センター試験国語(現代文)を極めたい!

センター試験国語の法則を解き明かすのが目標です(『ヘタレ競輪王のトホホ日記』のエントリも恥の記録として残しておきます)。

【解説】2011年 本試験 問題1『身ぶりの消失』(鷲田清一) 問6

2012-01-07 08:45:12 | センター試験 国語

()

・空間からの働きかけ

・行動

 これがある状態を〈空間に「中身」がある〉ということに関しては、波線Xの前後を通じて一貫している。

 従って、

「議論を中断し……、新たな仮説を立てようとしている」
「これまでの論を修正する……」
「行き詰まった議論を打開するために話題を転換して……」

はいづれも不適。

 以上より、解は

()

 全体を通して、筆者は「青木氏」の意見に反対しているのではない。従って①、④は不適

 ここで、筆者の考えと「青木氏」の考えについて整理すると、

・「原っぱ」、「(アトリエとしての)工場」についての考え(=「青木氏」の考え)

・両者に共通するのは、新たな行為を生み出す「手がかり」があることである(=筆者の考え)

・「文化」というのは、すでにそこにあるモノと人との関係が、成熟し、新たな機能を探る段階のことである(=「青木氏」の考え)

・「木造家屋を再利用したグループホーム」には「文化」がある(=筆者の考え)

となる。

 このことから分かるように、 形式段落⑮・⑯の内容(=「現代の『暮らし』の空間」に関する内容)は、 b 「青木氏」の考えとは関係がない。よって、 a b 両者を結びつけた②は不適

 以上より、解は


【解説】2011年 本試験 問題1『身ぶりの消失』(鷲田清一) 問5

2012-01-06 23:51:54 | センター試験 国語

 形式段落⑮より、

・「住宅」=「『暮らし』の空間」
||
・「複数の異なる行為」が「同時並行でおこなわれる」空間
 〔=暮らしのいろいろな象面がたがいに被さりあっている」空間〕
||
・「濃く」なっている空間

と整理できる。

 一方、形式段落⑯より、

・「目的によって仕切られ」た住宅

・複数の異なる行為が同時並行でおこなわれない空間
||
・「密度」の下がった空間

と整理できる。

 以上より、解は

 なお、選択肢①の中の「他者との関係を作り出」す、というのは、「おしゃべりに興ずる」「子どもたちと打ち合わせをする」など抽象化(一般化)したものである。

 選択肢②~⑤は、いづれも〈行為の重なり合い〉について触れていないので不適である。

 ちなみに、

②では、都市空間を切り分ける、という意味の「ゾーニング」を転用している。
③では、形式段落⑬附近の「使用規則」を転用している。
④では、形式段落⑫の「空間の特性」を転用している。
⑤では、形式段落⑭で筆者が挙げた〈空間の編み直し〉を少し表現を変えて転用している。


【解説】2011年 本試験 問題1『身ぶりの消失』(鷲田清一) 問4

2012-01-06 23:33:54 | センター試験 国語

 傍線Cの直前に、

 文化というのは、すでにそこにあるモノと人の関係が、それをとりあえず結びつけていた機能以上に成熟し、今度はその関係から新たな機能をさぐる段階のことではないか

と、「青木氏」による「文化」の定義が示され、

「そのかぎりで」

傍線Cが成り立つのであるから、傍線C「『文化』」は、「青木氏」の定義に沿ったものである。

 したがって、「青木氏」の「文化」についての考えを整理すると、

・モノと人との関係がある → 成熟した関係になる → 新たな機能を探る
||
・文化

 となる。

 ここで、傍線C「高齢者たちが住みつこうとしているこの空間」とは、選択肢の内容からも明らかなように「木造家屋を再利用したグループホーム」であるので、「……グループホーム」に関する記述を整理すると、

・空間の使用規則や行動基準がキャンセルされていない
・自由が限定されているように見える
・別の暮らしが開始されようとしている
・別のひととの別の暮らしへと空間が編み直されようとしている


