手話通訳者のブログ

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壊れていく手話通訳者たち

2016-02-17 06:19:49 | 手話
Yさんは、とても優しく、真面目な人である。
地元には手本とすべき手話通訳者が何人かいるが、Yさんもその中の一人。

しかし、もう通訳現場に出なくなって十数年になる。

「手話通訳者は今でも足りないのに・・・早く戻らなきゃ、って思うんです。でも・・・」

Yさんに偶然会っても、手話の「し」の字も出さない。
Yさんは心に深い傷を負っているからだ。
しかし、元々、Yさんと出会ったのは手話通訳の現場。
つまり、お互いを「手話通訳者」として認識しているわけ。

頸肩腕障害。
これを発症するのは手話通訳者だけではないが、手話通訳者の世界では、通訳者の体調がおかしくなったら、まず、これを疑うようになった。
しかし、これは最近数年のこと。
Yさんの発症は10年以上前のことだ。

正直言って、Yさんに会うのは辛い。
街で偶然出会ってしまうと・・・ごく普通に挨拶して、そのまま別れようとするが・・・
Yさんの表情が見る見るこわばっていく。
申し訳ない、という表情になり、冷や汗をかく。
誰も責めていないのに・・・
どうやら、ろう者に会っても同じようになってしまうようだ。

やさしく真面目な人の場合、傷ついた心を癒すのには時間がかかるようだ。