けいた と おちぇの親方日記

わんこと暮らす、のんびり日記

小説「水のかたち(上・下)」(宮本輝著)

2015-08-31 18:00:00 | 書籍(小説)
宮本輝さんの小説「水のかたち(上・下)」を読んだ。

あとがきで宮本さんが書かれているが、
本作品のテーマは善き人たちとのつながり。

宮本さんの作品は皆好きであるが、
本作品は1・2番にあたる作品であった。




主人公は、門前仲町に住む50歳の主婦・能勢志乃子。

かつては骨董屋であった、「かささぎ堂」という喫茶店で、
志乃子が154年前の文机を貰うところから物語は始まる。

この志乃子さん自身がもっとも善き人なのであるが、
登場してくる人たちがまた善き人たちなのである。

志乃子さんの夫・琢己さん、智春、啓次郎、茜の3兄弟。
かささぎ堂の店主・笠木恵津。

志乃子の姉であり、海雛の店主・宮津美乃。
志乃子の母、伯父・三好与一郎。
与一郎の知人であり、コンサル会社社長の井澤繁佑。

京都の陶器修理師・香川道忠、
京都の喫茶店「バンビ」のオーナー・小鹿進。

志乃子住むマンションの1階にある、
財津ホーム社長の財津厚郎、事務員の早苗。

志乃子の友人であり、ジャズシンガーの木本沙知代。

そして、終戦直後に朝鮮から決死の帰国を図った、
横尾文之助、その妻・喜菜子、娘の菊子。

善き人とは、何か。宮本さんはこう言っている。

「他者の痛みや悩みを我がことのように感じ、
 なんとか力になってあげようと行動を起こす人」

「人を騙して儲けようとか、
 人間社会のルールに反して平気でいられるとか、
 弱い者をいじめ、強い者にへつらうとか、
 そういうこととは無縁の人たち」

現代の日本では、こういう人が減ってきていると思う。
古き良き日本社会を見た気がする。宮本さんの作品の特徴であるが、
読んでいて共感したり、自分もこうしてみようと思うことがある。

志乃子が伯父・与一郎に「心は巧みなる画師の如し」といわれる。
不幸なことや悲しいことは思い描かず、
楽しいこと、嬉しいこと、幸福なことを、常に心に思い描いていると、
いつかそれが現実になるということである。
自分もそうやって、日々暮らしていこうと思った。

また、志乃子の母が志乃子にこういうことを言う。
「人間の幸福というものは、
 他の人と比べてどうのこうの考えるべきではない」
「罪悪感てのは、その人間の芯の部分をひどく痛めつけるのよ。
 病気の元よ。(中略)だから、あとになって
 少しでも罪悪感が残るようなことはしないほうが良い」。

素直な人は伸びるという話の中で、素直な人をこう説明している。
「人に言われた通りにする。自分を善人に仕立てあげようとしない。
 自然に素直で、自然に謙虚で、自然に礼儀正しい。」

また、教育の大切さについて、夫・辰巳がこういっている。
「人間に生まれたから人間になるのではない。
 人間になるための教育を受けなければ、人間にはなれないのだ。」

たくさん良い話がちりばめられ、とても素晴らしい作品であった。
是非、多くの人に読んでもらいたい作品である。

今日のおまけ。

おちぇ、何やっているの?



お外に出たい、おちぇ。



カーテンの向こうは、こんな感じ。



まだ暑いからね。涼しい時間になってからね。
やることなすこと、可愛いおちぇ。
コメント
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