恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

七夕〜その2《子供時代の思い出》

2016-07-08 06:52:14 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

今年は七夕のお話書けるかな…と思い、書き始めたものの。

何しろ取り掛かりが遅かった。

思いついたのが7月入ってから。

「七夕までに書ければいいや」と暢気に構えていたら、パソコンの機嫌が悪くなるわ、雑事が入るわ。

言い訳がましいけど、なんとか七夕当日に間に合ったので、許してね。


さて、七夕のお話で以前書いたのは『七夕』in〈吉祥寺恋色デイズ〉


恋人同士の譲二さんとヒロインのお話でした。

今回は恋人になる前の二人の話。

だから、ラブラブのシーンというのは特にないのですが、子供時代も挿入して作ってみました。

その1より続き

☆☆☆☆☆

七夕〜その2《子供時代の思い出》

〈譲二〉
カランカラン~♪

チャイムの音をさせて黒船の店内に入ると、涼しげな笹が飾られている。


マスター「いらっしゃい、譲二くん」

譲二「こんちは…。これ、どうしたんですか?」

マスター「明日は七夕だからね。たまには季節の行事をやってみたくなってね」


色とりどりの短冊がすでに何枚か飾ってある。

その一枚を手にとって眺めた。

知らない人の名前が書いてある。


譲二「この短冊は?」

マスター「お客さんに書いてもらったんだよ。よかったら、譲二くんも書いてくれるかい?」

譲二「え? 俺が?」

マスター「このままだとちょっと寂しいからね」


マスターは眼鏡の奥の優しい瞳を瞬かせて微笑んだ。

短冊に願いごとを書くなんて何年ぶりだろう。

小学校の頃以来かな。



悩んだ挙句、『成績があがりますように』という無難な願いをひねり出して、短冊を笹に吊るした。


いつものようにコーヒーとサンドイッチでひとしきりお喋りしたあと、俺は黒船を後にした。



マスターは「七夕はまだ明日だから」と言って短冊を何枚か持たせてくれた。

他にも願いごとが書けたら、明日笹に吊りに来たらいいということらしい。




その短冊とサンドイッチのおみやげを持って、またあの児童公園に足を向けた。

あいつはいるだろうか?

足を止めて公園を見回すと後ろから軽い足音が聞こえてきた。


百花「じーじ! お腹すいたー!」


(あいかわらず、こいつは元気だな)


小さな百花ちゃんがお約束のように俺の背中をパンと叩いた。


譲二「ほら、いつものヤツ」


マスターに作ってもらったサンドイッチを百花ちゃんに渡す。


百花「ありがとう! 」

百花「わぁー。ハムとトマトが入ってる」

譲二「今日はちょっと豪華版だからな」


百花ちゃんはサンドイッチをぱくつきながら、俺の左手に目を止めた。


百花「ほれは?」

譲二「これか?」


俺は黒船のマスターにもらった短冊を百花ちゃんに見せた。


譲二「七夕の笹に飾るやつ」

百花「七夕……百花知ってる! それに書くとお願いごとが叶うんだよね!」


俺はちょっと苦笑いした。

確かに願いごとを書いて笹に吊るすわけだけど、必ず叶うとは限らない。

明里と一緒に吊るした短冊に書いたことを思い出して、少し胸が痛んだ。

 

その3へつづく



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