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判例;公文書の写真コピーの作成が公文書偽造罪にあたるとされた事例

2010年12月22日 | インポート

事件番号     昭和50(あ)1924
事件名      業務上横領、詐欺、有印公文書偽造、同行使
裁判年月日    昭和51年04月30日
法廷名      最高裁判所第二小法廷
裁判種別     判決
結果       破棄自判
判例集巻・号・頁 第30巻3号453頁

判示事項
  公文書の写真コピーの作成が公文書偽造罪にあたるとされた事例
裁判要旨
  行使の目的を以って、虚偽の供託事実を記入した供託書用紙の下方に真正な供託金受領証から切り取った供託官の記名印及び公印押捺部分を接続させ、これを電子複写機で複写する方法により、あたかも、公務員である供託官が職務上作成した真正な供託金受領証を原本として、これを原形どおり正確に複写したかのような形式、外観を有する写真コピーを作成した所為は、刑法一五五条一項の公文書偽造罪にあたる。

参照法条     刑法155条1項

     主  文
   原判決及び第一審判決を破棄する。
   被告人を懲役三年八月に処する。
   第一審における未決勾留日数中一五〇日を右の刑に算入する。
   押収の供託書写三通(最高裁昭和五一年押第一号の七、同号の一〇のうち旭川検察庁昭和四九年領第九二号符一号の一及び同押第一号の一一)及び供託書一通(同押第一号の一七)はこれを没収する。
         
     理  由
 検察官の上告趣意のうち、判例違反の主張について
 本件公訴事実のうち、所論指摘の有印公文書偽造、同行使の事実の要旨は、被告人は供託金の供託を証明する文書として行使する目的をもつて、昭和四八年七月二六日ころから同年一二月二八日ころまでの間、五回にわたり、被告人方行政書士事務所等において、旭川地方法務局供託官A作成名義の真正な供託金受領証から切り取つた供託官の記名印及び公印押捺部分を、虚偽の供託事実を記入した供託書用紙の下方に接続させてこれを電子複写機で複写する方法により、右供託官の作成名義を冒用し、あたかも真正な供託金受領証の写であるかのような外観を呈する写真コピー五通を作成偽造したうえ、そのころ、四回にわたり、北海道上川支庁建設指導課建築係ほか三か所において、同係員ほかBに対し、右供託金受領証の写真コピー五通をそれぞれ真正に成立したもののように装つて提出または交付行使した、というものである。
 原判決は、公訴事実に相応する事実は証拠上これを認めることができるが、被告人の作成した供託金受領証の写真コピーは、一見して複写機で複写した写であることが明らかであるから、原本そのものの作成名義人の意識内容を直接表示するものではありえず、また、供託金受領証は、その写を作成すること自体が禁止、制限されているわけではないうえ、写の作成権限を有する者を公務所または公務員に限定すべき根拠もないから、結局、本件写真コピーは、被告人がほしいままに作成した内容虚偽の私文書と解しえても、刑法所定の公文書には該当しないとの判断を示し、これと同旨の理由で被告人の本件行為は刑法一五五条一項、一五八条一項の罪を構成しないとした第一審判決を正当として是認している。
 所論は、原判決は、本件写真コピーの公文書性を否定した点において、名古屋高等裁判所昭和四八年(う)第二二九号同年一一月二七日判決(高刑集二六巻五号五六八頁)と相反する判断をしているというのである。
 所論引用の右判例は、エツクス線技師の資格を偽るために行使する目的をもつて、大阪府知事C作成名義の他人の真正な診療エツクス線技師免許証の写(写真版)に、ほしいままに自己の本籍地、氏名等を改ざん記載し、これを写真撮影したうえ、正規の免許証とほぼ同じ大きさに引き伸して免許証の写真を作成し、これを就職申込の際に資格証明の資料として提出した事案について、右免許証の写自体は写真であるが、「単なる写本の類ではなく、作成名義人の確定的な意識内容を記載した刑法にいわゆる文書に該る」と解すべきであるとし、刑法一五五条三項、一五八条一項の罪を認めたものである。所論引用の判例と本件とは、偽造、行使の客体とされている文書が、いずれも、公文書の原本ではなく、これを機械的方法により複写した文書であるとの点において事案を同じくするものであるから、かかる公文書の複写文書の公文書性を否定した原判決は、これを肯定した所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。

