kirekoの末路

すこし気をぬくと、すぐ更新をおこたるブロガーたちにおくる

仕事開始!

2008年01月05日 18時24分46秒 | 末路話
メッチャ忙しいわけでもないけど@kirekoです。


>初仕事

イキナリプリンターが「グギャゴゴ!グギャゴゴ!」っていって
ぶっ壊れました。幸先が悪すぎです隊長!
ブラックジャーック!!!!

http://www.nicovideo.jp/watch/sm357662

>初夢

初夢は小さなスタジオで3,4人の部下に命令しながら
脚本のプロットを考えつつ、ロボットかいて
動画を作りながら仕事をする夢でした。
びびったのは途中でボトムズの高橋監督が出てきて
「君の考えたプロット没ね。もっと大人の政治学を学びなさい」
と言われてジャンピング土下座したところで起きた。

久々にまともでカオスな夢だったけどすげー怒られてたのに
なぜか興奮してたのが印象的。


>初心表明

今年の抱負
今年は年男なので
『挑戦』でいきたいと思います




デーデーデーーデーデーデーデー
人生というなの二面ですでに100ティウン覚悟で
悪戦苦闘するkirekoの挑戦開始!

「ええい、邪魔だー!」

2008年01月04日 18時39分52秒 | 我流ロボットデザイン
覚醒モードの敵にだけは遭遇したくない@kirekoです。


>邪魔だーーー!




一般兵が「やった!ついにしとめたぞ!」って思ったら
爆炎の中からバビョーンってメカが出てきて、一般兵士の乗るメカの
頭上から銃を乱射するの図。

メカが無性に書きたくて衝動的にやった。
なぜかというとSWATから年賀状がきてて、
そこにかいてあったスコープドッグを見て嫉妬したからだ。
くそー!こうなったら俺の100%スコープドッグをみせ…



はい、というわけで毎回のごとくオリジナルなわけですが
ヌカみそさんのアニメ影のつけ方にもちょっと嫉妬しました。
それならば俺は線をわざと消さない(激楽)劇画タッチでいくぜ!
そうだこれが画伯のプライマリーポイント!


>色をつけると雑魚くなる。




とたんに雑魚くなった気がするのは気のせいか。

ZガンダムNO1モビルスーツ

2008年01月04日 16時44分30秒 | 末路話
おやコラッタのようすが・・・?@kirekoです。


>ZガンダムNO1モビルスーツ

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1075404.html


1位 Zガンダム
2位 Mk-Ⅱ
3位 百式
4位 ディジェ
5位 キュベレイ
6位 リックディアス
7位 サイコガンダム
8位 ネモ
9位 ジ・O
10位 ハンブラビ


4位がな。4位がいけないと思うんだよ俺は。
むしろ正直言えばZZのほうがMSのデザインは
ハッチャけてて好きだし。むしろZはマラサイがいいと思うんだぜ?
バウンドドッグの変形機構とかな・・・


>というわけでkireko的、勝手にZZでMSランキング


1位 ズサ (これはもう男のMS。ミサイル発射シーンがやばい)
2位 ガ・ゾウム (砲台の位置とミサイルポッドの位置がヤバイ)
3位 ザクⅢ改 (最期の突破するシーンと推進剤ばらまくところがヤバイ)
4位 ZZガンダム (FAよりノーマルの初登場時の機体ごと岩割りがやばい)
5位 ハンマハンマ (シールドの砲台の位置とヘッドラインと足の細さが)
6位 ドワッジ改 (ロンメル搭乗のビームカノンの構え方が秀逸!)
7位 コロニー守備するザク (ZZを圧倒するシーンがカッコよすぎる)
8位 ゲーマルク (あの巨大な火力と圧倒的な性能がいいんだけどキャラが…)
9位 ドライセン (全体的にシャープでかっこいいけど見せ場が・・・)
10位 クィンマンサ (巨大・強い・雑魚い。でもあの圧倒的なデザインはいい)


まあこんなところですかね。
キュべレイのデザインはちょっと生理的に受け付けないというか
あんまりこう自分の肌に合わないって感じなんですよね。
OVA08の宇宙で戦うアプサラスを見た感じに似てるかな。

寒いのう、ほんに寒いのう

2008年01月04日 15時59分58秒 | 末路話
やべこの記事は久々に暗雲・・・!@kirekoです。


>一日独裁者

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1074980.html

こ、これは…
ええと、
笑えばいいのかな?


どう考えても世間を知らないアントワネット的な箱入りの妄想だろ・・・
カール大帝もびっくりな思想だなこれはwwww
権力を持って差し迫る問題に対して自分勝手に領民から徴収したり
働かざる物が働く物と平等に扱われる共産化が独裁者の仕事なのか・・?
人間として動く思考を持ってるとは思いにくい文だな。
まあでも言わんとするところは、政権に対して足を引っ張る
諸所大臣の居ない中央集権な王政というところか。

それにしても
巨大な権力で領民から吸い上げて目先の小さな問題の性質の正邪は関わらず
とりあえず富裕層の金で回避することが先決とか滑稽だな。
国家を傾けて一日で独裁者辞めますってどんな大罪人だよwww
ハンバーグさんの経済論を読んでこいよwww
偉大なカリスマ性を発揮して部下をうまく統括し、外国に対して
国の威信を高めるのが絶対王様=独裁者の本来の目的だろ・・・。
まず民主主義前提の共和政資本主義の国で
こういう論を唱えるのは間違ってるよな。
頑張って勝つ奴が勝つ、頑張らないで負ける奴が負ける。
1万歩譲って贔屓目に見ても、この論じゃ誰も賛同しないぞ…

24時間(+5時間)短編マラソンの結果

2008年01月03日 23時56分54秒 | 短編
というわけで最終的に30時間かけて造れた短編は8本でした。
途中寝たんですが、体力的にも精神的にも最期は限界っぽかったので、
とりあえず今回はここでマラソンを終わらせてもらおうと思います。
ドクターストップの後は、さあ爆死だ!


=今回のマラソンで投稿した作品郡=

■『もらうセールスマン』 ジャンル ホラパロ
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/328703d6f2e864295425b5cb11d82fc4

筆者おすすめ度 ★★☆☆☆

面白くないというよりテンションだけで書き続けてた。
もっとセールスマンの内面を写したかったなぁ。

■『死亡フラグ村』 ジャンル コメディ
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/528015892af869ca0df43b39e12cbfee

筆者おすすめ度 ★☆☆☆☆

死亡フラグの意味が良くわからない人はたぶん理解できないと思う。


■『孤高の者』 ジャンル 動物
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/432169223acdb2de67495fe79ea08cdd

筆者おすすめ度 ★★★☆☆

凄く書きたかったような書きたくなかったような。青春?


■『ゴン助』 ジャンル 時代劇
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/12e16e63c735bc8132cd74b5f5b6b9f7

筆者おすすめ度 ★★★★☆

物凄く不幸な紙芝居。あとで思ったけどこれ子どもは意味わかんねえよな。
でも時代劇にはよくある連鎖だこと。


■『カレーなる一族』 ジャンル ドタバタコメディ
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/10d44cbbbabd25829894369886742a6e

筆者おすすめ度 ★★★★★

テンションのありのままで書き上げた作品。
自分の笑いのツボをひけらかした作品だな。


■『バルザックな生き方』 ジャンル 伝記?
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/af179e180f16b91667a807f03fe11ead

筆者おすすめ度 ★★☆☆☆

なんとなーくバルザックの生き方に面白みを感じたような
感じないような。そんなアンニュイな感じ。
もしかしたらオチがやりたかっただけかも。


■『三英雄と一人の姫』 ジャンル 戦争?
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/7af518053250da9cd4caa46edf4fcd1c

筆者おすすめ度 ★☆☆☆☆

やべ、いけると思った瞬間にこけた作品。
最初のタイトルは『台本』でした。


■『寿命売買屋』 ジャンル 金融
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/aaf5dae7796a05af01e07dcab17ca14f

筆者おすすめ度 ☆☆☆☆☆

ノリだけの存在。苦し紛れとしか思えないな。















>総括

今回わかったことが二つある
時間設定という概念をもうけることによって人は何倍も動くことができる。そして時間の幅が有る限り無限の考えが浮かぶ。だが時間のせいで話が形に出来ないのも事実である。つまり、設定を考える時間が長すぎて話がまったく浮かばないなんてのは日常茶飯事だってこと。時間をかけて小説は書きましょうってことだな。

あー疲れた。BGMのロックマンが耳について離れないわ…
助けてニードルマンー!

短編:『寿命売買屋』

2008年01月03日 23時20分39秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

===========================


短編:『寿命売買屋』



世も世知辛い末世を迎えると、まったくって
言っていいほど目新しい商売がでてきます。
今回の商売もそんな未知の商売が右往左往する話…


「おい!寿命の相場は今いくらだ!」

「今は1秒12円くらいで取引されてます!」

「よーし!15円くらいまで引き上げれば俺も大儲けだ!」

ここは最近流行の寿命を売り買いするトレードマーケット
一秒間に3千億もの金と寿命が売り買いされる超巨大市場だ。

「た、たた大変です!中国の乳児死亡率が90%を割り込みました!」

「な、なんだって!ばかな…子どもの寿命を売って金持ちになりたいなんてなんて浅ましい連中だ!よし!日本の寿命経団連に連絡して、国債で寿命を買い戻すんだ!」

「あ、アメリカの巨大寿命銀行と保障会社が破綻しました!外に流出した寿命がマフィアに買われ、どんどん相場がおちていきます!あああ…10分にして5円ダウン!」

「ばかな、あの銀行が潰れるほど民間のマフィアが金を持っていたのか!くそ!日本の意地を見せろ!一気にロシアの寿命を買占めだ!」

「国庫で12万年の確保は出来ていますが、不安で相場落とし狙いのデイトレーダーが持ち寿命を売りまくってますね…すでに1秒5円まで堕ちてますよ…これで海外の寿命ハゲタカファンドに買い叩かれますね。マズい展開ですよ!」

