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録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

巨匠が撮った怪獣映画

2012-06-28 22:04:58 | 特撮・モンスター映画
わたしがブログで何度も絶賛しているMr.BIG(某歌手の新曲ではない)ことバート・I・ゴートン監督の、おそらく最後の巨大生物映画、「巨大蟻の帝国」のDVDがついに発売されたので、さっそく取り寄せて視聴したものの、うーん、期待したほどではなかった。
特撮はすばらしい! 自ら開発したという触れ込みの合成技術を使い、本物のアリを合成するいつも通りの手際、アリを一列に並べて進撃させるすばらしい演出、なのに時々足一本で立ち上がって空を壁のように上ろうとするアリがいる見た目の楽しさ。BIGの名に恥じない完璧な画作りである(もちろんマニア視点で)。ところが、ストーリーは変に凝ったためにほとんど2部構成。前半は訳も分からずアリに襲われつつ逃げ続ける主人公一同を描いていたのに、途中から逃げ込んだ街の工場に場面が移ってしまい、アリが人を襲うシーンがなくなってしまう。しかも、その後半のストーリーは「クォーターマスII」そっくりで、この手の映画を見慣れた人間にはちっとも新鮮みがない。余計なストーリーなんか入れず、強引な特撮で一本調子のストーリーを追うのがBIGの持ち味なのに~。この作品の前年の「巨大生物の島」はまさにそんな内容で、巨大ネズミ軍団と追い詰められた人間の攻防だけにしぼっていて面白かったのに、たった一年で何があった? 実は「巨大生物の島」「巨大蟻の帝国」はBIGにとって数年ぶりの巨大もの映画。「ジョーズ」や「キングコング」のおかげで動物パニック映画ブームが起こるまでは普通の映画を撮っていたため、一本目は単純なパニック映画でも、二本目ともなるとちょっと凝ったストーリーの映画を撮りたくなったのかも知れない(BIGは脚本も自分で書く)。ただ、成功したとは言い難いのは残念で仕方がない。

MGM HollyWood Classics 巨大蟻の帝国 [DVD]
バート・I・ゴードン,H・G・ウェルズ,ジャック・ターレイ
J.V.D.



と、いうわけで、知っているけど見てない怪獣もの映画も少なくなってきたことを感じる昨今、一抹の寂しさを感じていたところ、なかなかの大物が発売された。タイトルは「シャーロック・ホームズの冒険」。同タイトルのテレビシリーズもあるが、映画の方。おなじみシャーロック・ホームズが事件の謎を追っていくうちにネス湖で例の怪獣と出会うコメディ映画である。
なんじゃ、そのB級臭プンプンの映画は? と思われるところだろうが、監督は巨匠ビリー・ワイルダー。1960年の「アパートの鍵貸します」、スカートがめくれるシーンが有名なマリリン・モンロー主演の「七年目の浮気」など、普通に生きていているだけでもどこかでタイトルや場面を目にしてしまう名作を数多く作り出した監督さんなのだから、細部にわたって気を配った良作となっている。
ただし、迫力あるようなシーンはなく、「シャーロック・ホームズ」ものと期待してみると少し肩すかしを食うかも知れない。先に書いたとおり本昨はコメディ映画。特に序盤30分の第一部に関しては今でも笑える水準な代わりにホームズの推理のシーンは全く無い。第二部に入るとさすがにホームズも推理は冴え、どんどん謎を解いていくが、もっとも本質となる部分にたどり着くことは出来ず、クライマックスに別人の案内と説明によって謎にたどり着く内容となってしまっている。ゆえに「英国最高の頭脳」などと作中で賞されてはいてもあまりそういう印象は得られない。
ただ、ホームズとはそういうもの、とビリー・ワイルダーはとらえたのかも知れない。ホームズは残された証拠を抜群の観察力で発見し、そこから導き出される推理は得意でも、大局を見据えて常人の想像外の背景をあばくのは必ずしも得意ではないと考えたところで不思議ではないだろう。作中では、ヒーロー化する映像ホームズではタブーに近い、コカイン常習者であることも描いていて、監督は自分の解釈には従っても原作のホームズを描こうとしたことは分かる。ただ、別に熱心なファンでもないわたし(好きなホームズものは「踊る人形」)には物足りないわけだし、大半を占める観客もそうだろう。収録されているスタッフインタビューによると、公開当時の評判は必ずしも良くなかったようである。本作は本来4部構成として作られ、他にもあと2つのエピソードが入る予定だった。そちらではもっと推理で確信を突く内容もあったことだろう。が、そのままだと4時間にもおよぶ長い上映時間になってしまうため、半分はカットしてしまったとのこと。本来はそちらでバランスを取るつもりだったのだろう。

