手話通訳者のブログ

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ろう者は非常識?

2016-02-09 00:53:41 | 手話
今日、紹介させてもらう話は、長年手話通訳活動をしている方なら、似たような経験をお持ちだろうと思う。

ある日の深夜2時、ぐっすり眠っている時にいきなり、
「ピンポーン!」
な、何事だ!
玄関に出て行くと、ろう者のSさんが立っている。

何? どうした?

Sさんは手に持っていたビニール袋を差し出した。
「夜釣りしてきた。たくさん釣れたから、あげる」

・・・・

気持ちは嬉しいが、連絡もしないで深夜に突然訪ねてくるなんて・・・・・


この話、手話世界に関わっている人でも、若い人たちはピンとこないかもしれない。
今は、若いろう者たちはスマホでLINEをやっていて、頻繁に他人とコミュニケーションをとっている。
しかし、年配のろう者の中には、ほとんど人付き合いをしていない人もいる。
人と会話すること自体が非常に少ないため、聴者たちが常識として理解していることを、全く理解していないこともある。

上記のSさんとしては、
たくさん釣れた、嬉しい ⇒ 友達のたいしに魚を分けてあげよう
と考えたに過ぎない。この発想自体は、ごく普通のものだ。
ここで、ある程度の人付き合いがある人なら、ごく自然に、
「でも深夜だから、魚は冷凍しておいて、明日の朝、届けてあげよう」
と考える。しかし、極端に人付き合いの少ない人は、ここまで思い至らない。


こういった類の話は、古株通訳者同士、
「昔はこんな感じやったね」
という思い出話の中にしかなくなってきた。でも、「ろう者と聴者の感覚のズレ」みたいなものは、今後も常にあるだろうな。