「馬鹿やろう!信託銀行にゃ俺達の寿命もかかっているんだぞ!もっとテレビでアメリカの巨大スイーツと中国捏造ニュースを流せ!ここで馬鹿な主婦の購買意欲を誘って、海外寿命を使って買い戻しておかないと日本が死ぬ!」

「あ、わ、わ、わ、わ」

「どうしたろくでなし!何があった」

「せ、せんぱい…1秒1円台です…」

「ば、ばかなブラックマンデー…世界大恐慌の再来か…?!」

「ど、どうやら駄目です…もう…僕の寿命も・・・」

「し、しっかりしろ!お前の分の寿命なんていつでも買い戻し…」

バタッ、二人は倒れた。
辺りを見渡すと、そこには死体の山が築かれていた。
日本人の寿命が、寿命が…つきたのだ。




短編:『寿命売買屋』完











=========あとがき=========

http://news23vip.blog109.fc2.com/blog-entry-281.html
を見ててなんとなくトレード的な雰囲気をかきたかった
だが、オチも話の筋も理解不能で、しかももう時間がない。

八本目、俺は負けてしまうのか・・・

短編:『三英雄と一人の姫』

2008年01月03日 23時00分16秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

===========================



短編:『三英雄と一人の姫』

ナレ「ここは中世のヨーロッパ。度重なる戦乱が続く激動の時代の果てに、三人の英雄が生まれました。一人はハム。作戦を考えるのが旨く、戦争が得意でしたが、彼は臆病者でした。もう一人はネム。勇猛果敢で力も強かったですが、よく命令違反をおかす乱暴者です。最後の一人はキム。頭が冴えた発明家でしたが、残酷で嫉妬深い性格でした。彼らは戦争になるといつも手柄を比べあい反目しあって足をひっぱり、その都度いがみ合っていました。ある時、領主同士の戦がありました。これは敵の領土を奪うチャンスと、この地方を守る公爵は三人の英雄を迎えましたが、やはりいがみ合ってまとまりません。すると公爵は考えました。当時絶世の美女と呼ばれた娘のディオネスを餌にして、彼等を一つにしようと考えたのです」


ハム「かの地の制圧の暁にはディオネス姫を私の妻に!」
ネム「お前のような乱暴者は駄目だ!私のように勇敢な者に!」
キム「お前らのようなガサツ者では駄目だ!私のような知的な者に!」

公爵「よしよし、三戦士よ。この戦で一番立派な功績をあげたものに渡そう」

ナレ「こうして三人は三者三様で色々な成果をあげました」

ハム「お父上!お喜びください!私はかの要塞を陥落させました!」
ネム「お父上!お喜びください!私は敵の将軍の首を七つもとりました!」
キム「お父上!お喜びください!私は新しい兵器で敵を降伏させました!」

公爵「ふむう。どの者も比べられないほどの大功だ!」

ハム「いえ!私が一番です!なんといっても要塞を陥落させたのですから!」
ネム「いえ!奴など後方で指揮をとっていただけ!私こそ一番です!」
キム「いえ!二人の功績など微々たるもの。勝敗の大部分は私が握りました!」

ハム「このお!なんだ力ばかり強くて、我が軍に甚大な被害を出したくせに!」
ネム「なんだと!後ろで俺達に命令するばかりで前にもでれない臆病者が!」
キム「馬鹿な二人!どっちにしろ私が一番手柄なんだから姫は私の物だ!」

ハム「ふん!頭だけでは戦は勝てぬぞ!」
ネム「ふん!策だけでは戦は勝てぬぞ!」
キム「ふん!力だけでは戦は勝てぬぞ!」

公爵「…」

ナレ「公爵は争う三人を見て黙ってしまいました。娘をどの者に与えても、この三人は互いにいがみ合って争うでしょう。この三人の処遇を考える間に領主の玉座の近くにディオネス姫がやってきました」

公爵「おおディオネス。今三戦士が戦いから戻ってきてお前を娶りたいという。お前に希望はあるか?」

ナレ「ディオネスは言いました」

ディオネス「私は味方同士でケンカなんてする野蛮人は嫌い。私が好きなのは平和を愛する知的な人よ」

キム「それでしたら私に!」

ディオネス「キムは頭はいいけど冷酷で残忍だわ。あなたの元では領民達も、きっと不満が多いでしょうね。それになに?その体は。なよなよとして風が吹いたら飛んでいってしまいそう。…力がないのも困り物だわ」

ネム「それでしたら私に!」

ディオネス「ネムは強くて頼りがいはあるけど乱暴ものだわ。あなたの元では私の生活が脅かされそう。それになに?その匂いは。香水もつけずにお父様の前によくもでれたわね。…品性がないのも困り物だわ」

ハム「ふふ、決まったようですな。二人には悪いが品性ならこの私に利が有る!」

ディオネス「ハムは品性もいいし直観力もあるけど臆病者だわ。あなたの元では信頼がおけなさそう。それになに?その鎧の傷は。後ろにばかり剣のあとがついているということは戦場で逃げたということ。…臆病者は嫌いだわ」

公爵「ではお前はこの英雄達を前に結婚をしないというのか」

ナレ「公爵は慌てました。三英雄をディオネスという餌でつった手前、どれも断ったのでは英雄たちのメンツがありません。誰かが反乱すれば攻め取った領地はおろか、自分の領地まで失ってしまいます。公爵は娘を説得しようとしました」

公爵「ディオネス。わがままを言うな。私は英雄達を評価している。その評価に対する褒美がお前なのだ。誰か一人を選びなさい」

ディオネス「いやですわお父様!」

公爵「聞き分けのないことをいうな!」

ディオネス「じゃあ三人と結婚します!」

ハム・ネム・キム・公爵「えーっ!」

公爵「そ、そんなこと許されるはずが…」

ディオネス「いいえ、ありますわお父様。ハムは臆病者ですが品行方正が正しいです。ネムは頭が悪く乱暴ですが勇敢です。キムは残忍ですが頭がキレます。この三人の悪いところを良いところで協力し合えば、この国は安泰ですわ。だから私は三人と結婚します。いいでしょ?お父様」

公爵「そ、そこまで考えていたのか」

ハム・ネム・キム「…」




ナレ「それからというもの、三戦士はお互いの仲の悪さを反省し、国を盛り立てていきました。彼らはそれぞれ妻を娶りました。ですがそれはディオネス姫ではありません。それぞれ領民の娘でした。ディオネス姫は公爵に誰とも結婚しないことを誓いました。なぜなら自分が結婚すれば三戦士の誰かが嫉妬し、その結束が崩れるからです。ディオネスはその夜泣きました。彼女は結婚という女の夢を捨てたのです。公爵は彼女の姿を見て、その強い意志に感動を覚えました。それからというもの、この領地は平和な暮らしが末永く続いたとさ…」




短編:『三英雄と一人の姫』完











=========あとがき==========

はい、というわけで残り1時間をきってるわけですが
今回は三本の矢の逸話を中世に替えて、王道スタイルで
台本みたいな感じで書きたいなーくらいでした。

それよりもネタが枯渇して死にました。
最期のオチはもちろんやっつけです。
ああ、思いつかない・・・八本目

短編:『バルザックな生き方』

2008年01月03日 21時13分18秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

===========================





短編:『バルザックな生き方』





西洋を良く知る小説家なら誰しも知っていよう
フランスの天才小説家、『オノレ・ド・バルザック』のことを。
人間心理を巧みに描く彼の小説の数々は、人生をつまらなく生きる
私の心に深く突き刺さる。

私は彼の生き方に憧れ、傾倒し、崇拝に近い感情を抱いた。
彼の現世での行いは酷く破滅的だが、実に人間的でもあった。

自ら夜をなして小説を書きながら、熱いコーヒーをがぶ飲みし
自分の小説に推敲を重ねる彼は、朝がくればそのまま疲れた体で
上流貴族達の社交界に出かけ、美味い食事としたたる美酒を片手に
貴族の女達とダンスを踊る。

母親的な愛を求めたベルニー夫人、ダブランテス公爵夫人
年上のカストリ侯爵夫人、大富豪のハンスカ夫人、
ギトボニ=ヴィスコンチ伯爵夫人…などなど
彼の生き方には生涯を通して通俗的な愛を超えた
見識を広めるための異常なほどの欲があった。

「あらゆる人智の内で、結婚に関する研究が最も遅れている」

そういう言動からも彼の快楽破滅主義的な生き方が見受けられる。


私はふと、傾倒するバルザックのような生き方を目指してみようと思った。
彼の人生を見ていると、私も似たような境遇なのだ。

彼の母はいわゆる神経質でヒステリックな神秘主義者という奴であり
非情に彼のことを嫌っていた。彼は幼少時代からあまり母親に愛されず
遠い寄宿学校に入れられては六年間の孤独な少年時代を送った。
なんと、その六年間に母親がバルザックに面会したのは、わずか二回だけだった。
母親からの愛の欠乏と、その後の彼の人生における女性遍歴の多さは、
当時の彼と今の私を同期させるに有り余る証拠であった。

私は大食漢なところも彼に似ている。
女に意地汚いという部分も兼ねると、他人とは思えなかった。

私はとりあえず、自分の妻と離縁した。
今から始まるバルザックな生き方に、妻を巻き込むわけにはいかない。
だが私は後から気づいた。
バルザックはそういう家族に迷惑をかけながら生きてきたということを。

最初の躓きであった。


とりあえず私は振り返ることをやめた。
すこし思い込んで、バルザックの生き方を真似するように
知人、友人、親戚…色んな人物に連絡をとり
次の日に会って遊ぶ約束を取り付けると、私は小説を書き始めた。

だが私は何を書いていいかわからなかった。
文字を書いて人物の心理を右往左往させる、そういう小説が苦手だったのだ。

二度目の躓きであった。


とにかく文字を書こう!何でもいい、恋愛、笑い、喜劇、悲劇。
私は稚拙な物語と端的な喜怒哀楽で喋る主人公達を
何度も紙を破り捨てては書き直すを繰り返し、ついには
一枚も書くこともできずに夜が明けてしまった。

私は香りの香る熱いコーヒーを口に含みながら
新聞を読んで気を紛らわそうと思った。
しかしどれもこれも捏造や汚職、はたまた誰かが幸せになったり
不幸せになったり、どれも体面的な文字の平衡感覚を失って面白くない。
こういう時、やはりバルザックの言葉が頭に浮かぶ。

「もしジャーナリズムが存在しないなら、間違ってもこれを発明してはならない」

私は新聞を読むのをやめた。

三度目の躓きであった。


そして夜が明けると、仲の良い友人達、親族達が家へと押しかけてくる。
私は疲れていたが、彼らは良く眠って血色も良く
バリバリと用意していた食事をたらふく食べていく。
それなら私も負けないぞと食事に手を伸ばすが、喉を通らない。
それほどに私は疲労しているのだ。

ああ、こんなにうるさい奴等ばかりあつめて私は何をやっているんだ。
子どもがジュースをこぼした!?私の知ったことか!
隣のおじさんが娘をいやらしい目で見た!?お前ら結婚しろ!
兄弟で建設会社を営んで利権を争っている?どっちも利権を放棄しろ!
どいつもこいつも私に文句ばかり!黙れ!黙れ!

