG2やAVCのHD録画番組をCPRM対応DVDに移動させるための規格のひとつで、事実上東芝だけが採用していたものでした。東芝のHD DVD撤退後もRD-X7/X8/X9や同世代の機DVDレコーダーには採用され続け、スカパー!HDの初期には唯一ディスクに録画番組を移動できる規格とあって、一部の貴重な番組はHD Recにしか記録がないものもあります。
現在、その東芝ですらHDRecを切り捨てようとしています。2012年11月現在の最新機であるDBR-T360/T350Z320/Z310という"NEW"のマークがついている機種はいずれも情報サイトで"※HDRec(HDVRフォーマット)のディスクは再生できません"という表記が小さく書かれています。NEWではない旧機種ではまだ再生が可能ですが、完全切り捨ては時間の問題でしょう。このままでは、HDRecで記録したDVDが全て再生出来なくなります。HDRec自由化は、そういう危機を救う貴重な存在でした。厳密に言えばあらざねさんの公開されていたスクリプトのみでは何も出来ず、別途コピー用のプログラムファイルが必要になります。それはすでに入手困難になっているために、影響はそれほどありませんが、さらに道を閉ざされることになったのは確かです。

今までの常識で言えば、再生出来なくなる古い規格のもので、かつ保存しておきたいものはダビングなどで新しい規格に移して視聴出来るようにするものでした。が、HD DVDと日本のデジタル放送はその常識を無視し、一切の救済措置が存在しないものになってしまいました。アナログ時代には出来たアナログダビングすら、記録したディスクからの再生は"CGMS-A"という腐れ規格のせいで行えません。CGMS-Aを認識出来ないためにダビングを行える機器は、これまたすでに入手困難です。ユーザーの手で行えないのならメーカーがサービスで救済すべきなのですが、東芝はもちろん著作権業界にもその気は全く無いようです。一般市民など、不便であればあるほどいいとでも思っているのでしょうか。

著作権業界は「自分たちは被害を被っている被害者だ、保護されるべきだ」と訴え続け、とうとう意向に逆らう者を罰則付き犯罪者に仕立て上げる法律まで、一般市民の反対を徹底的に無視し意見を言う場所を奪うことで作り上げました。被害者が保護されるべきならば、再生がサポートされなくなったディスクを持つ者も被害者で、最低限の保護は受けられるべきです。ところが、「表面上は被害者、実質的には最強の権力者」である著作権業界は、そのダブルスタンダード体質を発揮して個人の被害を知らんぷりするばかりか余計悪い立場に追いやってしまいました。

最近、またコピー関係での逮捕者が増えつつあります。例えば

地デジのコピーガード、解除ソフト配信で逮捕


" 10月施行の改正著作権法で、地デジ放送のコピー防止機能を解除するプログラムの提供が違法となった。県警によると、この規定の適用は全国で初めてという。"

などとありますが、"コピー防止機能を解除するプログラム"という具体性に欠ける言い回しのソフトを売ったことで逮捕された例なら、過去に、ちょうど3年前に存在します。
手前味噌ながら、当時わたしがまとめた記事がありますので貼っておきます。

「ダビング10解除摘発」事件とその周辺についてまとめ


今回の件とほとんど変わりはありません。前例がある以上、改定前でも関係なく逮捕は可能だったのです。にも関わらず、「改正(悪)著作権法で(中略)違法となった。この規定の適用は全国で初めてという。」と書いています。
これは、例の「遠隔操作ウィルス事件」の影響かと思います。著作権業界の思惑では、いまごろは何人か目を付けていた人間が「違法ダウンロード」で逮捕されて実名をさらされ、その後で高額な損害賠償金を要求される訴訟を起こされる「見せしめ」を作り出すことで、権力とダウンロード違法罰則化の脅威をまざまざと見せつけているはずでした。ところが、あの事件のおかげで逮捕の決め手をIPアドレスとするお手軽捜査ができなくなり、警察も著作権業界への協力が出来なくなってしまいました。仕方なく、改定と特に関係のない事件を「規定の適用」と発表することで形だけでも著作権業界への義理(あればですが)をたて、新聞報道もそれを手助けするために「初めて」扱いにしたものと思われます。売ったのは言語道断(おそらく自分で開発したプログラムではないでしょうから)としても、ソフトの存在を違法とするのなら、代わりの合法手段を用意すべきでしょう。HDRecのような例もあるのですから。でも、そんな気配は全く見えてきません。


