6月28日(日)、前日のOB練習にやや疲れ気味だが、午前中はブログ
作りに勤(いそ)しみ、午後2時過ぎに錦糸町のすみだトリフォニーへ向
かう。
この日は(東京と関西で交互開催なので、東京では)2年に一度の「四連」
演奏会(4時開演)だ。今年は「第64回」である。私の現役時代は、第20
回~22回だった。あれから40年以上になるとは感慨深い。
一世代=30年からすれば、今年の現役諸君は、私と1と1/3世代離れて
いることになる。しかし、四連を聴くときの「気持ち」は昔と変わらない。実
力ある各校が一生懸命練習を重ねてくる。男声合唱の合同演奏会として
は全国トップクラスの生演奏を聴くことができるので、聴く方も気持ちが高
ぶってくる。
あざみ野発午後2時35分の急行に乗って一本、3時28分に錦糸町に到
着。3時35分に会場入り。早速、プログラムに目を通す。曲目解説の充
実したプログラムだったので、じっくり勉強するにはもう少し早く入場すれ
ばよかったかもしれない。
冒頭には合同委嘱作品作曲家多田武彦さんの「嗚呼・東西四連」があり、
興味深かった。
四大学の歴史・・・・・・創立年、創立者
同志社大学 1875 新島襄 同志社グリー 1904
慶應義塾 1858 福澤諭吉 慶應ワグネル 1901
関西学院大学 1889 W.R.ランバス 関学グリー 1899
早稲田大学 1882 大隈重信 早稲田グリー 1907
ちなみに早稲田大学グリークラブとは言うが、同志社大学グリークラブ
とは言わない。関学も同様に関西学院グリークラブである。
<プログラム>
エール交換 ( )内は、プログラム掲載メンバーと演奏時間
1.同志社グリー(44人 16分)
『ラプソディー・イン・チカマツ』
作詩;近松門左衛門 作曲;千原英善 指揮;伊東恵司
2.慶應ワグネル (46人 14分)
プーランク『アッシジの聖フランチェスコへの小さな祈り』
サン=サーンス『サルタレッロ』
指揮;佐藤正浩
--休憩--
3.関西学院グリー (76人 16分)
『トレミス男声合唱曲集』
指揮;広瀬康夫 バスドラム;若松佑輔
4.早稲田グリー (56人 30分)
カンタータ『土の歌』
作詩;大木惇夫 作曲;佐藤 眞 指揮;小久保大輔 ピアノ;清水 新
--休憩--
5.『達治と濤聲(とうせい)』 (200人以上 21分)
作詩;三好達治 作曲;多田武彦 指揮;山脇卓也
座席に着くと、隣にはいつもOB練習から一緒に帰るTさんが座っており、
「やあ、やあ」と演奏前の雑談となった。
以下、いくばくかの臨場感をもって、演奏会をレポートしたい。
<エール交換>
3:59 チャイム。アナウンス「大変長らくお待たせいたしました・・・・・・」と
ともに、どん帳のないステージの左右からこの日の出演者がぞろぞろと
入場してきた。下手寄りから同志社、慶應、関学、早稲田と整列、全員が
正面を向き終わると大きな拍手がわいた。
同志社;最前列は5人。やや速めのテンポ。明るいTop。終わると客席か
らイエーイともつかぬ声がかかった。
慶應;塾歌としてはやや遅めのテンポでレガート唱法。自然なピューモッ
ソがGood!塾歌後半のTopは秀逸。最前列は6人。
関学;最前列は8人の大人数。余裕ある「A Song For Kwansei」と言え
るかしらん。
早稲田;この歌は2番で力みがちになるが、自己陶酔的な(?)強調もなく、
なかなかいい演奏だった。最前列は7人。
エール交換は10分ほどで終了。
1.同志社グリー(44人 16分)
『ラプソディー・イン・チカマツ』
4:02下手より大きな和太鼓や和傘などが運び込まれる。
ブレザーに蝶ネクタイ姿のグリーが下手より入場、3列に並んだ。伊東さ
んはいつもながらご自分で楽譜をかかえて登場。「我、近松門左衛門。
代々甲冑の家にうまれながら・・・・・・」で始まる歌詩は、すべて近松からと
ったもので、なかなか難しい。伊東さんの円を描くような大きな指揮にリー
ドされ、和太鼓あり、はっぴ姿となっての動きあり、拍子木に口上ありでま
さしく「声の浄瑠璃万華鏡世界」。近松門左衛門の素養がない私には、プ
レトークや字幕があってもよかったかな(笑)。終わると会場から歓声があ
がった。(伊東さんは言うまでもなく同志社OB90年卒)
2.慶應ワグネル (46人 14分)
プーランク『アッシジの聖フランチェスコへの小さな祈り』
サン=サーンス『サルタレッロ』
ワグネルは、昨年の四連、定演に引き続き、プーランクの正統的な男声
合唱曲を取り上げた。プーランクは佐藤先生がお好きな作曲家の一人だ。
もう20年近く前にワグネルで聴いた「愛の小径」など「プーランク歌曲集」
は忘れられない(佐藤先生は、今年ワグネル20年)。
4:35ワグネルが入場。やや曲線的に指揮者から等距離、3列に並んだ。
長身の佐藤先生は黒の上下で登場。一礼、拍手の後にしばらく間があっ
