窓辺の小太郎

野付半島の渡り鳥や動植物の生き生きした「瞬間の美」を目指します。

朝、ねぐらから牧草地へ・オオハクチョウ

2019-11-24 22:07:00 | オオハクチョウのいる風景

根室原野を中継地として滞在するオオハクチョウ。風蓮湖や野付湾、厚岸湖に集まり

そこから内陸に毎日通います。内陸の小さな沼もねぐらにします。

おばんです。小太郎でごじゃります。

 

         ★  朝、ねぐらから牧草地へ・オオハクチョウ  ★

風蓮湖や野付湾で夜を過ごすオオハクチョウは日の出前に川の河口に広がるヨシ帯から

出てきます。静けさが急に騒々しくなります。オオハクチョウのトランペットの音色に

似た大きな声を鳴き合わせます。これが遠くまで良く聞こえます。

水平線から太陽が顔を出し、空の色が明るくなると、お腹を空かしたオオハクチョウたち

は滑走を始め、水面を走り出します。水かきのついた大きな足を広げ、翼を大きく広げ

強く打ち付け上昇します。

群れを作り、河口から川伝いに内陸の牧草地の方へ次々に飛んでいきます。

いつも飛んでくる群れを見送るばかりで、どこに行くのか、どんなふうに飛んでいくのか

気になってばかり。

飛んでいくコースを見定めて、河口から3キロほど上流の高台で確かめることにしました。

みんなが同じコースをたどることはないので心配しました。

心配は杞憂でした。やってきました。谷沿いの森の上に沿って10羽前後の群れが次々に

やってきます。上流にデントコーン畑があります。

白い体は目立つように見えませんが、気にしてみないと森の中に溶け込むように静かに

通過して行きます。遠くなので声は聞こえませんが、ほとんどの人は気づかないようです。

谷間をコースに取るのは谷から上昇してくる気流をうまく利用しているように見えます。

彼らにしてみれば上流10キロ、20キロは苦にはならない距離のようです。


カモメ・退避

2019-11-23 21:58:14 | カモメ類

冬カモメの季節になりました。夏季にウミネコが北上してきて根室海峡で過ごしていましたが、

11月に入って北から渡ってきたカモメと入れ替わりました。

おばんです。小太郎ででごじゃります。

               ★  カモメ・退避  ★

北極海で繁殖するシロカモメやワシカモメ、カムチャッカ半島や千島列島で繁殖している

オオセグロカモメやセグロカモメなど大型のカモメが増えてきました。

根室海峡に入ってくる魚を食料にして越冬します。天候が穏やかな時はほとんど沖合で

過ごし、陸地にはあまりやってきません。

爆弾低気圧や強力低気圧が通過して行く時に吹く強風が来ると、さすがの強靭なカモメも

陸地にやってきます。

いつも女房に言うのは悪天候に大チャンスあり。日ごろ巡り合えない生き物に出会える

かもしれないワクワク感があります。野付半島は根室海峡に突き出ているので、風をよけ

に来るカモメが集まってきます。

集まる場所はその日、その時で違います。ただ、半島は細長いので道沿いに走っていれば

カモメが集まっているところに行けばいいのです。

強風吹きすさぶ北極の海に慣れたカモメでさえ飛び辛い時はあるのです。防波堤の陰や風が

当たらない海岸に降り、前傾して風を避けています。

こういう時こそ近くまで寄って行けるのです。ただし自分も風に煽られ、立っているのが

大変な時があります。

オオセグロカモメやセグロカモメ、シロカモメが多く、その中にまだ南下しないウミネコ

が混じり、これから増えるワシカモメが混じります。

多く集まっていると、ついいつでも見ることができると思ってしまいます。でも違うんですよ。

集まっていることが異常なのです。強風あってのことで、普段は見ることができないんです。

これが分かるまでに10年かかりました。


オオハクチョウ・塩類腺

2019-11-22 00:26:43 | オオハクチョウのいる風景

10月、11月はオオハクチョウの生態を観察するには最高の時季です。根室地方では

本州に越冬のために渡って行く間、約2か月半滞在して行きます。

おばんです。小太郎でごじゃります。

         ★  オオハクチョウ・塩類腺  ★

野付湾に集まってくるオオハクチョウは警戒心が強く、接近しにくく、いつも遠目に

いることが多いのです。それでもチャンスを願い通っていると近くまで寄ってくる

個体がいるものです。

上げ潮になり、それまで離れたところでアマモを食べていたオオハクチョウが2羽、

食べていた場所が深くなり、私が待ち受けていた岸辺に寄ってきました。ヒナを連れて

いない番いです。

水位が急速に上がってくるので、頭を水の中に入れ、くちばしが底に届くところを

求めてきています。とうとう10メートルの近くでアマモを採りだしました。

頭を水に突っ込み、逆立ちをするみたいに体を立てます。尾羽が垂直に鮒釣りの浮き

みたいに立っています。2羽が同時にアマモを採りだすと、ツインの島みたいです。

水の中で採ったアマモを食べ、頭を上げ来て、くちばしをバシャバシャして水を外に

濾しだしているように見えます。

その時に気づいたのは、両目の上がふっくら膨れているように見えるのです。眼窩の

上です。写真を見た宮城県伊豆沼・内沼環境財団の主任研究員、嶋田先生から問い合

わせがありました。

淡水で生活しているオオハクチョウに比べ、海でアマモを食べているオオハクチョウの

頭部はふっくら膨れている傾向にあるというものです。