私は怒った!
もう帰れ!帰れ!
私は眠いんだ!私は寝るぞ!

友人や親族達は皆眉をひそめて、私の弟でさえ
「兄貴がそういう奴だとは思わなかったよ!」なんて捨て台詞吐いて
嫌そうな顔をして家を出て行く。

私はバルザックな生き方をしていく間に
彼等の信頼を失ったことに後で気がついた。

四度目の躓きであった。


静まった夜、私は起きると肌寒さを感じていた。
いつの間にか窓が開いていたのだ。

一体誰が…?と思ったが、おそらくさっきまできていた
親戚の連中だろうと私はまたたてなくてもいい腹をたてながら理解した。

キィー…

窓をしめると、私は肌寒さのあまり、近くにあった暖房をつけた。
徐々に暖かくなる室内だったが、今の私の心は寒かった。

バルザックのように生きる。とかこつけては見たものの
結果はどうだ!妻を失い、時間を失い、友人を失い、親族から信頼を失い!
まるではた迷惑な破滅主義!そう!運のないバルザックのようだ!

私は自分自身の愚かさに再び不貞寝をしようと思った。
だが、眠気はすっかり冴えており、暖房の暖かさも関係ないほど
夜の暗闇と供に私は一人、孤独の時間を味わった。

こういう時を体験していると、またバルザックの言葉が思い浮かぶ。

「孤独はいいものだという事を我々は認めざるを得ない」

後半があったように思えるが、度忘れして思い出せない。
私はバルザックに今、沸々と燃え上がる復讐心が沸いていた。

孤独はいいもの?そんなことはない!現実の孤独はひどく残忍で冷酷だ!
明日からまた始まる人生は、バルザックのせいでまるで地獄そのもの!
妻はいない!小説は書けない!友達はいない!信頼はない!

もう私は孤独の渦の中で寂しく生きるしかないのか
私は後の私を想像して悲観に暮れた。

しかしその時、電灯がついた。
眩しい光と供に、良く知ってる顔がドアを開けて入ってきた。

「よう。しけた面してどうしたい。元気してるかい?」

友達の居ないので有名な友達。
そこに居たのは親友だった。

「へへっ、お前に招待はされたけど、皆と一緒じゃちょっとな。俺は孤独が好きなんだ、お前はいいな仲間も信頼もあって」

「私は孤独を愛したバルザックのようになりたかったがため、今さっきその両方失った。私は今、世界中誰よりも孤独さ」

「そうかい?バルザックっていう奴は知らないけど、俺はそいつに憧れるな。しかしお前が孤独なんて珍しい。さあさあ、飲もうじゃないか。寝てたら面白くないぜ」

「お、おい…」

私はその孤独の者につれられて
二人だけのダイニングで小さなパーティをした。
その時、私はバルザックの言葉の続きを思い出した。



「孤独はいいものだという事を我々は認めざるを得ない。けれどもまた孤独はいいものだと話し合う事のできる相手を持つことはひとつの喜びである…」



私は躓いたが、ひとつの喜びを知った。






短編:『バルザックな生き方』完












========あとがき==========

ネタがなさ過ぎたので、人物系の物語でいこうかなと思いました。
感情表現が酷く稚拙ですが、急いでいたのでしかたないと思ってください。
ちなみにバルザックという人物は本当にいる人です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%8E%E3%83%AC%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%B6%E3%83%83%E3%82%AF

この人の言葉は凄く共感できますが
彼のような生き方はできませんねw

短編:『カレーなる一族』

2008年01月03日 20時04分02秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

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短編:『カレーなる一族』





カレー!あの辛い香辛料が一杯入った黄色茶色赤色緑色、
最近じゃホワイトカレーなんて洒落ちゃって白色なんてのも人気だね!
インド6千年の歴史!もう世界のいたるところで食べられてるカレー!
私に人生の喜びを教えてくれたカレー!人生の大半をしめるカレー!
これはカレーが大好きな『カレーなる一族』の話です。

チュンチュン…

「よし起きた!ばっちしカレーな朝だ!」

カレーなる一族の朝は濃厚なカレー臭から始まる。
カレー臭のするカレー布団にカレー枕、
朝日を遮るカレーカーテンに、カレーパジャマにカレーインナー、
そしてなんといってもカレーの匂いを絶やさないカレー加湿機!
いつものカレー目覚まし時計を止めて、カレーに階段を滑り降りる私!

おおっとジーザス!カレーに忘れてたわ!
カレー臭のするカレーなる我が妹のことを忘れていた!
カレーなる妹よ!カレーな遅刻をする前にカレーに起きて!
少々辛口な妹の部屋にカレーに駆け込むと、そこにはインド人もびっくりな
あられもないカレーな妹の姿を私は見た。

「むにゃむにゃあと五分。カレーを…」

きぃぃい憎たらしい!カレーを一杯食べる夢を見るなんて
朝から凄くマイルドな激辛カレーを食わされた感じだわ!
この憎っくき我が愛妹をどうやってカレーに起こそうかしら!

…そう!そうよ!なんてカレーな思考かしら!
いつもは甘口カレー派の私が辛口でシビアな言い事考えた!
レッドチリなタイ式レッドカレーもグリーンカレーも、
海の幸をふんだんに使った茶色のシーフードカレーも真っ青よ!
私は妹の耳元にちかづき、囁く甘口のカレーのようにこういったの。

「妹、カレー、学校、カレー、遅刻、カレー、遅刻、カレー、遅刻、カレー」

「う、ううん…」

やったわ!利いてるわ!!
私のカレーな囁きが彼女の不安を煽る、サブリミナルカレー上陸作戦!
遅刻という不安要素を大好きなカレーの前にいれることによって
よりカレーに遅刻がダイレクトに伝わる奥義!

がばぁ!!

「カレーのUFOが大勢で地球のカレーを奪いに青いカレーの地球に攻めてきた!カレー防衛軍は全滅!メイデー!メイデー!」

「やっと起きたわね妹」

「ぶわああ!恐ろしい夢をみたわ。人間達がカレーにされる光線を浴びて、人間カレーが宇宙人にキャトルミューティレーションされる夢…恐ろしくて寒気がするわ!」

なんという辛口な思考に対して甘口な夢…
だいたいカレーをキャトルミューティレーションって何?
変なUFO雑誌を読んでるからそんな甘口でも辛口でもない
中辛なことをいいだすのよ。

「いっただっきまーす!」

今日の朝ごはんはもちろんカレー!
しかもママ特製のガランマサラとチャックマサラをふんだんに使った
本格的なインドカレー!タンドリーチキンもついて
これは朝からカレーで豪勢な食事だわ!

「パパ、カレーを食べている時に雑誌読むのやめてください」

「うるさいなあ、朝カレーの時くらいいいじゃないか。ママは辛口だね」

「まあ!辛口とはなによ!私はただ本格的なインドスタイルなだけよ!」

「まあまあ、ママもパパも朝からカレーのことでケンカしないのよ。ナンからルーが飛び出ちゃうじゃないの」

「いつまでたってもお暑いわね。まるで120倍の激辛カレーのよう。いや、そういう意味では砂糖のように超甘口かしら…ウゲーッ想像したらやんなった」

カレーなる一族の出勤前はカレーな会話から始まり
カレーな話題で終わる!まさにカレーオブザピーポーオブザカレー!

「いってきますッ!」
「いってきまーす!」
「いってくるよ」
「いってらっしゃい。お弁当はもちろんカレーよ、電車とかであんまり揺らさないでね」

「「「わかってるって!じゃあカレーにいってくる!」」」

「あらあら、まったくカレーに出て行くんだから…」

三人は猛ダッシュでカレー臭を振りまきながらカレーに駅まで向かう。
パパだけは行く先が違うからカレーにバス亭でバスを待つ。
私達姉妹は同じ中学校の普通科に通うカレーな女子中学生!
今日もカレーに校門をくぐって、ばっちしカレーに遅刻!

「米知佳麗さん。遅刻ね」

辛口なピロシキのような先生…もといクミンのようなセーラのような
そんな香辛料を彷彿とさせる先生にカレーに遅刻をもらった!
でもめげない!だって私はカレーな女の子!

「では一時間目を始める…一時間目は数学…」

一時間目は数学か…それじゃ100円SHOPのカレーだわ。
味も素っ気もないそんなカレーを食べるくらいなら
私は黙って寝ることにするわ…

キーンコーンカーンコーン…

「三時間目と四時間目は家庭科だ。調理室へ向かえ」

やったわ!私の大好きな家庭科の時間よ!
まってまってたモルジブフィッシュよ!
スパイスミックスの出来上がりは、崇高なる辛口に誘う悠久の時間!

「今日はブリの照り焼きを作ってもらいます」

ふふふ!シーフードカレーね!おまかせあれスリランカ!
もっとも私はブリなんてルーの中にはいれずに
タンドリー釜にいれてスパイスを利かせて蒸し焼きにするけどね!