 おもうに、公文書偽造罪は、公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段としてもつ社会的機能を保護し、社会生活の安定を図ろうとするものであるから、公文書偽造罪の客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であつても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれるものと解するのが相当である。すなわち、手書きの写のように、それ自体としては原本作成者の意識内容を直接に表示するものではなく、原本を正写した旨の写作成者の意識内容を保有するに過ぎず、原本と写との間に写作成者の意識が介在混入するおそれがあると認められるような写文書は、それ自体信用性に欠けるところがあつて、権限ある写作成者の認証があると認められない限り、原本である公文書と同様の証明文書としての社会的機能を有せず、公文書偽造罪の客体たる文書とはいいえないものであるが、 写真機、複写機等を使用し、機械的方法により原本を複写した文書(以下「写真コピー」という。)は、写ではあるが、複写した者の意識が介在する余地のない、機械的に正確な複写版であつて、紙質等の点を除けば、その内容のみならず筆跡、形状にいたるまで、原本と全く同じく正確に再現されているという外観をもち、また、一般にそのようなものとして信頼されうるような性質のもの、換言すれば、これを見る者をして、同一内容の原本の存在を信用させるだけではなく、印章、署名を含む原本の内容についてまで、原本そのものに接した場合と同様に認識させる特質をもち、その作成者の意識内容でなく、原本作成者の意識内容が直接伝達保有されている文書とみうるようなものであるから、このような写真コピーは、そこに複写されている原本が右コピーどおりの内容、形状において存在していることにつき極めて強力な証明力をもちうるのであり、それゆえに、公文書の写真コピーが実生活上原本に代わるべき証明文書として一般に通用し、原本と同程度の社会的機能と信用性を有するものとされている場合が多いのである。右のような公文書の写真コピーの性質とその社会的機能に照らすときは、右コピーは、文書本来の性質上写真コピーが原本と同様の機能と信用性を有しえない場合を除き、公文書偽造罪の客体たりうるものであつて、この場合においては、原本と同一の意識内容を保有する原本作成名義人作成名義の公文書と解すべきであり、また、右作成名義人の印章、署名の有無についても、写真コピーの上に印章、署名が複写されている以上、これを写真コピーの保有する意識内容の場合と別異に解する理由はないから、原本作成名義人の印章、署名のある文書として公文書偽造罪の客体たりうるものと認めるのが相当である。そして、原本の複写自体は一般に禁止されているところではないから、真正な公文書原本そのものをなんら格別の作為を加えることなく写真コピーの方法によつて複写することは原本の作成名義を冒用したことにはならず、したがつて公文書偽造罪を構成するものでないことは当然であるとしても原本の作成名義を不正に使用し、原本と異なる意識内容を作出して写真コピーを作成するがごときことは、もとより原本作成名義人の許容するところではなく、また、そもそも公文書の原本のない場合に、公務所または公務員作成名義を一定の意識内容とともに写真コピーの上に現出させ、あたかもその作成名義人が作成した公文書の原本の写真コピーであるかのような文書を作成することについては、右写真コピーに作成名義人と表示された者の許諾のあり得ないことは当然であつて、行使の目的をもつてするこのような写真コピーの作成は、その意味において、公務所または公務員の作成名義を冒用して、本来公務所または公務員の作るべき公文書を偽造したものにあたるというべきである。
 これを本件についてみると、 本件写真コピーは、いずれも、認証文言の記載はなく、また、その作成者も明示されていないものであるが、公務員である供託官がその職務上作成すべき同供託官の職名及び記名押印のある供託金受領証を電子複写機で原形どおり正確に複写した形式、外観を有する写真コピーであるところ、そのうちの二通は、宅地建物取引業法二五条に基づく宅地建物取引業者の営業保証金供託済届の添付資料として提出し異議なく受理されたものであり、また、その余の三通は、いずれも詐欺の犯行発覚を防ぐためその被害者に交付したものであるが、被交付者において、いずれもこれを原本と信じ或いは同一内容の原本の存在を信用して、これをそのまま受領したことが明らかであるから、本件写真コピーは、原本と同様の社会的機能と信用性を有する文書と解するのが相当である。してみると、本件写真コピーは、前記供託官作成名義の同供託官の印章、署名のある有印公文書に該当し、これらを前示の方法で作成行使した被告人の本件行為は、刑法一五五条一項、一五八条一項に該当するものというべきである。したがつて、本件写真コピーは公文書偽造罪の客体たる公文書に該当しないとして被告人の刑責を否定した第一審判決を是認した原判決は、法令の解釈適用を誤り、所論引用の判例と相反する判断をしたものといわなければならず、論旨は理由がある。

