16世紀の末、ニーダーザクセン州の州都であるハノーファーから西南西の方向に45分走った所にシュヴェーデスドルフ城館は建造されました。城は建設されて以来フォン・ミュンヒハウゼン家によって個人所有されていて、EUの資金援助により重要な文化遺産として良好な状態に保たれています。城は母屋とそれに垂直に隣接する建物で構成されています。17世紀初めに六角形の階段塔が増築され、19世紀には木骨造りの上層階が拡張されました。城の西側にはエキゾチックな木々が生い茂る庭園があります。数年前まで、フォン・ミュンヒハウゼン男爵とその夫人が老後を過ごす居城として機能していました。
正面から ・ 向かって右から
向かって左から ・ 人が住んでいると思われる棟
2022年の中頃からシュヴェーデスドルフ城館が建つラウエナウ町では、個人投資家が城と付属の農場で建設プロジェクトを進めています。城を高齢者向けの宿泊施設を含む約90戸のアパートに、そして農場の跡地を便利さに重点を置いた約50戸の住宅にすることが計画されています。農場跡地の方にはすでに真新しい住宅が完成していますが、城の方にはまだ大きな変化は見当たりません。ただ、郵便受けが4つあるので誰か住んでいるのだと思われます。
門 と 農場後に建てられた住宅の一部
さて、日曜日の午後の散歩がてらにシュヴェーデスドルフ城を訪れて、夜は家の近くのレストランで夕食を食べました。"ハントヴェルク (手工芸品)"という名の、ミシュラン一つ星を持つカジュアルな高級レストランです。
入り口 ・ オープンキッチン
まず驚いたのは、サーヴィススタッフが客とため口で話すことです。相手と対等の立場でものを言うのは気取らなくて感じが良い、と言う意見もありましょうが、〈高級レストラン〉であるならばホストと客という役割をしっかり果たしてもらいたい。「高価な食事をしに行く」というのは、大抵の客にとって「晴れ」な出来事なのですから。さらに、言葉使いに呼応するようにサーヴィスが雑で、グラスやナイフやフォークを置くのが荒っぽいのです。テーブルクロスがかかっていないテーブルだし、ふと奥の方に目をやると床の掃除をしているのが見えます。狭い空間と相まって、何とも居心地が悪いのです。まあ、日本の真似をしておしぼりが出て来たのはポジティブな点かな。
テーブルセッティング と おしぼり
飲み物に関しては高級レストランでよく見られる〈ワイン旅行〉という“作法“で、それぞれの料理に合ったワインをひとグラスずつ供するのです。我々はアルコールを飲めないので、ワインの代わりに色々な種類のジュースにしてもらいました。ジュースは全体として濃すぎて甘すぎました。
最初に出て来たのは、いわゆる突き出し3種盛りです。
(左) キュウリ + 天ぷら (天かす) + ベアラオハ (西洋の行者ニンニク)
(真中) コルネット (イタリア版クロワッサン) + 牛肉のタルタルステーキ + マスのキャビア
(右) サブレー (ビスケットの一種) + ザワークラウト (キャベツの塩漬け) + ディル (ハーブの一種)
左のそれの味はまあまあですが、スターターとしては結構。しかしながら、単なる天かすを天ぷらと名付けているのは、本物の天ぷらを知らない人に誤解を招きますね。真ん中のは少々塩辛いけれど美味い。右のはディルの香りが良かったのです。
帆立貝 + アスパラガス + かぼちゃの種
帆立貝の表面がカリカリで美味しい。
サワー種を使ったパン + 赤キャベツのクリーム ・ カレーとみかんジュース
パンは柔らかくて少し酸味があって美味しく、クリームとよく合います。
チコリ + セイヨウスグリ + ヘーゼルナッツ ・ レッドビートジュース
チコリの食感が良く、全体のバランスが素晴らしい。
スクレイ (天然タラ) + レッドビート + シソ ・ セイヨウニワトコジュース
赤色が鮮やかで美しく、スクライの蒸し加減が絶妙です。レッドビートの甘酸っぱさと赤シソの味が結構です。
アミガサタケ + 豆 + 茶色バター
塩気が多く、特にアミガサタケの香りと味が濃厚過ぎます。
ここでメニューのグレードアップが出来るという事なので、一品とドリンクを追加してもらいました。
ドリンクはごく普通のノンアルコールワインです。
アルコールフリーワイン ・ 黒トリュフ + ブリオッシュ (菓子パンの1種) + パルメザンチーズ
料理は、ブリオッシュの上にパルメザンチーズを敷いてたくさんの黒トリュフを載せています。残念ながら黒トリュフ自体には味も香りもないのですが、その下がたいへん美味しかったのです。
シャーベット + 粉砂糖 ・ 白色トマトの芯ジュース
出し方が面白い口直しですね。
牛肉 + セロリ + ラベージ (ハーブの一種) ・ 赤色リンゴ ジュース
肉は私には焼き方が足りないし、牛肉の旨さがないのにがっかりです。緑色にコーティングした食材が、食感も味も面白い。
鶏肉 + ジャガイモ + 玉ねぎ
鶏肉料理は全体的に塩辛くて味がどぎつい。残念。
サワークリーム + オリーヴ + パセリ ・ セイヨウスモモジュース
緑色が鮮やかな面白い組合わせです。オリーヴの香りと味、サワークリームのフッとした甘さが良い。
リンゴ + トフィー (菓子の一種) + クルミ
少しクルミが多すぎるデザートです。
? と マカロン
勘定書といっしょに出たお菓子ですが、左のは何だか分かりません。どちらも甘すぎます。
ミシュラン一つ星なので期待していましたが、残念な気持ちでレストランを後にしました。一つ星レストランが玉石混合なのは経験から知っていました。今回は石でした。
〔2024年4月〕