「あ、また佳麗さん!そんな大きな寸胴もってどうするの!」

「心配いりません!カレーに作って見せますわ!オホホ!」

「いや!今日つくるのはカレーじゃなくてブリの…」

「さあ!タンドリー釜を作るわよ!ほら男子手伝って!」

さあ、私はこうなったら庶民派カレーに伊勢海老を加えたように
ガランもチャックも、スパイスが利かないわよ!
男子に釜を作らせて、寸胴に火をかけて、さあ始まったわ!
今やここは調理室ではなくカレーなキッチンスタジアムよ!
出来上がりまでに8時間!ことこと煮込んで一昼夜!
私の完璧なシーフードカレーが出来上がるわ!楽しみ!


キーンコーンカーンコーン…


「はい、皆さんブリを美味しく頂きましょう。あとそれからカレーをつくってる佳麗さんはあとで職員室にくるように」

か、完敗だわ!カレーに完敗!
私はその後、職員室でこってり牛筋のごとく煮込まれて
泣きながら帰ってきてカレーを食べた!ママのカレーがしょっぱい!
涙の味がした!

キーンコーンカーンコーン…

「カレーにさようなら!」

六時間目を終えた私はカレーに学校を飛び出した!
四時から始まる商店街のカレーパン祭りに参加するためだ!
限定100食の煮込まれたカレーパンのためのカレーで造られた
カレーパンを奪おうと、全国からカレーなカレーソルジャーたちが
今や遅しとカレーパンをつけねらっているの!

「ふっふーん!お姉ちゃん!カレーパンは渡さないわよ!」

「い、妹!あ、あんたもカレーパンを!!」

恐るべきカレーに対しての嗅覚!
すでに学校の終わっていた妹が、パン屋の先頭集団にならんでいたのを見て
私は我が妹ながらなんと恐ろしい怪物なのだろうと思った…
このカレーモンスターが限定百食であるカレーパンを
一体何個頼むのか(お一人様三個まで)気が気ではなかった!

「やられたッ!あの女ッ!三個も頼みやがった!」

妹のカレーパン三個買いを苦々しく見る男子が私の前に一人。
私は彼を見ると、スパイスをそのまま飲み込んだような激痛が走った!
顔は帝国ホテルのカレー並にちょっとニヒルでイケてる貴公子顔!
髪はしっとりウェーブかかりの激甘、体は硬派な激辛、
声は辛口だがやや甘口めいて、す、凄いカレーな人物だわ!


私はカレーな彼に目を奪われて結局カレーパンをゲットできなかった。
カレーな彼は一個だけゲットして、海を見ながら流し目で
一口一口、カレーなカレーパンを満喫してたわ…。
ああ、夕日に映える彼のカレーな姿!
なんて痺れるカレーなんでしょう!

「お姉ちゃん!帰るよ!」

「妹よ、カレーパンを頬張る美男子にシーフードとは絶景極まるの~う、凄く目に良い者をみたでござるよ」

「カレーパンが欲しかったらそういってよね!三個のうち一個はお姉ちゃんの分なんだから!」

「な、なんですとぉ!」

おお!ジーザサイズ!ゴッドブレスマイシスター!
お前のような良き友を得て、私は幸せだ!
さあ!帰ろう!その極上のカレーパンを頬張りながら!
帰ろう!帰ろう強敵(とも)よ!ママの待つ我が古のカレーの城へ!


「「「いっただきまーす!」」」

「熱いから気をつけなさい」

カレーな一族の晩御飯はやはりカレーだ!
今晩はおしとやかに日本風カレー!
ライスにしみこむえもいわれぬ旨さの結晶!
そしてスプーンを使わずに指で口に運んで食べる!
まさにワールドオブナンバーワンプリンスカレーな食べ方だわ!
だがカレーな私も今日は食欲がなかった。

「おや佳麗。珍しいなカレーに目がないお前が、カレーに手をつけないなんて」

「お姉ちゃん。帰ってきてからずっとああなのよ」

「佳麗がカレーで黙るとなると、深刻な病気…いやその顔は恋の病ね」

「ええっ!?」

「なんだと!彼氏だと!」

「そ、そういえばおねえちゃん海を見てた美少年がどうとか…」

「どんな奴だかしらんが甘口な奴なら私は許さんぞ!」

「ちょ…違うって」

オーマイマザーハンギングゴッドヒアー!
カレーにママな直感によって恋がバレた!
パパはその言葉を聞いて激辛カレーのように激怒!
助けてといういつもの妹は笑って情報公開してるし!
ああ!何いってんのママ!カレーにニヤリと私のことを見ないでよ!



もー!誰か助けてよ!このカレーなる一族を!






短編:『カレーなる一族』完
















=====あとがき=======

テレビでやってた華麗なる一族を見て、
あまりのシリアスさについギャグのノリがやりたくなって
テンションのまま書いた。
いろんな意味でカレーを考えるのが難しいな。

イメージとして考えてた構成はこれ。

父=ふだんは優しく寡黙だがカレーにうるさい
母=勘が鋭い、カレーなる主婦
姉=直情馬鹿!とにかくカレー至上主義!
妹=妄想家で狡猾さを秘めたカレーな奴!

あ、あと4時間をきって五本…
間に合うのか?!

短編:『ゴン助』

2008年01月03日 18時43分39秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

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短編:『ゴン助』





「これは私が小さいときに、おじいさんに教えてもらったお話です」

都会の喧騒を離れた場所に、えらく気張った紙芝居屋が来ていた。
お題目はなんだ?桃太郎か?浦島太郎か?金太郎か?

「今日のお題目はゴン助」

ゴンスケ?聞いた事ない話だな。
どれ、ベンチに寝転ぶのにも飽きたし、話を聞いてみようじゃないか。

「昔々、山の麓に貧しい村がありました。そこにゴン助というものがおりました」

昔々なにがしという、紙芝居によくあるいつものパターンだな。

「ゴン助の母はゴン助を生むとすぐ亡くなり、父親はゴン助が6歳の時に病気を悪くして死んでしまいました」

天涯孤独か、よくあるパターンだ。

「ゴン助は真面目でありましたが、両親が居ないということだけで、それからまっとうな仕事につくことも出来ずに、15の時、ついに盗人になりました」

堕ちたなゴン助。

「盗人家業に精を出す中、旅をしながら各地を転々とするゴン助は、川で水を飲んでいると、そこにある罠を見つけました」

お、物語の起か。何が起こるのだろう。

「ゴン助は川べりにかかった罠をよく見ると、美味しそうな川魚やウナギなどが大量にかかっており、これはシメシメと今日の晩御飯にしようと奪っていきました」

さすが盗人。しかしその罠の持ち主は誰だ?

「しばらくすると川の手にあでやかな着物を着た美しい娘が一人。川べりにかかっていたはずの罠の所を見てシクシク泣いています」

どうしたのだろう?

「ゴン助は魚を頬張りながら娘のほうを眺めています。美しい娘でした。ゴン助は悲しみに暮れる艶やかな彼女の姿を見て、何か心の中で熱い物を感じました。彼は、生まれて初めて恋をしたのです」

一目ぼれってやつか。

「ゴン助はシクシクと泣く美しい娘の後をこっそり追いました。夕暮れの道を進みたどり着いたのは、ゴン助の暮らした村を思い出させるボロくて貧しい集落の長屋の一軒でした」

思い出か。

「娘が家屋へ入ると、ゴン助は後を追うようにすぐに障子戸の横につき、聞き耳を立てました。薄い障子戸の中からは苦しそうなうめき声が聞こえます」

誰かいたのか?旦那か?

「美しい娘は言いました。『おとうさん、すいません。病気のお父さんのために精のつく食べ物を取りたかったのですが、誰かにとられてしまいました』と」

うわーゴン助いたたまれねえ。

「娘のお父さんは何も言わずに苦しそうな顔をわざと笑い顔に替えて言います。『お佳代、お前はいい娘だった。盗んだ奴を憎んじゃいけないよ。私はどうせ長くない。お佳代のその気持ちだけでいいんだ。母さんも死んで、私もじきに死ぬだろう。これからはお前の幸せのために生きなさい。私のことは忘れてくれ…』そういって父親は息を引き取りました。お佳代は一晩中泣きじゃくりました」

娘は天涯孤独、ゴン助と同じ境遇になったのか。

「ゴン助はいたたまれない気持ちになりました。たとえ盗人の身に自分を落としたとしても、彼も人間です。同じ天涯孤独になった者の気持ちがわからないはずありません」

そうだろうなあ。

「その後、お佳代の父親の葬儀が終わり。チラチラとゴン助は顔を出しては、お佳代のために何かしてやりたいと思いました」

健気だな。

「しかし、ゴン助は盗人の身。会って話せば役人に捕まってしまうし、お佳代の父親を間接的にとは言え殺してしまったため、自分の正体も明かせず、つのる恋慕との板ばさみになりました。かといって嘘をつけるような人でもなかったゴン助は、一計を考えました」

ほうほう、どんな作戦?

「自分の手足についた自慢の盗人の技で、お佳代に援助をしようと思ったのです」

盗人が良心に目覚めるわけか。

「その日からゴン助は色んな盗みを働きました。アコギな両替商から金を奪い、威張った侍からスリで身銭を巻き上げ、人を騙す庄屋の倉に忍び込んだり、女をかどわかしては遊郭に売り。おどろくべき早業で大金を作っては密かにお佳代の家に放り投げていました」

恋は盲目かね。まったくやることが大小凄いこと。

「お佳代は不思議がってゴン助の投げ込む金には手をつけませんでした。ですが金の匂いは誰しも塞げません。そのうちに長屋の隣に住んでいる意地悪庄屋の息子、半兵衛がお佳代の隠し持った金に気づいてしまいました」

これはやばい匂いが・・・。

「半兵衛はこれは自分のところから盗まれた金ではないかという旨をお佳代に言うと、もちろんお佳代は知らないの一点張りでしたが、半兵衛は怒ってお佳代を襲いました」

やばっ助けろゴン助!

