けいた と おちぇの親方日記

わんこと暮らす、のんびり日記

小説「羊と鋼の森」(宮下奈都著)

2016-07-21 18:00:00 | 書籍(小説)
今年の本屋大賞授賞作品である、
宮下奈都さん作「羊と鋼の森」を読んだ。



主人公の外村は、高校生の時、
ある調律師を体育館へ案内するよう頼まれる。

このときの調律師、
板鳥宗一郎との出会いが運命であった。

外村は、高校を卒業後、専門学校に入り、
その後、調律師として、
板鳥の勤める江藤楽器店に入社する。

同僚調律師で、外村の指導役の柳さん、
少し気難しそうな秋野さん。そして、事務員の北川さん。

お客さまで、双子の高校生で、
そして、ピアニストの卵、佐倉和音と由仁。

北海道の片田舎の楽器屋さんで繰り広げられる、
まだ始まったばかりの調律師の物語。
そして、人として成長していく、静かな物語。

努力をすることの大切さ、
こつこつ積み上げることの大切さを教えてくれる。
派手さはないが、好きな作品であった。

「ピアノに出会うまで、美しいものに気づかずにいた。
 知らなかった、というのとは少し違う。
 僕はたくさん知っていた。ただ、知っていることに気づかずにいた。
 その証拠に、ピアノに出会って以来、
 僕は記憶のなかからいくつも美しいものを発見した。」

「きっと僕が気づいていないだけで、
 ありとあらゆるところに美しさは潜んでいる。」

「僕には才能がない。そう言ってしまうのは、いっそ楽だった。
 でも、調律師に必要なのは、才能じゃない。
 少なくとも、今の段階で必要なのは、才能じゃない。
 そう思うことで自分を励ましてきた。
 才能という言葉で紛らわせてはいけない。
 あきらめる口実に使うわけにはいかない。
 経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。
 才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう。
 もしも、いつか、どうしても置き換えられないものがあると気づいたら、
 そのときにあきらめればいいではないか。
 怖いけれど、自分の才能のなさを認めるのは、きっととても怖いけれど。」

「才能っていうのはさ、ものすごく好きだって気持ちなんじゃないか。
 どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、
 そういうものと似てる何か。俺はそう思うことにしてるよ。」

「どちらがいいか、どちらがすぐれているか、という問題ではないのだ。
 (中略)
 比べることはできない。比べる意味もない。
 多くの人にとっては価値のないものでも、
 誰かひとりにとってはかけがいのないものになる」

「才能があるから生きていくんじゃない。
 そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。
 あるのかないのかわからない、
 そんなものにふりまわされるのはごめんだ。
 もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。」

(素晴らしい調律師というか、真の領域というかにたどりつける人は)
「根気よく、一歩一歩、羊と鋼の森を歩き続けられる人なのかもしれない。」

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今年の本屋大賞は、なかなか良かったと思う。
第4位に入った、西川美和さんの「永い言い訳」(文藝春秋)。



作者の西川さんが監督となり、昨年、映画化もされている。
原作も映画も、是非読みたい(観たい)。
コメント
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