ダンボー。なんと愛らしい名前だろう。
初めて見たとき、その可愛らしさにヤラれてしまってすぐに購入した。もう2年くらい前の話である。
購入した後に知ったことだが、「ダンボー」は、ある漫画の中に出てきたダンボール製のロボットらしい。ただ単に、ダンボール同士をくみ上げ、顔の部分をくりぬいただけで、命が吹き込まれたように可愛らしく感じるのはこれはもう芸術(という何か)を超越している。ただの無機質な素材が発想によって素晴らしいものに化ける、ということが何より魅力的だ。
興味深いことに、そのような思想を持って作られたクルマはすでにある。しかも30年以上前の話だ。
1979年にそのクルマは生まれる。
フォルクスワーゲン・ゴルフ カブリオレだ。
その発想はいたってシンプル。登場したばかりの質素なハッチバックカーであるゴルフの屋根を取って、かわりに幌を追加しただけ。(本当はオープンカー化には緻密な設計が施されたんだけどね)それによって大衆的なイメージしかないゴルフをアトラクションのようなファンカーに一変させたのだ。ゴルフカブリオレはその後何度か形を変えて生産され2002年まで生産された。5代目ゴルフにはカブリオレの設定はなかったので、6代目ゴルフのカブリオレが作られるかどうかは、微妙だった。
しかし、6代目ゴルフに9年ぶりのカブリオレが帰ってくる。僕の予想に反して新型のゴルフカブリオレが発表された。今までのように、転倒した際に乗員を守るためのバーがなくなっているのがわかる。これによって、より開放的なオープンクルージングを楽しめるわけだ。スタイリングもよりスリッパに似てしまったことは、今は言わないでおこう。付け加えておくと、安全性を犠牲にしたわけではなく、フロントスクリーンがこれでもかというほど強化されているらしい。これがあれば、横転してもマリー・アントワネットのような最期を迎えなくて済む。おまけにいろいろなところにエアバックを装備しているのだから普通の自動車となんら変わりはなく安心して走ることができる。
もちろん21世紀のオープンカーらしく幌は電動式。9秒で開閉が可能なすぐれもの。それはもはや当たり前か?
そしてゴルフらしいというか素晴らしいのは大人が4人しっかり乗ることができるということだ。大抵のオープンカーは前席は良いとしても、後席には雑技団に所属している人間ではないと乗車が困難な場合が多い。それでいて「定員4人」と書類には書いてあるのだから馬鹿馬鹿しくて笑ってしまう。そこらへんのナルシストなオープンカーとは違うのがゴルフらしい。あくまでも実用的なコンパクトカーが根底にあるのが実感できる。日本への輸出は決まっていないが、待ってみる価値はあるだろう。
だが、僕はこの新型ゴルフ カブリオレの登場を素直に喜ぶことができない。なぜだろうかと考えたところある答えが出てきた。それはゴルフが脱ベーシックをしてしまったこと。先にも述べた通り、質素なものが発想ややり方によって楽しいものに変わる可能性がある、そこに面白みを感じていたのだ。いわゆるギャップ。そこに大きな魅力があった。新型のゴルフはどうだろう。質素、ベーシックなんて言葉とは無縁のプレミアムハッチバックだ。塗装、パーツの継ぎ目を見ても、どこを切り取ってもA級の品質。おまけに、リアデザインはカブリオレ専用設計という力の入れよう。ゴルフはオープンカーにするには完成され過ぎてしまった車だ。別にオープンにしなくても・・・。しかし、ゴルフ カブリオレは嫌いじゃない。なんとも複雑な気持ちだ。
今、日本に正規輸入されているフォルクスワーゲンの中でもっともシンプルなのはポロ。そのポロも決して質素とはいえない。本当ならフォルクスワーゲン FOXの正規輸入してくれるとありがたいが、さすがに無理だろう。
だから僕は今、ポロのカブリオレを心から望んでいる。
にほんブログ村
日本ブログ村ランキング参加中です。気に入りましたら1クリックお願いいたします