そこは塩類腺があるところです。塩類腺は過剰な塩分を涙として排出する機能があります。

海鳥は海水を飲んで水分を補給し、目の近くにある塩類腺から過剰な塩分を涙として排出

していると言われています。

海水に生息するアマモを食べるオオハクチョウの塩類腺も同じような機能が働いている

可能性があるかもしれません。

淡水域と海水域で食べ物を調達するオオハクチョウの環境適応。

近くに来たオオハクチョウの眼の上の膨らみを見て考えてみました。


亜種ヒシクイが長旅で到着

2019-11-21 11:07:01 | コクガン・ヒシクイ・ガン類

ヒシクイが野付半島の基部、茶志骨川や当幌川の河口に広がる三角州のヨシ帯をねぐらに

することに気づいてからヒシクイを気にかけ、観察しています。

おばんです。小太郎でごじゃります。

            ★  亜種ヒシクイが長旅で到着  ★

日本に来るヒシクイは2種に分類されています。亜種オオヒシクイと亜種ヒシクイですです。

根室地方に渡ってくるのは亜種ヒシクイ。主にカムチャッカ半島から渡ってきます。

1980年代まではヒシクイたちがどこから、どんなコースで渡ってくるかはほとんど

分かっていませんでした。1990年代にロシアと日本の合同チームが標識を装着した結果、

カムチャッカ半島の南西部で繁殖する亜種ヒシクイの個体群が越冬のために日本に渡って

いることを突き止めました。

この地域を離れた亜種ヒシクイは、9月の早い時期に北海道に姿を見せます。今年も

9月10日ごろに第一陣が姿を見せました。渡りのコースは千島列島伝いに南下してくる

可能性がありますが、オホーツク海を直接渡ってくることも考えられます。

それで野付半島に群れが海からやってくることを確かめたくて、9月から10月にかけ

半島をうろちょろしました。初めに見つけたのが9月16日でした。

毎週、早朝にヨシ帯から飛び立って行くヒシクイの数を大まかに観察しました。数は

多くなり、2000羽以上が内陸の牧草地へ餌を食べに出かけています。

以前から野付半島の途中の湿地にヒシクイの群れが降りているの見たことがあったので

そのあたりを気にして見ていたのです。そして10月20日、13時20分、国後方面

からゲルルル、ゲルルルというヒシクイ特有の声が上空からしてきました。

20羽から50羽ほどの群れが降るように降下してきます。先に降りていた30羽ほどの

群れに引き寄せられるようにぐるぐる回り、海面に降りて来ます。

普段飛び立って行く時のスピードと違い、ゆったり滑空して着水してきます。ヒシクイは

広い海面に降りているのを見ないので、興奮して見ていました。

後で写真で数を数えると283羽ほどの群れでした。


夕ぼらけのコクガン

2019-11-19 22:37:42 | コクガン・ヒシクイ・ガン類

コクガンの調査を初めて15年になります。毎年10月5日前後に姿を見せるコクガン。

北極海に面したツンドラ地帯で繁殖するコクガンは根室地方を通過して行く雁の仲間では

一番遅く野付湾に渡ってきます。

おばんです。小太郎でごじゃります。

            ★  夕ぼらけのコクガン  ★    

野付湾だけの観察ではコクガンは11月の初めまで個体数が増えてきます。後発で渡って

くる個体が合流してきてるのでしょう。

湾内全体に広く生息するせいで陸から正確にカウントするのは難しいのですが、観察ポイ

ントを6か所ほどにしてほぼ湾内全域をカバーできる範囲で調べると私のカウントだと

1万羽近くが湾内で生息しています。

全域に生息するのは、ここ10年爆弾低気圧が異常に通過して行ったせいで、湾内に砂が

大量に運び込まれ浅瀬が増えてきたことがあげられそうです。浅くなってアマモの生息範

囲が増加、コクガンがアマモを採り易くなったなったことが大きいようです。

コクガンは太陽が水平線から上がってくる朝ぼらけの時間帯に根室海峡から編隊を組んで

やってきます。面白いことに半島を横切ることなく先端の入り口を通って湾内に入って行

きます。日中は出ていくことはほぼなく、湾内でアマモを採って食べて過ごします。

11月になってからは日没前1時間ころに半島の先端の砂嘴湾に一部が集まってきます。

300羽ほどのことが多いのですが、そこで休んでいます。

10月は夕方、待っていても群れがやってこず、日が沈んでも湾内から出ていかない日が

ありましたが、11月になると集まってきます。集まりだすと必ず、湾内で過ごした

コクガンが出ていくと確信しています。10年以上調べた結論です。

日により最初の群れがやってくる時間に変化があります。何故なのか、これからの課題

ですが早い時と遅い時があります。

平均すると日が水平線に沈む前の10分前後。湾内の奥の方から黒い一群が先端めがけ

やってきます。遠いので翼の音は聞こえませんが、空耳でサッサッと空気を切る音が聞

こえて来そうです。

最初の群れが外洋に消えると私的に緊張します。遠くのどこかで群れが飛び上がり、黒い

塊がやってくるのです。双眼鏡で飛び上がってきそうな方位で探していきます。早く見つ

ければカメラで群れ全体を複数枚撮っておけます。あとで正確に近い数が押さえられます。

大群が次々に現れるのは時間の問題。東の空が暗くなった頃、ほんとどっとやってきます。

300羽、400羽とまとまった群れが西に向かい、湾内から根室の方向へ飛んできます。

茜色になった空を背景に、黒いコクガンの群れの姿が浮き上がります。

いつもこの瞬間が見たくて先端に一人たたずむのです。自分一人の素敵なひとときなんです。