「その頃、ゴン助はいつものようにお佳代の長屋の前で金をいれようとしていましたが、中で襲われているお佳代を見て、いてもたってもいられず、中に入るなり持っていた短刀で半兵衛を殺してしまいました」

ナイスゴン助!グッジョブゴン助!

「ゴン助はお佳代に『怪我はないか』と言うと、お佳代は乱れた衣服を整えながら何度もゴン助にお礼を言いました。ゴン助はお佳代のチラッと見えた柔肌が目に焼きついていましたが、恋した女に恥はかかせられません。顔を背けて、後ろを向いて、聞こえるお佳代の衣擦れの音に、何度も自分に湧き上がる興奮を抑えました」

男なら誰しもわかるなその感じ。ところでなんかこの話エロくないか?

「お佳代は半兵衛の死体を見ながらゴン助に再び感謝をしつつ、名前を問いました。投げ込んでくれたお金も彼がしてくれたものだと直感的に感じました。しかしゴン助はお佳代の質問にそっけなく『襲われていたのを助けただけで、金は自分ではない』と答えました。何度も執拗に問うお佳代でしたが、ゴン助はそっけなく言い返します。盗人である身分と、恋焦がれる自分の両方に悩んでいたのでしょう。結局何も言えず、半兵衛の死体を担いで川にいきました」

ゴン助、本当は言いたいのに、男だね。

「ゴン助は半兵衛の死体を夜の内に川辺に流すと、何も言わずにお佳代の元を去っていきました。しかし翌日、河の手にあがった半兵衛の死体を役人が見つけてしまい。凶器の短刀と長屋の血の跡から、犯人はお佳代ということになってしまいました」

冤罪だな…。

「お佳代は奉行所の白州に出されましたが、何を聞かれても何も言いませんでした。縄目にあいながらも、助けてくれたゴン助の事をかばっていたのです」

健気だなぁ…。

「ゴン助はそのことも知らずに、いつもどおりの『お勤め』をしていました。金をもってまた影ながらお佳代を助けよう、そうすれば何時の日かお佳代に告白できる日がくるさ、それまでは我慢するんだと自分を言い聞かせていました。そして、その頃、奉行所で裁きを受けるお佳代の罪が決まりました。3両以上の盗みと半兵衛を殺した殺人の罪で張り付けの極刑、死罪です」

ああああああ…

「ゴン助がお佳代の処刑に気づいたのは、処刑当日の朝でした。ゴン助は今まで盗んだ金を全て風呂敷にいれると、刑場まで急ぎました。遠い刑場まで、ひたすら思い荷物を持って走るゴン助の額から流れる汗は、そのうち枯れ。不安定な砂利道に何度も躓き、すでに草履は剥ぎ取られ、裸足で砂利を走るゴン助の足はいたるところ流血していました。しかしゴン助は走りました。まだ自分の名も心も告げていない女のもとへ」

……。

「ゴン助がついに刑場にくると、十字の張り付け台にくくりつけられたお佳代の姿がそこにありました。ゴン助は倒れながら顔を向けて言いました『盗みも殺しも、私がやりました!その娘につみはありません!裁くならどうか私を!』と」

…。

「奉行が驚いた目で立ち上がり、張り付けになっているお佳代に言いました。『あの男の話。本当か?』と」



「しかしお佳代は首を横に振りこう言いました。『会った事も、見たこともない男です。どこぞの遊女と間違えているか、どうせ私のやったことを愚かにも笑いに来た偏屈なやつでしょうよ』と」

…ああ…!

「奉行は訝しげにお佳代を見ていたが、表情も変えず胸を張って言うお佳代の態度は嘘をついているようには思えませんでした。何度も大声を張り上げるゴン助でしたが、ついに声は届かず。お佳代は処刑されてしまいました」

…なんという不運。

「ゴン助は川原に手を何度もうちつけて泣きました。自分の優しさのせいで好きな女が死ぬ。悔しくて悔しくて、皮が破れ、血が出て、風呂敷に包んだ金があたりにばら撒かれても、ゴン助は一度も顔をあげることなく泣きました」

…無念としか言いようがないな。

「ゴン助は刑場の近くにあった綺麗な花を見て、お佳代の事を思い出し。亡骸の近くに小さな墓をたててやりました。花をそえて、小石を積み上げて、ゴン助は何度も何度も謝って拝みました。生前のお佳代を憎み、その墓を倒す人もいましたが、ゴン助は毎日同じ所に来ては墓を建て直し、泣いて謝るしかありませんでした」

………

「その3年後、ゴン助は盗人家業から足を洗って、町で立派に飾り職の職人家業を始めました。ゴン助は手先が器用でしたからメキメキと腕をあげ、街一番の飾り職人となりました。その一生懸命さから、器量良しの娘との縁談もありましたが、ゴン助は全て断りました。お佳代の影が見えたからかもしれません」

…えらくなったな

「そして四十を迎えたゴン助は、町に捨てられた赤ん坊を養子に迎えました。赤ん坊は女の子でした。ゴン助は、血色良く色艶が整ったその赤ん坊と添えられた艶やかな産布を見て、この赤ん坊に名をつけました。『お佳代』と…」



パチ…パチパチ

「おやおや、子ども達は、とうに居ないのに大人が拍手をしちゃあいけませんよ」

「いや良かったよ。ゴン助。心にしみる話だった」

「そりゃいけませんね。心にしみるなんてのは古傷のある人の言い方ですよ。もしかしてお客さんはすねに傷持つ人なのかい?」

「昔ちょっとね…どうだい、種になるかどうかはわからないが、俺の話を聞いてくれないか?」

「そりゃ結構。私も話は大好きでね。どうです?酒でも酌み交わしながら」

「いいねえ…ゴン助の話の続きを聞こうじゃないか」


こうしてひょんなことで出会った紙芝居屋と俺は
寒空の中、赤提灯を目指して歩き始めた…。






短編:『ゴン助』完













=====あとがき=======

最初は童話のゴン狐の現代版を書きたかったのですが、
救われないはずのゴンが助かって生き延びちゃったり
嫌な気分になる最期の部分をちょい幸せで終わらせたりと
いつの間にか、ごんぎつね+大岡越前+メロスという
感じになってしまいました。

原作のゴンぎつねの主人公に撃たれて死ぬのは
最期の火縄銃の演出と供になんとも切ないです…

しかし時代者は筆が進みますな!
あと5時間で6本!?そんなの関係ねえ!

短編:『孤高の者』

2008年01月03日 10時40分31秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

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短編:『孤高の者』

静けさに包まれた住宅地の真ん中を、列車がガタンゴトンと音を立てて走る。
我輩は冷たい電柱に横たわりながら、遠くから聞こえる人間の笑い声、
幸せそうな家族団欒の声、とても幸せそうだ。
我輩は寒空の中、電柱は寒すぎると思い、ある場所に向かった。
二階建てのボロい安アパートの近くにある、ダンボールの置かれている場所だ。

ボロアパートの中から人間の「寒い」「寒い」という声が聞こえる。
何を言っているのだ、我輩よりも厚い毛皮をかぶり、
我輩よりも毛深い帽子をかぶり、毛皮の中には温いカイロとかいうものをつけて、
彼等の部屋は入ったことはないが、我輩の仲間から聞くに『エアコン』とか、『ストーブ』とかいうものでまるで夏のような暖かさらしいじゃないか。
それを何が言うに事欠いて寒いだ!まったく人間というものは贅沢だな!

ダンボールの場所まで行くのには少し時間がかかった。
我輩が年老いてるせいもあるが、とにかく外が寒すぎた。
我輩の茶色と白色の手足はかじかみ、目の前は霞みがかって見えやしない。
道路は冷気で冷たく、たまに出会う人間達の吐く息は白く、白く…
うん?雪が降ってきたのか、どうりで寒いはずだ、まったく寒い。
目印となっている光を出す街頭のライトも今日ばかりは弱弱しく感じる。

そうか冬だ。冬が来たのか。
我輩の最も嫌いな冬が来たのだ。

ダンボール置き場まで向かうと先客が居た。
三丁目で幅を利かせているタマとか言う奴だ。

「おいじいさん!タマさんの縄張りになんのようだ!」

「最近の若者は口の聞き方を知らんな。いつからここはお前さんがたの縄張りになったんじゃ。我輩は五丁目の頭目、キャッティさんの紹介でここをしきっている者だが…」

キャッティというのは白黒のデカい体をもつ野良猫のボスみたいな奴で
強さにおいて右の者なしといわれ、この町の頭目のような存在であった。
我輩はそのキャッティに一目置かれた老猫であり、猫界の影響力も強かった。

「な、なんだとジジイ!あのキャッティさんの…ど、どうしますタマさん!」

「ケッ、キャッティだと?かまうめえ。おいジイさん、よく覚えておきな、この俺がここら一帯の次期ボスになるタマよ。今のうちに尻尾をふっておくんだな」

「お前さんが次期ボス?」

あたりをしきっているボス猫には逆らわないのが猫界の掟、
その掟を破りたかったら力で破るのがボス猫としての資格である。
だがキャッティは子分たちの面倒見もよく、力においてはここら一帯の
野良どもが五、六匹かかっても負けるはずはない。
最近はルールも守れない若い野良達が出てきて、まったく困ったもんだ。

「若い時には無茶を言うもんだ。今の話は聞かなかった事にしよう。さあ、キャッティさんの耳に入らないうちにそこを退くんだお若いの」

「だまれジジイ!」

そういうとタマは血相をかえて我輩に飛び掛ってきた。
我輩はこういう時、ケンカをしない。
弱い自分の老体がいくら頑張っても若い肉体には負ける。
勝てないケンカをすることの無意味さを知っているからだ。
ただ、逃げるのは性に会わない。
だから相手をジッと見つめて仁王立ちをする。
そうすることによって、相手に無言の抵抗をしかけるのだ。

