バイエルン地方の中堅都市アウグスブルクで講演をするのに長距離なので列車で行くのですが、この国の鉄道は運休や遅延がよくあるので一日前に行って駅のすぐ近くのホテルに泊まりました。〈古い公園のそばのホテル〉という名前のホテルです。キリスト教会が運営している施設で、このホテルの他に病院、小さな公園、老人ホームなどがあります。同じくこの施設に属するレストラン・バー・ラウンジで夕食をとりました。モダンで殺風景な建物ですが、優しそうな笑顔が魅力的な若おばさんのサーヴィスで心が和みます。裏の入り口が病院の入り口と向かい合わせになっているので、入院患者らしきお客さんもいます。鼻に管を差して体に袋を下げた人、何らかの器械を体に付けた人、車椅子の老人を囲んだグループ、、、、。
宿泊客はここで食事をすると飲み物が一杯無料ということで、いつものようにアルコール無しのヴァイツェンビールをもらいました。
ビール ・ サラダ
前菜として、メインディッシュに付ける小サラダを頼んで細かく刻んだルッコラを混ぜている辛子ドレッシングをかけてもらいました。おだやかな味で美味しい。野菜が新鮮だし、キュウリの酢漬けや赤かぶもあります。
牛肉薄切り巻き
主菜は典型的ドイツ料理である牛肉薄切り巻きです。ベーコンとタマネギと酢漬けのキュウリを薄切りした牛肉に巻いて煮込んであります。付け合せは煮た紫キャベツとシュペッツレ(小麦粉で作ったヌードルを塩ゆでした家庭料理)です。普通ドイツ料理は味が濃くて塩辛く主張が強いのですが、この料理のソースは見た目と違って穏やかで柔らかな味です。紫キャベツの煮たのんもフワッとした味で旨い。シュペッツレはいつもねっとりしていて重いからあまり好きではないのですが、今日のは口当たりがサクッとしていて軽いのです。どうしたらこのようなシュペッツレが出来るのでしょうか。純粋ドイツ料理をこんなに美味しく食べたのは本当に久しぶりです。
二日目は講演会の主催者が予約してくれた〈ホテル・イル・グラディアトーレ〉に移動しました。〈グラディエーター〉というのはホテルの名前としてはかわっていますね。ホテルは約10年前に開業したのですが、そのベネチア様式の建物はある自動車部品の製造会社所有の別荘として19世紀の後半に建てられました。
イル・グラディアトーレ 1 & 2
イル・グラディアトーレ 3 ・ 入り口
切符売り場のようなレセプションが面白いですね。
レセプション ・ 私の部屋の前のフロア
内装にも家具類にも高い格調が感じられます。
私の部屋
今夜の夕食は講演会の主催者と会食なので取材はしません。それで、ホテルのレストランで昼食をとりました。
レストラン ・ 私の席
レストランはエレガントな内装の空間です。スタッフはみんなイタリア人なので、少し雑かな? と思うくらいイタリア風に気さくなサーヴィスなのです。私も気を張らなくて済みます。飲み物は例によってアルコールフリーのビールで、料理は〈今月の特別料理〉の中から選びました。
カボチャスープ
前菜は砕いた栗が入っているカボチャスープ。季節感満載の料理です。美味しい。どこがどうとは言えないけれども、ドイツの味付けとは違います。
続いて、久しぶりにピザを食べました。ア・ラ・カルボナーラというピザです。日本ではピザを食べたことが無いのでわかりませんが、日本のは少し小さめかな? ここのピザは直径32cmあり、この国では普通です。生地が薄くて香ばしく、ソーセージ、卵、そしてクリームとパルメザンチーズを焼きこんであります。でも前菜と違って季節感がまったくありませんね。味も私の好みではありません。他のにすればよかった。ところで私はピザを食べるとき、周囲のふちを残します。行儀が悪い、と妻にはいつも怒られますが、上に何ものっていなくて美味しくないし、出来るだけカロリーの摂取量を少なくする手段なのです。
ピザ ・ ピザの残り
さすがイタリアンレストランのエスプレッソは美味しいですね。
エスプレッソ ・ 朝食
朝食は夕食と同じレストランでとります。暖かい料理も生野菜もありません。その他は普通です。給仕のイタリアおばさんもやはり気さくです。他のホテルなら、たぶん
「もっとお飲み物はいかがですか?」
と言うところを、
「まだなんか飲む?」
ですからね。
かといって、客である私を軽くあしらっているのではないことはわかります。こちらも気楽でいいのです。
〔2018年11月〕〔2024年6月 加筆・修正〕