大きな森の真ん中にある〈森の平和〉と名付けられたかつての狩猟の館は、こんにちホテル&レストランになっています。
施設の入り口 ・ ホテル
ホテルの本館 1 & 2
ハンブルクのほぼ真北約30㎞の所です。この建物はある船主のスタイリッシュな家屋として20世紀初頭に建てられ、現在でもその元々の小ぢんまり、上質、ロマンチックといった魅力を保持しているのです。
最高級ではないが高級ホテルが会員である〈ロマンティック・ホテル〉という組織に属するホテル本館、別館のゲストハウス、庭に点在する催し物を行うコテージから成る施設です。
ホテル と 庭 ・ 庭とコテージ
別館のゲストハウス
本館はディズニーランドにあるような可愛い建物です。レストランの一角がレセプションになっていて、中年おばさんがテキパキとチェックイン手続きをしてくれます。
私の部屋 ・ そのバスルーム
私の部屋は別館の一階ですので、重い荷物を階上に運ばなくてよかったのです。部屋は完全に現代的に改装しており、居心地を良くしようとする努力が感じられる設えです。狩猟の館らしく、電気スタンドの装飾や部屋のキーホルダーに鹿の角を使っています。
電気スタンドの一部 ・ キーホルダー
愛情を込めて、おもてなしの心でこの魅力的なホテルを運営しているのはジークムント・バイエルレという人物で、この人は昔ゲストとしてこのホテルに宿泊し、高貴な城と魅力的なコテージが庭に点在する物件に恋をしたそうです。それで彼は1982年にホテルを購入し、細部にまで細心の注意を払って改装しました。そしてこんにち、平和と静けさを求める人々だけでなく、クリエイティブな人々や愛好家によって利用されているのです。特に愛好家に人気の場所はホテル内のレストランです。ここでは地元産の新鮮な食材がシェフの想像力豊かな料理の基礎となっているそうです。
私が到着した時、結婚式のパーティーが開かれているようで、中庭とガラス張りのレストランホールで大勢の人がワイワイ騒いでいました。
レストランの入り口 ・ その内部
狩猟の館に相応しい装飾 ・ 私のテーブル
幾つかある小さな部屋のひとつで夕食をとったのですが、鹿の頭蓋骨と角を使った装飾とシャンデリアがあって "狩猟の館" の雰囲気がしっかり出ています。が、結婚パーティー客がうるさい上に、隣の席に8人の誕生パーティーグループが居て余計うるさいのです。私のテーブル担当の中年おばさんはしゃべり方がつっけんどんで冷たそうでしたが、時間が経つにつれて笑顔が見えるようになったし、真っ白なテーブルクロスと銀の食器を使っていて、このレストランのサーヴィスのレベルは結構高いと感じました。
さて、食事です。
ノンアルコールのヴァイツェンビールと前後して、パンひとつと香草入り凝乳 (牛乳を入れて軟らかくしたコテージチーズ)、そしてバターが出て来ました。ごく普通で、特筆することはありません。
ビールなど ・ 鶏の胸肉サラダ
前菜は"照り焼きソースをからめた鶏の胸肉とエキゾチックなドレッシングをかけたミックスサラダ"です。バルサミコ酢がかかった生野菜が新鮮でパキパキ。生野菜もなま温かい鶏肉もサラダとしてたいへん美味しくいただきました。
主菜は"ジュニパーソースとクランベリーで食べるピンク色に焼いたイノシシ肉の切り身と春野菜及びプンパーニッケル (ドイツ発祥の伝統的なライ麦パン) を使ったクラップフェン (揚げパン)"です。イノシシ肉は野趣を少し感じるけれども嫌な臭みはまったく無く、私の好みに良く焼いています。ソースを付けてクランベリーを載せるとたいへん旨いのです。季節の野菜 (緑と白のアスパラなど) に火は通っているのでしょうがシャキシャキパキパキの状態で食感抜群で味も良し。
イノシシ肉の料理 ・ ムース
そしてデザートが圧巻で、トレイに約10種類のデザートを載せて持って来て、それぞれ何であるか説明してくれるのです。2つ取っても良いと言ってくれましたが私はひとつだけ、細切れ果物と食用ホウズキが載ったレモン味のムースを選びました。軽くて美味しかった。
さらに、食後のエスプレッソにひと口菓子が3つ付いて来ました。
エスプレッソ と ひと口菓子
雰囲気、サーヴィス、料理の盛り付けと味全部が高いレベルで、久しぶりに満足度の高い夕食をとることが出来ました。
朝食会場 ・ 私の朝食
軽いジャズが流れる高級感のあるガラス張りの朝食会場です。ビュッフェで好きなものを選んで席に着くと、ジャムやヨーグルトや果物が載った2階建てのトレイが出て来ます。なかなか粋なサーヴィスですね。妙な形ですが機能的なティーポットは、昔の経験から私にはその使用方法が分かっていました。
ドイツのホテル業界には珍しく、このホテルには、掃除のおばさんを含めて、ドイツ人スタッフだけが勤務しているようです。そのスタッフが皆、ゲストに話しかけるときに称号 (Dr.など) 付きで名前を呼ぶのも印象的でした。超高級ホテルではないからか気取った所もないし、こちらも身構えなくていいから居心地が良く、また泊まりたくなるホテルです。
〔2024年2月〕