簡単なことだ。
背筋をピンと立たせ岩のように動かない事と、
痛みに耐えるくらい強い意思さえあれば、なんてことはない。
ようは我慢比べだ。
だいたい勝手に相手が、うんともすんとも言わない我輩を
なぶるのに飽きてそこから居なくなってしまう。

「ケッ!じじいのくせにでしゃばりやがって!おまえら行くぞ!」

「へ、へい…」

終わったか。タマたちは捨て台詞を吐いてどこかへいってしまった。
若い者は力はあるが、大人の猫のように殺すほどの執拗さがたりないから、
痛めつけ方も半端で、残る痛みも瞬間的なものが多くて楽でいい。


いつもどおり、我慢比べに勝った我輩は、
さっきまでタマが座っていて温さが残るダンボールへとヨロヨロと
おぼつかない足取りでよじ登り、乱れた毛の毛繕いと傷ついた傷口を
一生懸命なめまわした。

深くはない傷だが、ところどころ噛まれたり爪で切り裂かれたりして
やはり冬場に老体の体に鞭を打って傷口をなめるのは意思がゆらぐほど痛い。

ダンボール置き場の上には屋根がついており、雪をはけるにもちょうどいい。
今晩はここで一夜を明かそう。

「今日も随分やられたね。大丈夫かい?」

なめている最中に聞いたような野良の声。
誰かと思ってみてみたら、ボス猫のキャッティじゃないか。

「我輩は丈夫である。キャッティさんこそこの寒空の中どうしたのかね」

「いや、君が三丁目のタマの連中にやられていることを知らせてくれた猫が居てね。駆けつけたんだが…どうやらすでに終わっていたみたいだね」

「若い者はすぐ暴力に走る。話しをしようとしてもすぐこれだから困る」

「ははは、君の生き方は気高くて孤高だからね。きっと嫉妬を買ったんだろう。同じ猫としてそうありたいと思うよ」

そういうとキャッティさんはダンボールの上にのぼって
どこから持ってきたかわからないが、秋刀魚の肉と骨のついた
人間たちの食べ残しを我輩に差し出した。

「いつもすまないねキャッティさん」

「いやいいんだ。君のような存在がいてくれるから、この町内の猫達も立派に野良をやっているんだよ」

「そういわれると我輩も少し照れるな」

「隣、いいかい?」

「どうぞどうぞ、我輩も傷口の痛みに少々嫌気がさしていたところだ。話し相手がいたほうがいい」

ズムリ…平たく積まれたダンボールの上にキャッティさんが乗ると
やはり普通の野良よりも重たいらしく、ダンボールは沈んでいく。
キャッティさんは雪のふる空を見上げて、まるで「食べろよ」と
いわんばかりに秋刀魚を我輩に向けてくる。

「空が綺麗だからかな?人間達の食べ残しも豪勢だよ」

「我輩のように長年生きているとわかるが、今日は人間たちの特別な日のようだ」

「特別な日?」

「道端で聞いたが、どこかの偉い人間の誕生日らしい」

「偉い人の誕生日か…へえ、その人は何をやったの?」

「さあ…そこまではわからないが、とにかく人間達はこの日になるとどこでも楽しそうに振舞うな」

「人間達に幸せでも、僕達には幸せな日かな?」

「幸せだな」

「どうして?」

「我輩たちの食い扶持が豪華になる」

「そりゃいいや」

我輩はキャッティの持ってきた物には一切手をつけずにいた。
気を使っているわけではない、最近歳のせいか食欲が余り無いのだ。
キャッティはそれを知らずかまた「食べないの?」といわんばかりに
我輩を見つめる。

我輩は「キャッティさんが食べればいい」と一言言って秋刀魚を彼に差し出した。

キャッティはなんとなく気まずそうに秋刀魚をガツガツと食べた。
彼はお腹がすいていたのに、自分の分をさしおいて我輩に餌を持ってきたのか。

不思議なものだ。
この猫の世界に年功序列の掟は無いというのに、
なぜ我輩のようなひ弱な老猫に、キャッティは目をかけてくれるのだろうか。
野良として同胞がどんどん死ぬ中、生きていくのも大変なのに
キャッティは率先して我輩に施しを持ってくる。

「どうしてキャッティさんは、我輩のような老猫に良くしてくれるのだ?」

我輩は、ついにその不思議を質問にして彼に投げかけた。

「どうして?君のような孤高の者になりたいからさ」

「孤高?」

キャッティは一度、我輩の顔を見るとキッと整った眉毛をひそめ
ピンッと張った白いヒゲを鼻を使ってピクピクと動かし、
再び雪の降る空を見上げた。

「君は孤高だよ。初めて僕がこの町内に入って君に会った日の事は覚えているかい?君は二丁目の野良にやられて傷だらけだったが、誰に情けをかけられるでもなく、立派に堂々と歩いていた」

「あの頃は若かったし、ただ負けて悔しかっただけさ」

「それに君は人間から餌をもらわないね。多くの野良達が人間達の甘い餌に釣られて食べてしまうというのに、あくまで自分が探し出して持ってきた物だけを食べる」

「空腹で目の前に餌をぶらさげられても気づかない愚か者さ」

「そして君は群れない。僕のように多くの野良達を統括することも、さして親しい友達も作らず、孤独に一人で、群れないで生きていられる。僕ならその孤高に耐えられないだろう」

「年寄り猫にひっついても何の利益もない事を良く知っているからさ。キャッティさんのように人気もあって強い野良にはなれないよ」


キャッティは空を見上げならがら首を横に振った。


「僕は強くなんかないよ」


我輩はキャッティの言っている意味がよくわからなかった。
ただ野良に生きて、ただ野良に死ぬ。
それのどこが強いのだろうか。

我輩はキャッティと話す中、急に眠くなる自分の体に耐えられず
思わず寝てしまった。


「おや、寝てしまったのかい。じゃあ僕も失礼するよ…」



寒い、寒い。
長い、長い。
そんな夜が明けた。
青々とした空に我輩は浮き上がっていく感じがした。
遠くに見える雲の切れ目の前でキャッティさんの声が聞こえた。


「最期まで孤高の者だったね…君は」


泣きはらしたようなキャッティさんの顔を見て、
我輩は満足そうな顔を浮かべて雲の遠く遠くへと飛んでいった―




短編:『孤高の者』完












======あとがき======

はい、というわけで動物もの。
元ネタは去年自分の家近くであった野良猫死亡騒動あたりかな?

※名前の由来
主人公=我輩は猫である、名前はまだ無い。
タマ=いわずと知れた三丁目の主
キャッティ=太った猫=ボトムズのファッティーを思い浮かべた

オリジナルストーリーでファンタジー色をだしたかったので
ちょっとした野良猫の話を一つしたかっただけさ!
やっぱりオチが弱いな。

さあ!あと7本!え!?七本も!?

文字怖いよー

2008年01月02日 23時46分34秒 | 末路話
IYAAAAA@kirekoです。


>文字怖いよ

この数時間で文字が凄く嫌いになったので、他の人の文字を見て楽しくなろうと思います


残り時間…17時間…ドクンッドクンッ!


>kirihitoりん

安井健太郎・・・?誰だか知らないがプロなのか?
まあプロに似てるってのは嬉しい事でもあり、
逆にいえば俺がまだまだ戦闘シーンについて甘いということだろうな。
だいたいの戦闘シーンは、想像して文字化するのが苦手だから
漫画ベルセルクの動きを参考に、読者の想像にお任せ風だわ。
とにかくそれよりも今は・・・短編!!

短編:死亡フラグ村

2008年01月02日 23時28分28秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

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短編:『死亡フラグ村』

とある山村で事件が起こった!
まるで何かに取りつかれるように連続的におこる殺人事件!
村の人々は恐れて一つの集会場に集まった
が、なんと犯人は村人の中にいるかもしれないという
情報が村長によって言い放たれた。

誰が犯人なのやらわからず、すでにこの集会場に忍び込んでるかもしれない。
村人たちの精神は常軌を逸した。
もともとこの村は精神的に弱い人間達が多く
小さなショックでも心臓麻痺で死んでしまうほど
こういう特殊な条件下では死亡事例が多かった。


「俺、この事件が終わったらこいつ(恋人の写真を見ながら)と結婚するんだ」
いきなり写真を見つめながらビリーが死んだ。
どうやら犯人はやはりこの集会場に忍び込んだようだ。

「ゴーストだと!?んなもんこの世に存在しやしねえんだよ!」
ビリーが殺された後、宗教家のバーバが叫んだで死んだ。
窓枠に手を触れた瞬間、階段から転げ落ちて死んだようだ。

「うわあ!殺人鬼と一緒の部屋にいられるかよ!!俺は自分の部屋に帰るぜ!!!」
バーバが殺されたところで飛行機のパイロットだったジョンが部屋に帰った。
数分後、沈黙するジョンの部屋を見に行った数人が彼の死体を発見した。

「ここは俺に任せて、お前は先を急げ! なーに、すぐにでも追いつくからさ・・・。行け!」
ジョンの死に気が動転した床屋のポピンスは何かに駆られるように
村人を外へ誘導させて自分だけが集会場に残って無駄に死んだ。

「帰ったら、みんなで一緒にうまい酒でも飲もう」
山道を歩く過程で、酒屋のフレッドが陽気に自分だけの酒を出して
スキットルを飲んで酔ったとたんに山から転げ落ちて死んだ。

「俺達、お似合いのカップルだよな?」
「そうね、帰ったら高いダイヤモンドの指輪かってよね」
逃げる最中に告白などしてたディランとブレンダが
抱き合っているところの岩が急に落ちて足を滑らせて死んだ。

「大丈夫、俺なら死なねえから先いってろ! 」
狩猟動物用の罠にかかって足を怪我したマイクが村人達に叫んだ。
次の瞬間大岩がマイクの体にかぶさるように落ちてきて死んだ。

「で、出口だ!!さっさとこんなとこからオサラバしようぜ!!」
ジェイジェイが山道の終わりが見えたのか皆に陽気に振舞うが
ジェイジェイの向かった先は高圧電流が流れておりジェイジェイは死んだ。

