< *印 新仮名遣い>
三谷和夫:右手に鎌弓手に稲をつかみたる老爺を祀る稲荷神社は(新アララギ2018.11)
佐々木フミ子:「ごめんなさい」と死刑囚の遺骨抱きぬといふその母の胸に去来せしは何(新アララギ2018.11)
木村和子:その兄の突然の死にわが夫は飯を忘れてただ酔ひしれる(新アララギ2018.11)
千葉照子:柔らかき吾が子の尻を抱く夢四十四(しじゅうし)にして叶へつつあり(歌会2018.11)
今野英山:沖縄の友にもらひし糸瓜(ナーベラー)の花ふたつ開く暑き日けふは(新アララギ2018.11)
高橋毬枝:虚しさを放たむとして昼さなか角煮大根をトロトロと煮る(新アララギ2018.11)
山崎日出男:先人が汗して開きし新田にソーラーパネルの鈍く光りぬ(歌会2018.11)
麦島和子:*みずみずしく辛さ程良き葉生姜は亡き義父母と故郷の味(新アララギ2018.11)
岸野トモヱ:*月蒼く火星は赤く輝きて中秋の天しみじみと見る(歌会2018.11)
大倉康幸:*学校と職場の違いがわかっていない若者増えた社員教育(新アララギ2018.11)
相川盈子:*昔話の絵本抜け出ししごとき西の空金星めざして家路をいそぐ(新アララギ2018.11)
宮本通代:災害の少なきこの地恵み多くゆつたりのんびりの県民性育む(新アララギ2018.11)
葛岡昭男:*看護師に運ばれて来し母の荷に最後看取りしぬいぐるみあり(新アララギ2018.11)
丸山さち子:*如己堂に二人の子らを残し逝く父の思いよ原爆忌来る(新アララギ2018.11)
立川多喜子:芋の蔓南瓜の蔓も勢ひて食糧難の戦時思はす(新アララギ2018.11)
戸田邦行:*「イエス様に祈れば何とかなるから」と祖父と異なる母の信仰(新アララギ2018.11)
鈴木英一:古希過ぎて一泊二日のクラス会呼び捨ての名で昔に戻る(歌会2018.11)