なにかあるごとに規制強化と違法扱い、そればかりとなった著作権業界ですが、権力者となった以上立場の弱い人間への配慮や歩み寄りの責任が生じるはずです。もらうけど施さない、そういう態度でいる限り、いずれ足下が崩れていくことでしょう。そしてそれはもう始まっているはずです、誰の目にも見える形で。

ちなみに下のリンクは前の事件のころのSARVHと東芝の対立が始まった頃の記事ですが、今の視点で見て、彼らの主張を我々に置き換えると面白く読めます。

「メーカーの主張は子どものわがまま」 SARVHの東芝提訴受け権利者団体が会見

コメント (27)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« AviutlからのVCEエンコードで... | トップ | 録画派も注目!HD PVR2! »

27 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウイルス (どじょう)
2012-11-16 18:09:59
免疫力をつけて身体がウイルスに感染することを何とか避けたい。
同時にパソコンがウイルスに感染することも避けたい。
gooブログにアクセスすると、ウイルスに感染することがあるから、近寄らないことが望ましい。
URLがblog.gooで始まっている。また角の中にgが入った赤いマークが付いている。
ウイルス対策ソフトがパソコンに入っておれば問題ないと思われるが、念のため。
君子危うきに近寄らず。
返信する
Unknown (chibalife)
2012-11-16 19:27:38
そうなんですよね、掲示板で逮捕記事を見たとき売ってんのに何で配信となってるんだろ?、って思いましたから。
他にも色々な要因が、ありそうですが件の事件が微妙な影響を与えているのでしょうか。

補償金裁判も本当に消費者不在でしたが、あえて消費者サイドが参加しているようにもまた見えていませんでした。
「納得いかないなら日本人も声を出して言うべき」なんてドヤ顔で言うつもりもありませんが、
とっくに安定していたPT2、他チューナーの影響でどうでもよくなっている雰囲気が、ネットにはあったように思います。

まあ、結局これがkrmmk3さんの「PT2に満足し我々は思考停止に陥っていないだろうか?」の記事につながっていくわけですが。

音楽離れもとまる気配が無いとの事なので、本当足元から崩れていってますね。
返信する
Unknown (たん)
2012-11-16 21:06:20
先日知人の家にノートPCを届けに行った時に出た話ですが、
デジタルデータは決して万能ではない、
HDDが壊れやすいように、案外もろい物で、
また日夜技術革新がめざましい中、
MOやZIP、PDそしてフロッピーディスク等のメディアがひっそりと無くなっていき、
ユーザーは常に新しいメディアにデータのバックアップをとり続けていかなければならない状況と言うことを話していたんですが、
HDRecの件は多少なりとも状況は似ていると思います。
メーカーが機器の生産を止めてしまうと、それで録画した動画は失われてしまうので、非常に痛いと思います。
しかし当方的には、なんだかBDも同じ状況になるんじゃないかと考えたりもします。
返信する
Unknown (emanon)
2012-11-17 00:13:45
 そう言う不便や録画しても観切れないという思い 意味を失っていくテレビを見るという行為 それでも掛けてしまう録画への手間と散財の数々  スマホも最近ではしなびるチップが入っているらしいですね

最近思うのがデジタルテレビへの乗換えが進むほど視聴率やCD売り上げ減が進んでいないかと 主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移 グラフ化とか見るとね 
 ドラマ中の生活水準との隔たりに答えられない親それを見る子 
CDはプロでも良い再生の難しいCDをブームで売りつけたり コピーコントロールやメーカー製ウイルス騒ぎあれでCD再生2回目から当確CDをPCでは再生できなくなったりだったかと 専用ソフトで再生させるも音質低下もしたな 発売日に学校中が買ったよと言っていたころが懐かしい

万能家電になりつつあったPCでの突然の不便 コピーコントロールCDと言うだけで中古市場での買い取り拒否 うんざりする思いは数知れないのが2003年ころの話


動画は10年くらい経ってそれでも見たいものならいっぱい有るので購入して観たりもしますけど 
…、 なんかこれ賞味期限切れてしまっているな 美味しく感じなくなっている なんてこともあったりしますがw

その年代の作品はどこかでつぼが繋がっていてある程度順に見ていかないとはまらない ドラマもアニメも勉強が必要なのだろうな  「何か一つに夢中になったら馬鹿になると」 世の中の流れを誘導して取り上げてきたじゃないのさ何を今更とね 