となるので、「新たな機能」とは、「別の暮らし」のことであると分かる。

 以上より、解は、

・モノと人との成熟した関係(=「身に付いたふるまいを残しつつ、他者との出会いに触発されて」)

・新たな機能(=新たな暮らし)

という関係を写し取った



 ちなみに、

は、「伝統的な暮らしを取り戻す」が、「別のひととの別の暮らし」(形式段落⑭)に反する。
は、「……設備が整えられている」が、「ほとんど改修もせずに……」(形式段落②)に反する。
は、「空間としての自由度がきわめて高く」が、「空間の『使用規則』やそこでの『行動基準』がキャンセルされていない」(形式段落⑭)に反する。
は、「個々の趣味にあった生活」が「別のひととの……暮らし」(形式段落⑭)に反する。

※ 選択肢①、②、④、⑤は、いづれも部分的に正しい要素を含ませて作った選択肢である。


【解説】2011年 本試験 問題1『身ぶりの消失』(鷲田清一) 問3

2012-01-05 12:38:07 | センター試験 国語

問3

 「空間がそこでおこなわれるだろうことに対して先回りしてしまってはいけない」という「青木氏」が下した判断について、その理由を問う問題。

 高橋義三先生によると、

(判断の)「理由」とは、判断の対象についての認識のことである。

とのこと(細かい用語が少し違うのかも知れませんが)。

 「リンゴは嫌いだ」とAさんが判断を下した場合、Aさんがリンゴを嫌いだと判断する「理由」は、

Aさんにとっての「リンゴ」の属性

すなわち、

Aさんの「リンゴ」についての認識

の中にしかない、ということである。

 従って、この問題の場合も、まず傍線B「空間がそこで行われるだろうことに対して先回りしてしまってはいけない」を、


そこで行われるだろうことに対して先回りしてしまっているような空間は、だめである。

と変形し、しかる後に

〈そこで行われるだろうことに対して先回りしてしまっているような空間〉についての「青木氏」の認識とはどのようなものか?

という問題意識を持って文章に当たることになる。

・そこで行われるだろうことに対して先回りしてしまっている空間
||
・〈初めから何をするかが決まっている空間〉
||
・「遊園地」

であるのは明白である。従って、この時点で①、②は正解でない

 また、

・「遊園地」=「原っぱ」のようでない空間

でもあるので、「原っぱ」に関する記述も追っておく。

 すると、

原っぱでは、……。そこでは、たまたま居合わせた子どもたちの行為の糸がたがいに絡まりあい、縒りあわされるなかで空間の「中身」が形をもちはじめる

とあり、これは、

・そこで行われるだろうことがあらかじめ分かっていない

・たまたま居合わせた子どもたちの行為が組み合わさる

・空間の「中身」ができる

と整理できる。そして、このようにならないのが「遊園地」である。以上より、解は

 なお、「遊園地」、「原っぱ」という例は〈空間の「中身」〉に関する例であり、空間を利用する人に関する例ではないので、空間を利用する人の「主体性」や「興味」について述べた③、⑤は不適である。これらのように、文中で言及されていない論点について述べた誤答選択肢は数多い(当 blog では、このパターンを〔言及なき論点〕と呼ぶことにする)。


【解説】2011年 本試験 問題1『身ぶりの消失』(鷲田清一) 問2

2012-01-05 11:32:51 | センター試験 国語

問2
 傍線Aに流れ込むまでの記述を整理する。

 形式段落②で、

・「軽い『認知症』を患っている……女性」が、「居間」に上がる。

・「……おしゃべりに興じている老人たちの輪にすぐには入れず、呆然と立ちつくす」。

・「なんとなくいたたまれ」なくなる。

・「腰を折ってしゃがみかける」。

・「座布団」のやりとり……

という具体例が挙げられ、

これが形式段落③で、

・「和室の居間で立ったままでいることは『不自然』である」。
||
・「居間という空間がもとめる挙措の『風』に、立ったままでいることは合わない」。
||
・「高みから他の人たちを見下ろすことは『風』に反する」。
(だから)
・「腰を下ろす」。(=「からだで憶えているふるまい」/「ひとりでに」こう動く)

