たまやんの「大きい画像の貼れるブログに引っ越したい」

お久しぶりです。ネタバレあります。

二兎社公演 「歌わせたい男たち」

2005-12-01 23:15:31 | 舞台・演劇
(2005年12月1日 午後7時開演 名古屋市民会館 中ホールにて)

日本劇作家協会会長でもある、永井愛主宰の二兎社が放つ新作は、毎年卒業式シーズンになると起こる「君が代不起立問題」を描く悲喜劇。

東京にある、180席ほどしかない小さな小さな演劇小屋であるベニサン・ピットで行っていた芝居なので、名古屋会場である名古屋市民会館中ホールに掛けるにはかなり大きい。なので、舞台の手前の方を黒い布で覆って、奥まったところに本来の舞台を作っている。

卒業式2時間前の都立高校の保健室。元シャンソン歌手で音楽講師の仲(戸田)は、伴奏をするため苦手なピアノを練習しているうちに体調を崩していた。そこへ花粉症の薬を取りに来た校長(大谷)に、国歌だけはなんとしてもとプレッシャーをかけられる。
斉唱拒否はもってのほか。着席者も出してはならない。保健室には推進派の英語科教諭片桐(中上)適当な保健教諭(小山)そして拒否を宣言している社会科教諭の拝島が集まるのだが・・・。

卒業式での「国歌」をめぐっての大騒動が巻き起こるこの作品、強烈なキャラクターに翻弄される主人公はいささか弱い気もしますが、彼女を作者の分身つまり表現者の立場から描いていると考えるとしっくり来るし、自ずと言いたい事も見えてくる。

教師が自分の思想つまり「内心」の表れとして国歌斉唱しない、起立しないのに対して処分をするだけでなく、不起立の生徒についても担任の責任として処分すると言うのはいかがなものか?と言う事だ。

これは、自分の考えを表現する側、そして受け取る側の自由を奪うことにならないのだろうか?と、表現を生業とする劇作家にとっては大変な問題と考えている。

この考えは冒頭の場面にも表れている。

仰げば尊しや校歌を伴奏してもどうしてもシャンソンのクセでクニャンと弾いてしまう場面は非常に笑えるものとなっていましたが、もとシャンソン歌手の音楽教師にとって、シャンソンは彼女の「内心」であって、厳かに弾くことなど「内心の自由」を侵されることになるのだ。と考えると、これは非常に大変な問題。

それだけにラストに歌われる彼女の「内心」である愛の歌には心打たれることになる。

この作品は、今年は長久手で行われた日本劇作家大会でも、鴻上尚史さんら劇作家陣が「とうとう永井さんがこの問題に取り組むよ!」と大きな話題になりました。思想は人それぞれでありながらも、みんな、表現者としてほおっておけなかったのだろうと思う。


そんな、大きな使命感と内容を抱えた作品ながら、芝居のテンポの良さ、セリフの面白さ、俳優の芝居の巧さで知らず知らずのうちに引き込まれていく。

それだけに、突きつけられたメッセージが深く染み入るわけですが。

役者さんでは特に、大谷亮介さんが凄かった。面白い演技で笑わせることはできても、面白い演技で泣かせる役者はそういない。オンシアター自由劇場では小日向文世さんと同期だった役者さんで、三谷ドラマにも多く出てる方です。こういう役者さんはもっと見たいですねえ。

戸田恵子さんと、近藤芳正さんはどちらも愛知県出身というのを活かして、思想やあれこれ関係なく心開ける間柄としての会話に名古屋弁が使われている設定が上手かった。地元名古屋ではいちいち笑いが起きてましたが、他の地方でもきっと、ナチュラルな方言のぶつかり合う迫力に圧倒されたことでしょう。

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