私的海潮音 英米詩訳選

数年ぶりにブログを再開いたします。主に英詩翻訳、ときどき雑感など。

砂州をこえて 二連目

2014-11-22 17:41:36 | 英詩・訳の途中経過
Crossing the bar

Alfred Tennyson

But such a tide as moving seems asleep,
Too full for sound and foam,
When that which drew from out the boundless deep
Turn again home.


砂州をこえて

      アルフレッド・テニスン


けれども潮はねむたげに
なりあわだつにはあまりにも みちたりすぎているといい
果てぬ淵からきたものが
もとへともどるそのときは

砂州をこえて 一連目

2014-11-15 13:18:21 | 英詩・訳の途中経過
Crossing the Bar

Alfred Tennyson

Sunset and evening star,
And one clear call for me!
And may there be no moaning of the bar,
When I put out to sea.


砂州をこえて

    アルフレッド・テニスン

日がおち夕の星がでて
冴えたひとつの声がよぶ
砂州にうめきのないことを
海へ漕ぎだすそのときは



 ※またも有名どころの短い海関係をひとつ。このごろどうも心が海づいております。あなあわれかもめどりよ。
  この詩はいっそ三十一文字×4連でいきたいところですが、さすがに少々難しいため、できるだけ七五×4を目指そうと思います。

ドーヴァーの浜 35~最終行

2014-11-07 23:12:45 | 英詩・訳の途中経過
Dover Beach

Matthe Arnold

And we are here as on a darkling plain
Swept with confused alarms of struggle and flight,
Where ignorant armies clash by night.


ドーヴァーの浜

     マシュー・アーノルド

そして吾らはただ此処で暗い野にあるやうに
あがきと飛翔の惑はしい怖れに薙がれるほかないのだから
夜のかげで ものをしらない軍勢がぶつかりあふところで



 ※全37行ようやく終了いたしました。…最後の三行の意味は正直よく分かりません。
  ついでに少々遊んでみました。すなわち自作の反歌などを。↓

  反歌

  ひとすじの月のひかりの道をみる
  漕ぎゆく果てに天はなけれど

  お粗末様でした。旧字体をどうするか考えてから全体を再編集しようと思います。

ドーヴァーの浜 29~34行目

2014-10-31 23:34:24 | 英詩・訳の途中経過
Dover Beach

Matthe Arnold

Ah, love, let us be true
To one another! for the world, which seems
To lie before us like a land of dreams,
So various, so beautiful, so new,
Hath really neitherjoy, nor love, nor light,
Nor certitude, nor peace, nor help for pain;


ドーヴァーの浜

        マシュー・アーノルド

愛よ 吾らをおたがひに
信じあわせてくれ 吾らのまへに
よこたわるこの世は さながら夢の地のやうに
くさぐさにうるわしく あたらしく思われるけれども
じつのところはよろこびも 愛もひかりも
たしかさも 憩ひも痛みからの救もないのだから

ドーヴァーの浜 21~28行目

2014-10-25 12:24:03 | 英詩・訳の途中経過
Dover Beach

Matthew Arnold

The Sea of Faith
Was once, too, at the full, and round earth's shore
Lay like the folds of a bright girdle furl'd.
But now I only hear
Its melancholy, long, withdrawing roar,
Retreating, to the breath
Of the night-wind, down the vast edges drear
And naked shingles of the world.


ドーヴァーの浜

       マシュー・アーノルド

信仰の海も
かつてはみちきり くりたたねた輝く帯のひだのやうに
地の岸をとりまいてゐたのに
いまやただきこえるのは
ものうく 長くさかりゆくうねりが
夜風の息吹からはなれて 此岸の漠たる丘のへりと
むきだしの礫の浜へと落ちる音ばかりで



 ※27行目「此岸」は「このきし」とお読みください。
  ついでに22行目「くりたたねた」はいちおう本歌取りです。↓

   君が行く 道の長手を 繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも〔万葉集3724』

  意味としてはふつうに「蛇腹に折りたたんだ」のつもりで使いましたが……私のなかに「天の火」の印象が残っているるためか、金色に輝く光のひだが環状の海のまわりをとりまいているイメージに借用したくなりました。
 第一連でも思いましたが、この作品はなによりも視覚的に美しい気がします。