「様子を見てくる。お前たちは残れ」
よせばいいのに村長の息子のアドルフがジェイジェイを追っていった
もちろん、ジェイジェイと供に高圧電流に触れて死んだ。

「イヤァ!私は死にたくないの!こないで!!!」
アドルフの死に、山をこだまさせるジャンヌの声が聞こえた。
しかし狼の群れに声を聞かれて、ジャンヌは食い殺された。

「俺一人ならここを突破できる!」
「だから先に行っててくれ!」
「必ず脱出してみせる。」
「無事に逃げられたら二人で静かな場所で暮らそう。」
ウェイン、アルフ、ウッド、ラインの仲良し四人組が狼の群れに飛び込んだ。
狼は去ったが、全員仲良く食い殺された。

「みろジャック!こいつはここまでの人間だ! 」
ジャックの恋人のメイが泣き出して動かなかったためアントニーが侮辱した。
アントニーはジャックの手斧にかかって死んだ。

「貴様何故生きている!?完全に倒したはず・・・」
ジャックはそういうと、息を引き取ったはずのアントニーを見た。
彼の目はまるで野獣のような口と爪でジャックを引き裂いた。

「いいかここを動くなよ。5分たってもおれがここに来なかったら、ここから逃げるんだ。」
アントニーの豹変振りを見ていたジャックの友人メリックが
アントニーの後を追った。…そしてジャックの後も追った。

「お、お前・・・まさか・・・・うわあああああああああああああああああ」
メリックの弟マリックがカードで遊んでいるところに
アントニーの毒牙が再び襲い掛かる!猟銃で抵抗したがマリックは死んだ。

「ちくしょう、遭難しちまった。とりあえず今日はこの山小屋で一晩過ごそう」
登山家のナッシュは一足早く村人をつれて山小屋に入った。
しかし、ナッシュが入ると山小屋が爆発してナッシュは非業の死を遂げた。

「勇者達は逃げ出した!しかしまわり込まれてしまった!」
お得意のRPGの台詞を使いながらヘレンは、文字通り
死に際のアントニーの毒牙に回り込まれて死んだ。

「お前はもう死んでいる・・・」
北斗七星の横の星が見えたショックでバレリーは死んだ。

「明日テストだけど何にも勉強してないや。」
のんきなこといってた農家の息子ギリアムは
来週の通信簿返却の事を思うと精神的に辛すぎて死んだ。

「おい!動けよ!動けって!!」
ギリアムの友人のボブは死んだフリじゃないかと思ってギリアムを起こすが
ボブも来週の通信簿のことを思い出して死んだ。

「私はソ連に亡命する」
険しい山道を帰りはじめたビレースコフは
国際政治の荒波の中にいる自分を想像して死んだ。

「謀ったなシャア」
ガルマは山道を登りながら気持ち的に
ホワイトベースにガウで突っ込んで死んだ。

「おまえともっと早く会いたかったよ。」
最期の台詞をメリッサに吐きながらピーターは
山道を車椅子を押されながら老衰で死んだ。

「帰ってきたら豪勢な夕飯を奢れよ!」
小太りのコスギが山道を登る途中で心筋梗塞で死んだ。

「お、俺はただ幸せになりたかっただけなのにーー!!!!うわぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁああああああああああああ」
御曹司だったはずのインペラは金持ちを夢見たあげくに
実は金持ちだったという己の不運を嘆いて山道から落ちて死んだ。

「ねんがんのアイスソードを手に入れたぞ!」
わけのわからないことをいいながら剣を片手に
聖戦士のガラハドは夜盗に撲殺された。

「ブ、ブレーキが利かない!!!!」
電動車椅子のブレーキが壊れて、山道をすべりだいにして
老人マッサーカーが転落して死んだ。

「皆で一緒に帰ろう・・・・」
「絶対、みんなで帰ってこような!」
村長と村一番の長老のブラウがそういうと傷口に毒虫の毒が回り込んで
泡を吹きながらその場に倒れて死んだ。

「ビートマニアをしていて、ギャラリーに話しかけ始める」
盤の数の多さに死んだ。

「悪い、ちょっと先に行っててくれ…寄りたい所があるんだ」
スティーブは村人達と離れてなんとはなしに寄り道をすると、
その山道の外れにいた、いたちの群れに襲われて死んだ。

「ここがお前の墓場だ!」
ついに犯人か!?とっさに飛び出したエディーは散弾銃で
村人を狙おうとしたが、とっさに銃が暴発して死んだ。

「バイバイみんな!」
いきなり地雷を踏んでモールが死んだ。

「ヒャッハー!!ここは通さねぇぜ!!!」
「待て、話せば分かる。」
「問答無用!」
エディーの仲間のバンとモクが悪徳商人のマックスを撃ち殺した
だが、その後分け前の問題で争いが起きて二人とも銃を撃って死んだ。

「ん? おい、そこにだれかいるのか!」
山の頂上につくころには村人はすでに4人になっていたが
頂上にたどり着いた時、何かを発見したブランディは
何者かにナイフを突きつけられて死んだ。

「ばからしい俺は帰るぞ…つり橋が…切られてる………電話線も切られていた」
ライフラインの全てをたたれてゲイリーは死んだ。


「わかったのよ…この事件の犯人が!でも今は言えない…明日またここに来てくれるかしら?」
明日まで待てなかったのでヨーコは死んだ。

「でも私、本当にお兄ちゃんのことがすきだったよ!」
ヨーコの友人のメアリーは自分が犯人であると告白すると最後に残った
ヨーコの恋人のシェイドに向かって叫んだ。

「1・2・3で振り向いてズドンだ。1・2・・・・」
シェイドはなぜかメアリーと西部劇さながらの早うち大会を行った。

ズドン

「おめーならやると思ってたさ。」
メアリーのマグナムに撃たれてジェイドは死んだ。

「なぁ…俺たち、もっと別の出会い方をしてたら親友になれたかなぁ?」
ジェイドの最期の言葉を聞いてメアリーは銃を口に含み自殺した…。

村人は全滅した…

短編:『死亡フラグ村』完


=====あとがき====
二作目、もし死亡フラグだらけだったらを予想して書いてたけど
やっぱりストーリーにするのは難しいや。
参考にしたのはこの記事。
http://news4vip.livedoor.biz/archives/50503800.html

今から仮眠をとろうとおもいます・・・。

短編:もらうセールスマン

2008年01月02日 22時15分05秒 | 短編
≪読む前に注意≫
この物語はフィクションです。
実際に存在する団体名、役職名などは一切関係ありません。
描写に関してあえて端折ってる部分がありますが
そこは想像で保管してください。

===========================



短編『もらうセールスマン』

私の名前は喪白貰蔵。
私は人呼んでもらうセールスマン。
今日も今日とて白いスーツで、世間をひしめき歩いては
心のスキマが生じた人からスキマをもらうんです。
ええ?お金は一銭も頂きません。
この世は老いも若きも男も女も心の寂しいスキマだらけの人ばかりです。
今回のお客様は…


オーッホッホ…

T都 S区 十七本木ヒルズ

高層ビルやオフィス街の多いこの町で、一際目立つ建物がある。
そう、この春に改築された複合型豪華マンション十七本木ヒルズ。
60階あるマンションの一室に、一人の男が暮らしていた。

「社長が亡くなられた!?」

俺は専務から来た携帯電話をとると歓喜の声をあげた。
人が死んだというのにまったく不謹慎な奴と思われガチだが、
なんせ喜ばしい人が死んでくれたのだ。これほど喜ばしいこともあるまい。

「そうか、葬儀は二日後か…ああ、出席するよ…」

ピッ、ガチャン。

「やったあああああああ!!」

俺は思わず嬉しさのあまり、携帯を放り投げ、
嬉しさのあまり思わず空中にジャンプして三回転半!
ふかふかの超高級羽毛のベッドに寝転んで、
思わず飲みかけだった高級シャンパンのシャブリを口にくわえて
枕代わりにして昨日数えたばかりの札束の海へと飛び込んだ。

なんでこんなに喜んでいるのかというと
世界第二位のシェアを持つ自動車会社の前社長(現会長)の息子であるこの俺をさしおいて、整備工場のそれもバイトから入った職人上がりのバリバリワンマン社長だった、あのいけすかない野朗!売利真・来留男(53歳)がついにくたばりやがったんだ!

あの野朗、俺のパパが社長から退いて息子に受け渡そうって時に
役員を抱きこんで俺の変わりに社長に入りやがって、
しかも俺はちょうどその時、海を越えてアカプルコにバカンスで
一ヶ月ほど出張していて居ない間にあいつは社員たちの心まで奪いやがった。

おかげで俺は東京工場の工場長に左遷!
毎日、めんどくせえが部下に命令して、俺は自室でクソうまくもねえ
カステラと三流紅茶セットで暇な八時間労働を毎日もすることになりやがった!

この俺はこの大会社の御曹司なんだぞ!
こんなヒルズとは名ばかりの狭苦しい空間に閉じ込められて、
くだらねえ酒と、くだらねえ食い物と、くだらねえ女なんてものの3Kを
はべらせて、つまんねー暮らしをするのも飽き飽きだ!

はは!あの憎たらしい社長の野郎が死ねば
ホームレス一歩上の今の屑みてえな生活とおさらばできるぜ!

本場ビバリーヒルズにこの俺の新居を構えてやんよ!
もちろんそこには金髪のねーちゃんをはべらせて、極上の食事と
極上の金風呂に入って、82年もののシャトーブリアンで
極上の夜を明かすのさ!

二日後のあのクソ野郎の葬式さえすめば、この俺の極上生活が
今目の前にあるのも同じだぜへへへへへへへへへへへ!!

トントンッ!

