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リットン調査団とハインリッヒ・シュネー『「満州国」見聞記』  時事放談

2021-09-07 05:00:00 | 近現代史

昭和6(1931)年9月18日、関東軍の謀略(満鉄爆破)により、
柳条湖事件が発生。満州事変の始まりだ。

中国が国際連盟に提訴したことにより、連盟からリットン調査団
が派遣される。

リットン調査団のメンバーは、
リットン伯爵(英)
アンリ・クローデル陸軍中将(仏)
アルドロバンディ伯爵(伊)
ハインリッヒ・シュネー博士(独)
フランク・ロス・マッコイ将軍(米)
の5人である。

行程は、日本→中国(上海、南京、漢口、北京)→満州地域→日本
→北京(報告書作成)→イギリスだった。

本書は、メンバーの一人H.シュネーによる『「満州国」見聞記
--リットン調査団同行記』(講談社学術文庫2002、新人物往来
社1988)である。
原書は、昭和8(1933)年ベルリンで発刊されている。

第二次世界大戦後に書かれた、「後付け」のものではなく、同時
代の史料として興味深い。


本書序文より
 私はこの本の中で、1932年に国際連盟から派遣されたリットン調査団の一員
 として得た個人的な印象に加えて、調査結果に基づき、極東情勢とは何かを
 伝えるとともに、その問題点について、不偏不党の立場から説明しようと試
 みた。



東京では日本の指導者--芳沢謙吉外相、犬養毅首相、荒木貞夫
陸相等々と面談、宮中午餐会にも招かれている。

荒木陸相との面談
 最後に(荒木貞夫)陸相は、日中両国人のおもしろい比較をした。中国人は
 無数の粒子からなる砂に似ている。砂は湿気があると短時間で固まるが、乾
 燥するとすぐにバラバラの砂粒に分離してしまう。これに反し日本人は、水
 で固めた粘土に似ている。粘土は非常に硬く結びついているので、これを分
 解しようとすれば、打撃を与え完全に粉砕しなければならない、と。
 (本書p32)

(参考)孫文は1924年、三民主義の講演で、民族主義について、
次のように述
 べている。

 「中国人は家族と宗族の団体があるだけで、民族の精神がない」ため、「バ
 ラバラな砂」のようで、列強の人口・政治力・経済力という三種類の圧迫を
 受け、中国は特定国の植民地よりも地位の低い「次植民地」、つまり列強の
 共有する植民地となってしまったという。(深町英夫『孫文』岩波新書)


北京(当時は北平)では張学良と面談している。
 中国人の間では張作霖暗殺事件を引き起こした犯人は、南満州鉄道を所有し
 経営している日本人のうちのだれかであるといううわさが広まっているが、
 これまでの調査では、まだ真犯人はあがっていない。(本書p91)
 (注)この事件の首謀者は関東軍の河本大作大佐である。河本大作は後に満
  鉄の理事に就任。



日本の政情
 日本国民の広い層にいわゆる超国家主義が浸透したため、一般大衆が、国家
 の存続にとって死活の問題とみなしている事柄について、政治家がとかく軟
 弱にみえる政策を行ったり、穏健な意見を述べたりすることは、はなはだ危
 険である。

 若い狂信者たちは、これらに政治家は、売国奴であるとみなし、彼らを殺害
 することが愛国的行為であるという信念に燃えて、一身を犠牲にして暗殺を
 決行する。また国民世論もこれらの穏健派政治家の退陣を迫るのだ。
 (本書p182)


繰返しになるが、本書が戦後に書かれたものではなく、満州事変
当時に書かれたものであることに注目して読むとおもしろい。



講談社学術文庫の島田俊彦『関東軍』、『満州事変』と本書



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○自民党総裁選
 政界は「一寸先は闇」の世界だが、石破氏は案の定出馬しない、
 らしい。
 岸田、河野、高市三氏では、常識的に考えれば、岸田、河野の
 トップ争いだ。
 高市氏が意外と頑張り、河野、高市、岸田氏の順になる可能性
 もなきにしあらず??
 野田氏は以前もそうだったが、推薦人が集まらない?

〇フジプライム
 久しぶりに伊吹文明節を聴く。
 ポピュリズムの危険性や如何?

○野党も(野党)一本化をするのであれば、その前に野党同士の
 主義・政策論争をすれば分かりやすいのでは?
 単なる数合わせでは、自民党を批判する資格はない?

○マス・メディアも報道の仕方の善し悪しが問われるだろう。

〇新規感染者数は、菅さんが言うように「少し明るさが見える」
 のかしらん。--油断ならないが。


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