持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

竜馬の妻とその夫と愛人 2/2

2005-12-01 00:47:42 | 演劇:2005年観劇感想編
11/30のつづき>
平田満氏演じる松兵衛は。どこまで、というほど人が良い。我が分を知り、過大評価も過小評価もしない生き方は。もどかしいを通り越し、いっそ振り切れていて清々しい。おりょうが竜馬を追い続けることを、否定することなく。さりとて、彼に近づく努力をすることもなく。ただただ、おりょうに対する誰よりも深い想いを。貫きとおせる強さを、ここにみる。

おりょうが、浮気相手の虎蔵のもとから戻らなくとも。虎蔵をつれて長屋に戻ろうとも。そのまま、一緒に出て行くと言い出そうとも。どこまでも弱腰で。見かねた、佐藤B作氏演じる覚兵衛に。さんざん焚きつけられて、ようよう抗戦姿勢となる。かと思えば、無邪気にしびれ薬(←犬用)を取りだしてみせたり。これらを愚鈍だと切り捨てるには、愛嬌がありすぎて。。決闘の準備とばかりに、剣の稽古を始めるふたり。やたらめったら木刀を振り回すだけの平田さんへの、B作さんのツッコミ。「・・・お前、基本的にこの芝居を馬鹿にしてるだろ」に、失笑。そうなんだよ。情けない人物のはずなのに、いつもどうにも余裕があるんだよなぁ。

ここより、感動のしどころと思われ。隠します→独りで行くことを決めたおりょうを。止めにかかる、覚兵衛を。松兵衛は、全力で阻(はば)む。彼女「だけ」に対する、決して揺らがぬ、純粋で深い愛。自分のもとを去りゆかんとする女への、万感の思いをこめた叫びが胸に迫る。。わたしが、亡くなった竜馬に、唯一勝てることがある。そばにいることができる。天賦の才や、生きざまが竜馬に遠く及ばなくとも。おりょうを暖め、寂しさをまぎらわせることができる(←そう? ←失言)。なぜなら、「わたしは、生きている」から。「だから、待っているよ」と続く言葉は、どこまでも優しい。・・・それでも。おりょうが、彼のもとに戻る日は来ないのだろう。それでも、きっと。松兵衛は、一生待ち続けることだろう。ならば。おりょうは、松兵衛とともに居なくとも。ほんの少しだけ、幸せであるのだろう。

平田満氏は。誰とでも綺麗な調和を生み出す、それはそれはすてきな役者さん。記憶の中から外せないのが、『サイレント・ヒート(1997年)』。当時は、故三浦洋一氏との競演が話題になった演目だけど。彼とのやりとりは、タイトルに違うことなく。静かな内に、火花が散るかのような激しさを秘めていて。。あぁいう、彼のお芝居を。ぜひ、また観たいと願ってる。

当演目は、まだまだ全国公演中。ちなみに、次回公演は三谷幸喜氏の新作とのこと。

<追記> 竜馬ファンの友よりの情報。史実の松兵衛氏が、彼女の碑に刻んだ言葉は。
      「坂本竜馬之妻龍子之墓」 今更に台詞がよみがえり・・・、うるるん(←おそっ)。