持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

SHIROH

2005-12-05 23:28:28 | 演劇:2005年観劇感想編
ゲキ×シネ 劇団☆新感線公演 『SHIROH』
会場:梅田ブルク7
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:上川隆也,中川晃教,高橋由美子,杏子,橋本じゅん,高田聖子,池田成志 他


大阪本公演は、2005年1月。劇団☆新感線、初の本格的ロックミュージカル作品。ゲキ×シネは、録画映像を編集し、映画館で上映するものとして。このところの、劇団☆新感線の新しい流れとなっている。ゲキ×シネについては→こちらに思うところをつらつらと。
大スクリーン向けの気合の入った編集、クリアな大音量の音楽。本公演の興奮がよみがえるのはもちろんのこと、客席からでは見えなかった距離と角度からの映像は。震える腕や、わななく唇の演技までを再現し。みごとに、新しい世界に引き込んでくれる。

あらすじも中味も、語りつくされているだろうから。このたび新しく感じたことだけを。
俯瞰の視点で眺めて思ったのは、民の強い気持ち。この物語は、ふたりのSHIROHのカリスマ性に惹かれたものではあるけれど。死と隣り合わせの、ぎりぎりかつかつの生活を強いられ。ひとたび、救いを信じ、すがった民にしてみれば。忠誠の意志は、至上だったことだろう。四郎は奇跡の力を持たずして民を導びくことに、重圧と迷いを感じ続けていたけれど。率いてくれる先導者を持ち得た民は、最上に幸せだったのだと。今更にして思う。

煽動者であるシローは、物語の中で。無邪気に笑う少年から、きっちり大人になる。神の声をもち、彼らを鼓舞するあの声は。劇場の空気の中ならではなのかも、と懸念していたけれど。中川氏の歌声は、映像で観ても本物で。彼が本気で歌い出した瞬間は、鳥肌もので。「こぶしを振り上げろ、足を踏み鳴らせ」。その言葉に、従いたくなる。
そして、最期の聖戦のとき。民は、自らの意思で死に立ち向かう。逃れるためでなく、「はらいそ」へ行くために。踏み出す足取りは強くて、誰にも止められない。

皆が倒れ伏したなかで、四郎がおこす奇跡。四郎のくちづけによって、現世に呼び戻された寿庵は。3万7千人と、2人のSHIROHの命を携えて生きていく宿命を負う。たったひとりで、生き続ける彼女。恋した人から与えられた生を、まっとうする彼女は。凄まじく、清廉で潔い。そして。歌うさなかにも、決して芝居が停止しない高橋氏は凄い。
間違って観ていたのは、リオ。女神のように下界をみつめているのかと思っていたら、あんなに泣いていたなんて。なんとかしたくてたまらない無力な娘の、てんしだったんだね。

そして、上川氏。上演中は、彼が歌うたびに「わーっ」とか「きゃーっ」とか。心中、大騒ぎだったんだけど(←失礼:笑)。あぁ、なんて格好良い(溜息)。。彼の、流麗な殺陣は。スーパースローになっても、ぶれることなく。ぴったり決まった「あとの(←ここが、映像の役者さんとの相違点!)」動きが美しいのなんの(再び、溜息)。。

残念だったのは。聖子ちゃん、じゅんくん、なるしーたちのアドリブ部分。東京のより、ぜったい大阪バージョンの方が面白いって! DVDにアドリブ集入れてくんないかなぁ。。

冷静に分析すれば。ミュージカルとしても演目としても、まだまだ削ぎ落として叩き上げる余地はある(←4時間超だし)。だけど。長ぁく、新感線を観てきて。劇団もファンも、良い加減に大人になったと思ってたところにきた、この作品は。ごつごつとしてて、熱くって。それこそ他の舞台への観劇熱まで、再燃させるイキオイがあって。。
願わくば、再演にもこれだけの熱を持ち続けて欲しい。上川さんは、再演嫌いだそうだから、もうでてくれないのかなぁ? だとすれば、ずいぶん変わるよなぁ。