「はっ?!なんだ!?俺様は今超ハッピーだから強盗とマフィア以外は誰でも入って良いぜ!」

「わたくしはセールスマンです」

「はっ!ケチくせえセールスマンたあ驚きだ!ほら今あけてやるからはいんな!」

ピッ…ガチャッ

オートロックが解除されて入ってきた奴。
白のスーツに如何わしい白の帽子。
ニヤッと白い歯を出しながら、こっちを見て大事そうなケースを
抱えてやってきやがる。
はっ、どうせここに住むクソ成金どもを相手にして
お高いツボでも売りに来たんだろう!
へっ、今日は世界一充実して気分がいいからな!
なんでもかってやるよ!さあいいな!セールスマン!

「わたくし、喪白貰蔵(モシロモラゾウ)と申します。ボランティアでこういうものをやっています」

「へえボランティア?うすぎたねえコゾウどもに金でもばらまけっていうのかい?」

貰蔵が差し出した名刺にはこう書いてあった。

「心のスキマもらいます…?」

「はい。これは現代に鬱屈するスキマだらけの人達を相手にやっているセールスでして、この部屋を通り過ぎる時、ちょっとスキマの匂いがしましてね…」

「ほう、この充実した俺に向かって心のスキマがあるっていうのかい」

「ええ、自分から見て充実でも、他の人から見ればスキマだらけ。そんなものですよ人間というものは」

このセールスマン、いちいち白い歯を見せてニカッと笑いやがる。
やけに話がうまいが新興宗教の誘いか?
ボランティアってのがきな臭いが、話のうまさにつれられて
こいつの話を聞いてやる事にした。

「では、心のスキマを貰いますよ」

「ああ!いいぜ!どんとやってくれ!」

「では…」

ドーン!!!

セールスマンの大声で俺はびびった!
思わず座ってた椅子から転げ落ちて、ペルシャ製の高級絨毯にふんぞりかえった。
今世紀最大のハッピーマンなのに、こんなびびりかた格好が悪いぜ!

「うげげー!お、おいセールスマン!今なにをやりやがった!」

「おまじないです、そろそろ効果が現れますよきっと。それでは私はこのへんで…」

ガチャッ

「な、なんだったんだあのセールスマン。言いたい事だけ言って帰りやがった!」

トゥルルル、トゥルルル

うっ、携帯電話…?なんだ誰かと思えば専務じゃないか…
何か急用でもあったのか?

ピッ

「おめでとうございます社長!役員会での買収の結果、あなた様が社長でございます」

「なんだと!よし!でかした!」

「それにもう一つ!前社長の遺族が自社株の11%を次期社長に譲りたいと!」

「おいおいこれ以上喜ばせないでくれよ!そりゃまじか!」

ついてるというか、もう今世紀最高のラッキーというべきか
驚くべき快進撃を続ける俺のラッキーぶりは止まるところを知らない
即本社復帰で、即社長就任、譲渡による即筆頭株主なんて
まったく世間様は俺の苦労をわかってるぜ!
へへっ、もしかしたらさっきのセールスマンのおまじないの効果か!?
だとしたらとんでもねえ運を俺は掴んじまったみたいだぜ!


ヒルズの外

「オーッホッホッ、これであの社長。スキマをなくしましたよ」


二日後 前社長葬儀

「惜しい人を亡くしました…」

ケッ、社員一同参加って感じか?
参列者はまるで悲しみにくれていやがるが、それにしても
葬式だってのに、にやける顔が抑えられないほど俺は運がいい。
この後は社長の座が待っている。

「では新社長よりご挨拶を…」

「ああ、俺の番か」

ガッ

俺はマイクをとると、得意の調子で声を張った。

「俺が新社長になったからにはお前らにも贅沢をさせてやろう!給料は五倍、ボーナスは八倍だ!これからも俺の会社のために頑張ってくれよ!」

いやー我ながらナイステンションアップ作戦!
まさに社員一丸となってが完成したわけだこれで!
あん?専務の野郎なんかいってるな?
まあかまうめえ、どうせ社長になったら仕事なんてしねーんだからな!



「心のスキマのなくなった彼はどうなるんでしょうねえ…」



一日目

ついに俺も社長だ!
まずは自前のカーゴから特別に高級なワインを用意して祝い酒だ!
それに秘書は美人で、仕事の出来るいわゆるキャリアウーマン。
おもしれえほど仕事を片付けてくれるぜ!

まっ、きつい仕事は部下と専務とこの秘書に任せて
俺は高級アイスを食べながら書類に是の判子を押し続ければいいわけだ。
まったく社長は簡単だぜ!


二日目

社長になって二日後。
いつもと変わらない楽しい一日の始まりだ!
社長になったからとりあえず、米のケンタッキー州の
全てのゴルフ場を社内株の売買で買ってみたぜ!

専務がおもしれえぐらいに悲鳴をあげてたが
かまうめえ!さっ、今から社内を見学して金でもばらまくか!
なんせ金はたんまりあまってるし、これからは湯水のごとく
わいてくるんだからな!

三日目

なんだかこの俺の生き方に文句を言いやがる輩とか
意見を言うえらそうな奴が増えてきたから
ガーガーわめく社員とその役員の半分を見せしめに解雇した!
ケッくだらねえ、この俺が社長だってのがまだわかんねえのかよ!
今日は美人秘書に300坪の豪邸を買ってやった。
たかだか10億ぽっちであんなに喜ぶなんざ、まだまだ甘いねぇ!


四日目

「ふざけんな!てめえら何様だ!」

取引先との会談があった。
なんだかしらねえけど英語でむちゃくちゃいいやがって
腹が立ったんで交渉決裂と言って全ての提携会社との縁を切った。
また専務がギャアギャアいってるので、専務を副社長待遇にしたら黙った。
断られた外人どもは、まだ顔を真っ赤にしてわけわからん英語で怒ってやがる
ケッ、ケツを蹴られて騒ぐ前に自分の頭を冷やしやがれってんだ!

その日の夜、なんだか専務が血相変えて電話してきた
「わが社の商品に欠陥が見つかった」だと?そんなことしるか!

五日目

「おい専務、疲れたから肩をもめ」

「は、はい社長」

相変わらず気合が入ってねえもみ方だが、他に社員がいないんじゃしかたない
うん?社員がいない?どういうことだ?

「専務、そういえば社員達はどうした。今日は金曜日だぞ」

「そ、それが…」

専務の野郎相変わらず顔色がさえねえ。
まったくこの俺の社長就任の日だってのに
なんだってそんな暗い顔をしやがるのか理解できねえぜ。

「社員が全員H田グループに引き抜かれてしまいました」

「な、なんだって!!」

H田グループといやあ業界最大手の自動車会社じゃねえか
くそあのやろうやりやがったな、まんまとうちの有能な社員を引き抜きやがって
まったくやってくれるぜ。

「それに…」

「なんだ!辛気くせえ顔しやがって」

「わが社の株価が暴落しています。どうやら先日の提携破棄による相場信頼の低下かと…」

「なんだと!じゃあ今の会社の株価はいくらだ!」

「…」

専務の奴だまりやがった、この俺をみくびりやがって!
おちるったって今持ってる株が1億か2億減るだけだろ!
ちょろいもんだぜ!そんな程度!

「…おそらく、価値にすれば同じ重さの紙以下でしょう…」

「な、なんだってー!」

オージーザス!
まじかよ!そりゃねえぜ!おい!
紙ってなに!?パルプ!?和紙工場でつくったあれのこと!?

「社長!」

おうなんだい俺のビーナス美人秘書!
なんかいい案でも考えたのならいってごらんよハニーボイス!
聞いてあげるぜニャンニャン声を!

「今日限りで辞めさせていただきます!」

オーゴッド!
おいおいそりゃねえぜマイブレストフレンド!
マイバンブーブレードウーマン!

「社長、これまでです。私もこれで辞めさせていただきます」

なああああにいいいいい!そりゃねえぜ専務よぉぉおぉお!
それじゃあ副社長待遇にした意味がねえじゃねえかよ!
けっ、じゃあいいぜ!俺は一人でも社長だ!
社長を貫いて見せるぜ!


二週間後 監獄


「社長さん。どうです?スキマの調子は」

豪華な秘書も、黙って従う専務も部下も、家具も何もない、
そんな誰も居なくなった鉄格子の社長室で白いセールスマンが現れた。

けっ、今頃なんだっていうんだ。俺は社長だ!
社長が社長で社長だからスキマなんてねえよ!

「ほほ、これはずいぶんスキマの無い生活ですね」

うるせーこの生活がスキマのない生活だと?
ふざけんな、今の俺は社長で、ここは俺の会社だ!
充実してないわけはないじゃないか!

「充実…?そうですか。社長という椅子がスキマの無い充実の証ですね。こりゃ結構。本当に充実している。金も女も酒も人間関係さえも超越した孤独の支配者。憧れますよ」

お前もそう思うだろセールスマンよ・・?
俺は金が欲しかったんじゃない、スキマのない生活がしたかったんだ。
ありがてえぜ、こんなにスキマの無い生活をくれたあんたに感謝したい。
何か欲しいもんはあるか?かといって贈れるものなんて何も無いが。

「いえいえ、もう十分に貰っていますよ。あなたの心のスキマ。つまり欲求という名のスキマをね…」

へへ、ありがてえ。実に楽しいぜ、俺からスキマを奪ったあんたは神様だ。



セールスマンは彼を見るとニィと笑い、格子のついたドアを眺めてその場を去った。





「人間の心のスキマというのは欲求から生まれます。ですが満たされない欲求が強い人からスキマを奪うのには、今まで辛いと感じた事を甘いと感じるように向けてやる事なんです。少しの幸せで最大に満ち足りたような感覚になり、それを生かせる場所を得ればスキマなんて生じるはずないですよねえ?でも心のスキマは、人生のある程度満ち足りない現実の不満を抑えるブレーキの役割でもあるんですよ。それを失った彼は、現実での幸せはスキマなのかもしれません。本当の意味でスキマの無い人間ですねぇ彼は…オーッホッホ」



『もらうセールスマン』完


====あとがき====

一作目でやることに時間がかかりすぎてオチが
微妙な事になってますがそこは勘弁してください
やりたかったのはもちろん笑うセールスマンのパロディです。
さあ怒涛の二作目いくぜ!