ホームズ作品にして巨匠の作品ゆえに、せっかく登場するネス湖の怪獣であるが、残念ながら作中での扱いはニセモノであり、出てくる必然性も低い。まぁ本物がいることにしてしまったらバカ映画なので仕方のないところだが、だったら出さなくてもいいじゃないかと思う。なので、wikipediaの"ネッシー"項目で「ネッシーを主題とする作品」でこの「シャーロック・ホームズの冒険」が紹介されているのは違和感がある・・・。が、残りの2本よりはマシ。誰だ、ネッシー作品に「ジュラシック・レイク」とか「怒りの湖底怪獣・ネッシーの大逆襲」とかあげておいたのは。どっちも暗黒面にはまり込んだマニアしか見ない映画じゃないか。前者はよくあるCG恐竜ものでレンタルDVD店とかでなんとなく借りる程度。後者は低予算映画をさらに低予算でリメイクした作品ばかり撮ったことで評価の低いラリー・ブキャナン監督にしては珍しくオリジナル作品の怪獣ものというだけで名が轟いている映画、もちろん低予算。もうちょっとメジャーなやつにしましょうよぅ・・・と、言っても「ウォーター・ホース」くらいしかないし、あれをネッシーものと言うと怒られるか。じゃぁ藤子・F・不二雄の愛が感じられる「ドラえもん」(正確には「ドラミちゃん」)の一編、「ネッシーが来る」とか、映画じゃないけどテレビアニメにはなってるし。

確かにネッシーに関して言えば核心に触れにくいということで、あまり映画の題材にはなりにくいのかも知れない。日英合作の予定があったけどポシャったし。やっぱり怪獣ものは、設定も内容もあまり現実に即さないのが一番いいのかも。

シャーロック・ホームズの冒険(特別編) [DVD]
ロバート・スティーブンス,コリン・ブレイクリー,アイリーン・ハンドル
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


追記:この映画で使われたネッシーの模型が、今もネス湖の湖底で眠っているそうです。

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4 コメント

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年齢層 (boil up hard)
2012-07-01 23:03:26
CSで宇宙大戦争を見ましたが 上映当時どんな年齢層の人々が見に行ったんでしょうね。
当時は大人がダークナイトライジングを見に行くような文化はなかったような気がするんですが
返信する
Unknown (krmmk3)
2012-07-02 00:53:57
>boil up hardさん
昔の少年誌に掲載されていた、少年少女向け空想科学小説を読んでいたような層、小学校高学年とかがメインターゲットだったんじゃないですかね。
返信する
Unknown (Unknown)
2012-07-06 19:03:51
DVDの話ではないのですが,招待にて当選したので特撮博物館に行って来ました.今帰ったばかりです.
巨神兵東京に現るは素晴らしかったです.ここでしか上映されない作品にも関わらず,なんとお金がかかったことをしたんでしょうと.当時に傚いブルーバック合成のみで全てを特撮で撮影したそうで(私の目で見るところ合成はもちろんPCで行なっていると思いますし一部エフェクト的なことはやっていると思われます)素晴らしい迫力の映像に仕上がっています.場内ではメイキングも流されていてこのままでは特撮技術が失われてしまう,現在のアイデアと技術で新しい特撮と映像を残したいと言っていました.

更に館内では主に50年代から70年代の特撮映画で使用された模型や,東宝倉庫を模した展示室に飾られた妖星ゴラスなどの模型などよく残ってたなあというものばかりでした.スーツ類もゴジラ メカゴジラ2 キングギドラなどもありました.東宝は物もちいいなと思いました.

円谷関係ではウルトラマンを中心にオリジナル撮影用の模型の修復模型やオリジナルそのものの展示もあり(一部レプリカもありましたが)大変充実した内容だと思いました.巨大特撮ヒーロのオリジナルマスクなども多数展示されていました.しかし色々な事情があったのでしょうがこちらは個人所蔵品が多かったですね.

他にも今回の撮影で使われたパペットを始め巨大セットも1フロアを使い展示されていました.中を通るように順路が付けられていますので怪獣もしくはヒーロー気分請け合いでした.凝ったことにミニカメラ3点でのその場の映像も見られました.所がモニターはセットの外にあるので自分がセット内を歩いている姿が見れずちょっと残念でしたw

というわけでこれだけの日本特撮展示物が揃うことはまず無いと思いますので東京に行かれる際はぜひとも立ち寄られて見ることをおすすめします.

一つ残念だった点は本物を多数見てしまった後ですと自分が所有している模型やフィギュアがみすぼらしく感じてしまうことでしょうか^^;
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Unknown (krmmk3)
2012-07-06 22:39:08
>2012-07-06 19:03:51さん
例の先行公開のやつですね。こういうときほど東京近辺に住んでいる人はうらやましいと思うことはありません。
特撮美術館、面白そうですね。ウルトラとか東宝とか、同じ会社のものごとなら結構展示品が充実した展示会もあるのですが、今回はその垣根を超え、「特撮そのもの」の展示会ですから・・・
来月は少々無理をして休みを取って東京へ行くスケジュールを組んであるので、絶対見に行くつもりです!
まぁ本物を見てしまうと、おっしゃるようにコレクションが安っぽく見えてしまうでしょうが、これは仕方ないですね。愛と脳内補正で補いましょう。
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