録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

動くとダメなら動かなければいいじゃない 「大怪獣のあとしまつ」

2022-02-09 12:29:58 | 特撮・モンスター映画
※映画の内容に関して触れていますので、ご注意願います。

話題の映画、「大怪獣のあとしまつ」を見た。
無性にもう一本映画が見たくなった。コレクションの中で手が伸びたのが「連合艦隊」。真珠湾攻撃から戦艦大和轟沈までをある程度史実に沿った形で日本海軍視点で描いた戦争映画である。情報を正確に把握できず、面子のために無謀な作戦を立てる上官と、その思惑など全く知らず、「お国のため」と信じて目の前のことにまい進する現場の軍人たち。わずかな出番しかない、名もない一人ひとりまで強い印象を残す登場人物たちが陥る地獄絵図があまりに強烈。無駄死にに等しい特攻をしかけさせる不条理な展開が心を震わす。さすが「世界大戦争」の演出も手掛けた松林宗恵監督である。特撮も緻密さとリアルさを重視しながらダイナミックさも忘れない中野昭慶特技監督手腕が冴える。クライマックスの戦艦大和の爆破が有名だが、個人的には、おそらくは師である円谷英二特技監督が特撮を手掛けた「ハワイ・マレー沖海戦」を強く意識したであろう真珠湾攻撃シーンがもっとも目を引く。これ以降国産戦争映画が悲劇的なものが主流となっていったことに関しては賛否両論あるだろうが、先人たちに対する強い思いが全編を覆う。二時間を優に超える超大作なのでお手軽気分では手を出せないのだけれど、魂を泣かせたい時にはこれに限る、と思う映画だと思う。

・・・ええと、何の話だっけ。

話題になっている映画、「大怪獣のあとしまつ」、行ってきました。もちろん題材からして話題にならなくても見に行くつもりだったんですが、予想以上にあちこちで書かれているんで、これ以上先入観が積もる前に見てしまえと。「じゃぁお前以外にも先入観を植え付けないように書くなよ」というご意見もあるでしょうから、あえて若干違う流れで書こうかな、と。
「怪獣が死んだあとの展開」。怪獣ものを見た人が誰もが一度は考えるものの誰も手を付けなかった怪獣ものとして究極の空き地。そこにあえて踏み入った勇気にまずは敬意を表します。過去の作品で死体のみの登場というと、まず思い出したのは「ゴジラ・モスラ・メカゴジラ 東京SOS」のカメーバ。検証のみで処理までは描かれませんでしたが、当時扱いに新鮮さを感じました。
死体処理自体がテーマとなるとテレビシリーズ「ウルトラマンティガ」の一篇「怪獣が出てきた日 」。途中からゾンビ怪獣として動き出すので最後は普通に怪獣退治の話になっちゃいましたけどね。登場怪獣のシーリザーがゾンビのくせに体に付いた火を嫌がって消すシーンが印象的。
仮にわたしならどう構成するだろ。死体処理のためにあーだこーだとこまごまな作戦をたててなかなかうまくいかない、っていうのがまず思いつくなぁ。「ウルトラマン」の「空の贈り物 (スカイドン登場)」のような。どう考えても宇宙へ追放できないプロペラやガスを使う作戦が変だった半面一峰大二氏コミカライズ版の近未来的列車の技術を使った方法が素晴らしかった。もしくは製作会社の松竹つながりで「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」な感じとか。意外と科学者視点で理屈としては正しいがやってることはおかしいテレビアニメ「妄想科学シリーズ ワンダバスタイル」(誰も知らねーよ)みたいな感じもいいかも知れない。うーん、妄想が膨らむ。
と、怪獣ものヲタなら無限に妄想できる至高のキッカケを与えてくれた「大怪獣のあとしまつ」もうそれだけでこの作品はわたしにとってはお金払う価値はあると思います。
さてさて実際の内容はといいますと、政府首脳が明らかにふざけている反面現場は比較的真面目に対応、という感じでした。ただ、政府首脳がやるなら"おふざけ"の方向が違うかなぁと思いますし、現場の真面目ぶりもどこか徹底していない、やや中途半端に進む印象が強かったのです。怪獣も、冒頭くらいは動いてくれるのかなlと思っていたのですが、最初から死んでいましたし。2014年のハリウッド版「ゴジラ」そっくりに仕上げた破壊された街も予告編で使われただけのワンカットのみの利用とダイナミックさには欠ける出来でちょっと残念。ただ、「シン・ゴジラ」といい公開はもう少し先ですが「シン・ウルトラマン」の予告編といい、日本のCGだと怪獣は動いていなければ迫力あるんですが動き出すと途端にCG臭さ全開になる作りなので、怪獣が動くシーンがない方が臨場感が出る、という判断だったとすれば間違っていないと思います。「動くとCG臭くなるのなら動かさなければいいじゃない」がひょっとしたら企画の原点だったのかも知れません。日本の怪獣も、どうしてもフルCGでやりたいのならぬいぐるみ怪獣の発想をそろそろ捨てないといけない時期なんでしょうね。それはさておき
聞くほど悪くないな、というのが全体の印象。政府のふざけ方はさすがに極端ですが、「くどい言い回しを避けてシンプルに分かりやすく」混乱を描いて市民への情報操作を最優先している、と見れば理解できますし、一般市民は怪獣という非常事態から解放された解放感からふざけるのはむしろ自然です。コメディタッチなのも脚本・監督がドラマ「時効警察」の三木聡氏ならああなって当然、むしろ「時効警察」ファンが見に来ることを最大限に配慮すればああした規模の大きさを感じないコメディタッチになるのも仕方ないかと。それが面白いかどうかは別ですけどね。おそらく不評なのは観客の主力が「時効警察」など過去の三木聡ファンより怪獣ヲタが主だったことも一因かと思います。当然わたしのように妄想による期待を膨らませていた人も少なからずいたでしょうし。それでもオダギリジョーが出てたあたりは良かったと思いますよ。わたしもあの辺りで「やっとこの作品の世界観になじんできた」ことを感じましたし。