と言いかえられ(抽象化され)、

さらに傍線A

・「からだが家のなかにある」

と言いかえられ(抽象化され)ている。

 このことから、筆者が用いた「からだが家のなかにある」という表現には、

・【空間からの影響】【身体の記憶】【身体の動き】

という関係性が封印されていることが分かり、このことは、傍線A直後の

からだの動きが、空間との関係で……ある形に整えられている
(=空間→からだ→からだの動きの形)

となっていることからも確かめることができる。

 空間(=家)からの影響が、身体に刻まれた記憶を呼び起こすことによって、自然と一定の行動があらわれる、といったことを、「からだが家のなかにある」と圧縮して表現したのである。

 形式段落⑤冒頭には、「バリアフリー」という新出語があり、「バリアフリー」でない「木造の民家をほとんど改修もせずに使うデイ・サーヴィスの施設」との比較対照展開に入っていくことは明らかなので、傍線Aが所属する展開の部品(高橋先生いうところの「鳥かご」)は形式段落④まで

 展開の境界がうっすらと見え、その展開の部品内にある関係性が見えた時点で選択肢に当たるのが良いと思う。

 【空間からの影響】→【身体の記憶】→【身体の動き】という関係性を写し取った選択肢は⑤。ゆえに解は


 ちなみに、他の選択肢についても見ておく。

 「人間の身体が孤立する」というのは、形式段落⑤「物との関係が切断されれば」あたりを参考に創作した表現であろう。また、「身体が侵蝕されている」というのも、同じく形式段落⑤で、

「バリアフリー」空間において、「身体の記憶」が脱落していくさまを表現した語句

である。このように、文中の別の部分を説明するために用いた語句を転用して誤答の選択肢を作ることがセンター試験ではよく見られる(当 blog では、このパターンを〔用語の転用〕と呼ぶことにする)。

 最後の二択で迷ったとき、「確か、こんな語句が文中のどこかで使われていたな……」というとき、その語句の出典(?)を調べればこの手の誤答選択肢に引っかかることは激減するだろう。

 は、「記憶」→「規律」という言いかえを仮に認めるとしても、【空間からの影響】という要素を欠く。ゆえに不適当。このように、文中で述べられた関係性を意図的に誤写することによって誤答選択肢を作ることもよく見られる(当 blog では、このパターンを〔関係性の誤写〕と呼ぶことにする)。

 は、形式段落⑤で述べられている

からだが「『バリアフリー』に作られた空間」に「なじみ」、「住みつく」こと

に対する説明を圧縮したものである。ゆえに不適当。このように、説明としては正しいが説明の対象が設問で問われているものとは異なるという選択肢もときどき見られる(当 blog では、このパターンを〔別対象への正しい説明〕と呼ぶことにする)。

 で述べられている関係性は、文中で述べられている関係性に合わない。

 には、

「人間の身体は空間と調和していくことができるのでふるまいを自発的に選択できている」

とあるが、これでは【身体の記憶】という要素を欠く〔関係性の誤写〕)。ゆえに不適当。


【問題】2011年 本試験 問題1『身ぶりの消失』(鷲田清一)

2012-01-05 10:53:30 | センター試験 問題

 問題文、および設問を .jpg 画像で貼り付けておきます。

 過去問が手元にある方にとっては必要ないと思います。どうしても手に入らないという方向けにうpしておきます。

 なお、今回の問題は、こちらで .pdf ファイルのダウンロードが可能です。

 

 

 

 

 

※ ワープロでジカ打ちしたものをプリントアウトし、スキャナで画像化しているので、打ち間違いや変換ミスがあるかも知れません。誤字、脱字、誤変換等にお気づきになった方は、ぜひコメント欄でお知らせ下さい。


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