て音取りもなく、指揮棒を持たずに両手を構えた先生の一振りから柔らか
なフランス語が紡ぎだされた。かなり歌い込まれた印象。フランス語の柔
らかな響きは、ppで美しく、またfにしても(ワグネル伝統の?)ゲルマン
風に興奮する、ガーッとなるfではない。
1曲目の「聖」と2曲目の「俗」。サン=サーンスでは通常の3列にフォー
メーションを組み直す。一転したやや軽快な音楽。佐藤先生は、譜面台
の楽譜に目をやらず、暗譜で、身体をいっぱいに使った指揮ぶり。終結
部分でのppがすばらしかった。終わるやブラボーも飛び交う、大きな拍
手が続いた。定演では再演していただけるかしらん。
--休憩--
休憩時間に、サントリー・モルツを飲みながら、同じOBのAさんと「いや~、
よかったね~」と、歓談にモルツ・クレッシェンド。(笑)
3.関西学院グリー (76人 16分)
『トレミス男声合唱曲集』
休憩中にバスドラムがセットされた。5:08大人数のグリーが入場、4列
に並んだ。広瀬さんは黒の上下。
1曲目、いきなりのテノール・ソロで始まった。「雷鳴への祈り」という名前
どおり、バスドラムと足踏みが入った激しい曲。広瀬さんは、関学伝統の
アンサンブルに熱さが加わった指揮。
2曲目は、一転明るい曲(婚礼歌)。曲目ごとにフォーメーションが変わる。
3曲目は「大波の魔術」という海難事故で亡くなった人々への追悼曲。息
まぜ声あり、指笛あり。ここでも広瀬さんは熱い、前傾姿勢、渾身の指揮。
関学のイメージとちょっと違ったフルボイスだった。会場のブラボーに広
瀬さんも会心の笑顔。(広瀬さんは関学OB80年卒)
4.早稲田グリー (56人 30分)
カンタータ『土の歌』
このステージだけピアノ伴奏付きの曲。この曲の男声版初演は平成20
(2008)年早稲田グリーによってなされているが、私はわざわざそれを
聴きに行った(ブログにも書いている)。
早稲田グリーも振られた福永陽一郎先生(--今年は没後25年である)
のお孫さんの指揮による大曲。清水さんのすばらしいピアノ伴奏に支え
られて、オーケストラも指揮される小久保さんらしい(--柔らかい棒だ
ったり、意外と没入型に振ったり)、テンポ感と造型のしっかりした演奏だ
った。ただ、発声上の問題か、「日本語の歌詩」が聴き取りにくい所が散
見されたかな。
--休憩--
隣のTさんはここで帰宅。休憩中に1年先輩のKさんとバッタリ。「いや~、
(ワグネルは)我々の時よりうまいね~」とご機嫌だった。
5.『達治と濤聲(とうせい)』 (200人以上 21分)
作詩;三好達治 作曲;多田武彦 指揮;山脇卓也
合同演奏は難しい。自分たちの演奏で手いっぱいになりがちだ。まして
や委嘱の初演--というイメージを覆すかのような、これぞマスの男声
合唱という演奏を聴かせてくれた。200人以上の合唱団も、期待に応え、
暗譜の合唱。一糸乱れず、語感あふれる、見事な日本語。山脇さんは、
大きなスケール感といい、メロディーパートの浮き立たせ方といい、骨太
のすばらしい指揮ぶりだった。
それにしても三好達治の詩は、難しい漢語が多いですね~。
バンア=晩鴉(夕暮れ時の烏)。コウカ=紅花。ジコウ=時劫(永遠に続
く時間)。
「有難うございました。多田先生は、本日いらっしゃっていないのですが、
あらためて感謝申し上げます。アンコールとして、多田先生の『帆船の子』
(丸山薫作詩)をお送りします」(山脇さん)。
アンコール曲はいかにもグリー調。これもたまたま初演を聴いている。最
後は倍音が鳴った。聴く方も明るく元気になる。
(山脇さんは早稲田OB98年卒)
大きな拍手とともに暗転後、拍手が手拍子に変わる。ステージ上は、民
族の大移動。あらためてエール交換の位置に並んでのステージストーム。
各校ともに十八番のうまい演奏に、私もリラックスして楽しんだ。
同志社;黒人霊歌
慶應;Slavnostni Sbor
関学;ウ・ボイ
早稲田;斎太郎節
帰りは、OBのNさんと渋谷まで一緒になり、後輩のいい演奏に、盛り上
がりながら家路に着いた。
プログラム
この日のフォト・ブック
大ケヤキ
ハイビスカス
2時35分の急行
錦糸町に到着
北斎通り
交番前
東京スカイツリー どんよりとした雲
大ホール前
各校の旗が並ぶ。左から同志社、慶應、関学、早稲田。
1階ロビーの賑わい
客席から なかなかいい音の場所だった。
サントリー・モルツ500円でほろ酔い気分
各校のCD、DVD販売中
終演後
錦糸町駅前
Nさんが「この文庫、おもしろいですよ」と教えてくれた。
* * * *
私だったら「もう勝手にせい」と言ってしまいそうだが--ギリシャに。
こういう時こそ「Cool head but warm heart」かしらん。
原田光子『クララ・シューマン--真実なる女性』ですね。図書館で借りて読んでみます。