それでも、もちろんあのオチは最低だと思います。予想はしてましたが、どちらかと言えば「アレだけはやるなよ、絶対やるなよ」という悪い予想のオチだったのでガッカリ。伏線をちりばめ、観客の予想の展開が襲ってくるのは決して間違った演出ではないですが、そこにプラスアルファが加わって脅かしてナンボ。工夫がないと思います。ただ、そんなものより一番最後、スタッフロールの後が許せない。あれは製作会社や出資者への冒涜です。あんなものでふざけるくらいなら、例えばいきなり隕石が落ちてきて全部戻ってきて「あ」っけにとられて全部台無し、とかで落とす方がまだ良かったんじゃないかな、と思うのです。

 
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (siinamon)
2022-02-09 19:24:24
ワンダバスタイル、むっちゃ懐かしいっすwww
あれくらいはっちゃけてればなんでもアリで批判も起きないだろうけど…

あとしまつ、普通に興味がありました。見に行く気満々でした。
ですがタイトルとは裏腹の内容(よく言われるのは視聴者の見たいものと作品の方向性が違い過ぎる)ということで時間とお金を無駄にする勇気がもてません。
怖いもの見たさはあるのですが自分、映画が趣味で年間100本以上(去年は175本、2度以上見たものを抜くと140タイトル)、週末の一日で4、5本見てきます。
その中で当たりハズレはあり、外れても笑ってネタにできるのですが最初からダメだとわかっているものに時間とお金を使うなら他の作品を見るかなぁと。

まあそのうちWOWOWでやるだろうから、それまで待ちですかね…
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Unknown (emanon)
2022-02-10 01:07:18
 まあ、倒した怪獣は何処へ行く? 最終処分場は何処のレストランではなのでしょ ゲームやアニメから行くとw
返信する
Unknown (DANDADA DADAN)
2022-02-10 07:14:07
柳田理科雄の空想科学本で読んだ事のあるテーマなので、昼食で眠くならないように公開初日の午前中に
鑑賞しました。
それでも1/3くらいは意識が飛んでいたので色々批判する資格が腐敗してしまいました。
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Unknown (krmmk3)
2022-02-11 01:16:00
>siinamonさん
タイトルや予告編から連想できる様々なパターンからすると最小公約数、って感じです。
さすがにすごい数見てますね。WOWOWも引き受けてくれなくて衛星劇場か東映チャンネルが先かも・・・。

>emanonさん
その行先をどう描いてくれるかが楽しみだったのですよ。その期待には応えてくれなかったなぁ。

>DANDADA DADANさん
序盤途中から中盤手前くらいがちょっときつかったかもしれないですね。
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