またまた、吉村昭である。
明治初頭の人々の人生は、歴史的にさほど有名人でなくとも、感動させるものが少なくない。
主人公の二宮忠八は日本の飛行機の生みの親と言われる実在した人物だ。もちろん、本書を読んで初めて、知ったのだが。
吉村昭はその人物を画くことで、時代を日本人を評する。前を向いて、己の信ずる処をひた向きに生きる傑出した人物なるも、知る人ぞ知るも、多くの人は知らない〰️。僕の知識を常識の基準にしているのだが…
司馬風に言えば時代は坂の上の雲であり、二宮その人も愛媛の出生である。
飛行器造りの情熱と日清戦争の激動の時代に生きた衛生兵の生き様でもある。さらに、製薬会社の黎明期も知ることができた。
500ページを超える長編だが、明治…その時代の逸話が多く挿入され、楽しく読ませてもらった。