写画へのいざない

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玄鳥

2007-11-07 20:05:36 | 愛読書より

 家系存続のため、不幸な結婚をしいられた女、路が、上意討ちに失敗して周囲から「役立たず」と嘲笑され、左遷された曽根兵六に、亡父から受継いだ無外流の秘伝を教える。

 粗忽者だが、夫よりはるかに人間らしい昔の父の弟子、曽根兵六によせる、武家の娘の淡い恋心を、かえらぬ燕に託して描く、情緒豊かな藤沢周平の作品。

 先に紹介した「麦屋町昼下がり」同様、1時間足らずで読める短編で、ご推奨。

 藤沢作品は殆ど愛読しているが、その魅力は、登場人物の性格や、自然描写の緻密さがあげられ、中でも女性の献身的で、躾のよさ、また、自制心に富み、欲望や感情をむげにだすことのはしたなさ、などを描かしたら絶品といえよう。
 その代表例が、作品「蝉しぐれ」の最後に、お福が20年ぶり文四郎に再会したときにいう科白・・・この哀切さに集約されているように思う。
 「文四郎さんの御子が私の子で、私の子供が文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」

 作品は、表紙の挿絵をトーンカーブ効果を用いたもの。

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