CDは最近中古で買っていますよまずは90年発売からスタートしてます買ったら全て90年のアルバムだったw
返信する
Unknown (emanon)
2012-11-17 00:29:04
 チップが入っているらしいはレコでした
返信する
感謝しております (migsis)
2012-11-17 10:59:04
こういう話しを聞く度に、自分は良かったと思います。D-VHSの録画物を救い出すことが出来て。

これもこのブログのおかげですね。Hauppauge ColossusとかSpursEngineのAviutlプラグインとかを知ることが出来ましたから。

D-VHSもHD-DVDほどではないにせよマイナーな存在だと思うので、情報が無く半ばあきらめておりました。
返信する
話はずれますが (秋山)
2012-11-17 22:46:44
映画用フィルム(撮影用と上映用)の国内生産が来年3月をもって終了する事を今週地元紙で知りました。「アバター」の大ヒット以降フィルムレス(主流は4k撮影)映画が大部分を占め、最盛期の2007年以降フィルム需要が3割にまで激減した事が大きな理由です(国外でもコダックが経営再建中で今後どうなるのか不明)。監督の中には生産継続を望む声が高いのも事実です。デジタル化に対応できない映画館が来年春以降相次いで閉館するところが出てくるのは否定できません。
返信する
Unknown (krmmk3)
2012-11-17 23:41:58
>どじょうさん
批判されているようですが、何のことかわかりません。ウィルスに感染でもしました?

>chibalifeさん
以前もそういう指摘、してますね、わたし。なんか現状に甘んじて、根本の改善を求めなくなってきている。ある意味今度の選挙は格好の舞台・・・といいたいところですが、そっちをマニフェストにうたう政党が皆無ではどうしようもないです。

>たんさん
あらためて考えると、記録面がここまでむき出しになっているDVDなどの光学ディスクなんて耐性がムチャクチャ低いようにしか見えませんしね。まだバックアップが可能なデータは、それが可能な分幸せといえるかも知れません。もちろんBDには同じことが言えますね、カートリッジ入りなんてなかったことにされてますから。

>emanonさん
コピーコントロール円盤のころが、一般ユーザーと業界の意識が薄利していく境目でしたね。わたしはあれ以来音楽CDを買うのをやめました。動画は、音楽と違って意識の集中が必要になりますから、古いものだと空気を感じ取れないとなかなか面白く感じられないってことあります。で、行き着くところはさらに時代をさかのぼって昔見た覚えのある映画とかの域に来ると。最近のふた昔前のアニメBDボックスラッシュがそれを象徴してるような気がします。


>migsisさん
わたしはただ場を用意しただけですけどね。D-VHSは、キャプがないとどうしようもないですからね。せっかくのIEEE1394出力ありなのに。

>秋山さん
とうとう来ましたか。映写のデジタル化が徐々に当たり前になりつつあるいま、そのうちやるだろうと思ってましたが。小さな昔の映画が中心の映画館は、もともと存亡の危機といえる状況でしたが、完全に息の根を止められるかも知れません。そのデジタル上映も、鑑賞者が求める画質のよさに必ずしもつながっていないのが少し悲しいところです。
返信する
Unknown (あらざね)
2012-11-18 00:27:16
わざわざエントリーを起こして下さって、ありがとうございます。とにかく、ここに報告しておけば間違いないと思っていたのですが、正解のようです(笑)。言うべきことはほとんど、言っていただけましたし。

HD Recで記録したメディアからのリッピングが必要な人は、すでに何らかのツールを入手しているだろう点や、これから先、HD Recを使う人が大きく増えるとは考えられない点、警察の法解釈次第では私にも害が及ぶ可能性などを考慮して、公開を取りやめました。

とはいえ、メーカーや権利者は、正規の手続きによって記録したメディアの、HDDレコーダー以外での再生を一定期間は保障する義務があると思いますし、それが全く出来ないのなら、そういったメディアからのリッピングは許可すべきだと思いますね。権利と義務は表裏一体。政府に圧力をかけてまで、義務を果たさず権利ばかり主張することに、大きな違和感を覚えます。
返信する
Unknown (秋山)
2012-11-18 01:16:30
年1回シネコンで映画を見てますが、映写機の性能(主にレンズ)がフォーマットに明らかに追いついておらず全体的に映像がぼけてしまっているのが残念です。TVで映画(勿論HD放送の)を見た方が映像がくっきりしてますが、今度はサイズが小さいのが残念です。8kが映画館で一般化し映写機も改良されたものが導入されれば何度でも映画館に足を運びたくなりますが、最低でも10年以上先になりそうです。
返信する

コメントを投稿

次世代ビデオへの懸念」カテゴリの最新記事