センター試験国語(現代文)を極めたい!

センター試験国語の法則を解き明かすのが目標です(『ヘタレ競輪王のトホホ日記』のエントリも恥の記録として残しておきます)。

【解説】2011年 本試験 問題1『身ぶりの消失』(鷲田清一) 問3

2012-01-05 12:38:07 | センター試験 国語

問3

 「空間がそこでおこなわれるだろうことに対して先回りしてしまってはいけない」という「青木氏」が下した判断について、その理由を問う問題。

 高橋義三先生によると、

(判断の)「理由」とは、判断の対象についての認識のことである。

とのこと(細かい用語が少し違うのかも知れませんが)。

 「リンゴは嫌いだ」とAさんが判断を下した場合、Aさんがリンゴを嫌いだと判断する「理由」は、

Aさんにとっての「リンゴ」の属性

すなわち、

Aさんの「リンゴ」についての認識

の中にしかない、ということである。

 従って、この問題の場合も、まず傍線B「空間がそこで行われるだろうことに対して先回りしてしまってはいけない」を、


そこで行われるだろうことに対して先回りしてしまっているような空間は、だめである。

と変形し、しかる後に

〈そこで行われるだろうことに対して先回りしてしまっているような空間〉についての「青木氏」の認識とはどのようなものか?

という問題意識を持って文章に当たることになる。

・そこで行われるだろうことに対して先回りしてしまっている空間
||
・〈初めから何をするかが決まっている空間〉
||
・「遊園地」

であるのは明白である。従って、この時点で①、②は正解でない

 また、

・「遊園地」=「原っぱ」のようでない空間

でもあるので、「原っぱ」に関する記述も追っておく。

 すると、

原っぱでは、……。そこでは、たまたま居合わせた子どもたちの行為の糸がたがいに絡まりあい、縒りあわされるなかで空間の「中身」が形をもちはじめる

とあり、これは、

・そこで行われるだろうことがあらかじめ分かっていない

・たまたま居合わせた子どもたちの行為が組み合わさる

・空間の「中身」ができる

と整理できる。そして、このようにならないのが「遊園地」である。以上より、解は

 なお、「遊園地」、「原っぱ」という例は〈空間の「中身」〉に関する例であり、空間を利用する人に関する例ではないので、空間を利用する人の「主体性」や「興味」について述べた③、⑤は不適である。これらのように、文中で言及されていない論点について述べた誤答選択肢は数多い(当 blog では、このパターンを〔言及なき論点〕と呼ぶことにする)。


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2 コメント

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おみごと! (Yoshizo_Takahashi)
2012-01-07 21:45:42
見事な「変形」です。インパクトのある切込みだと感じました。

{空間が行為に先回りすること}は{いけない}と変形して、解析型に持ち込んでもいいかもしれませんね。

どこかで生徒たちを仰天させる裏打ちのある工夫が、特に国語関係指導者には強く求められているような気がします。

期待しています。

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コメントありがとうございます! (競輪王)
2012-01-08 14:09:03
 「理由型」の設問について、

何を文中に求め、
何を答えるのか

という根元的な問題について、明快な答えを与えて下さったのは先生をおいて他にはおりません。

 私はまだ先生の理論を体得したとは言えぬ身。これからもご教授下さいませ。

 よろしくお願いいたします。
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