 よつて、その余の検察官の上告趣意に対する判断を省略し、刑訴法四〇五条三号、四一〇条一項本文により、原判決及びこれと同趣旨に出た第一審判決全部(右の罪にかかる公訴事実は第一審判決が有罪とした他の各公訴事実と併合罪の関係にあるものとして公訴提起されたものである。)を破棄し、直ちに判決をすることができるものと認めて、同法四一三条但書により被告事件についてさらに判決する。
 第一審判決の認定した罪となるべき事実及び同判決中無罪部分の理由に公訴事実として記載された前記本件写真コピー偽造行使の事実(第一審第一回及び第二回公判調書中被告人の供述記載、被告人の検察官に対する昭和四九年二月二一日付供述調書、D、E、Fの検察官に対する各供述調書、F《二通》、A《二通》、Gの司法警察職員に対する各供述調書、旭川地方法務局長H作成の告発書、原審第二回公判調書中証人F、同D、同E、同Gの各供述記載、押収の供託書写四通((最高裁昭和五一年押第一号の七、一〇、一一))供託書一通((同押回号の一七))による。)に法令を適用すると、被告人の所為のうち第一審判示第一の各所為はいずれも刑法二五三条に、同第二ないし第四の各所為はいずれも同法二四六条一項に、前記本件写真コピー偽造の各所為はいずれも同法一五五条一項に、同行使の各所為はいずれも同法一五八条一項、一五五条一項に該当するところ、右のうち第一審判決別紙犯罪一覧表(五)の番号1及び2の偽造公文書の一括行使は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であり、公文書の各偽造とその各行使との間にはそれぞれ手段、結果の関係があるので、同法五四条一項前段、後段、一〇条によりこれらを一罪としてそれぞれ犯情の重い偽造公文書行使罪の刑で処断することとし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により、重い偽造公文書行使罪のうち犯情の重い一括行使にかかる前記犯罪一覧表(五)の番号1及び2の罪につき定めた刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役三年八月に処し、同法二一条により第一審における未決勾留日数中一五〇日を右刑に算入することとし、押収の供託書写三通(最高裁昭和五一年押第一号の七、同号の一〇のうち旭川検察庁昭和四九年領第九二号符一号の一及び同押第一号の一一)は、前記犯罪一覧表(五)の番号1、2及び4の偽造公文書行使の犯罪行為を組成したもので、なんびとの所有をも許さないものであり、供託書一通(同押同号の一七)は、同表番号5の公文書偽造の犯罪行為の用に供せられたもので、被告人以外の者に属しないから、同法一九条一項一号及び二号、二項によりそれぞれこれを没収し、第一、二審及び当審の訴訟費用は、刑訴法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。

 よつて、裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。

 検察官山根治 公判出席

  昭和五一年四月三〇日

     最高裁判所第二小法廷
          裁判長裁判官 吉田 豊
             裁判官 岡原昌男
             裁判官 大塚喜一郎
             裁判官 本林 讓

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