歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

戦艦大和が好きなロシア人(3)

2009-09-07 05:04:18 | ロシア関係

(2)からの続き

ヴィターリー=カヴタラゼ
戦術的には、一隻か二隻の艦船のために戦艦を潰すのは、意味が無い。

※これはグルジア系の姓。


ニキータ
とにかく、大和はもっと前に使い潰すべきだったんだよ。レイテ湾であの時ならアメ公に十分嫌がらせができたんだ。


マクシム@「戦艦大和は世界最強」の管理人
>ニキータ
どういう意味?


アンドレイ
>マクシム
つまり….大和はその前にレイテ湾での海戦に参加していたのだから、その時に最大限の力を発揮すべきだったってことだろ….。

※1944年のレイテ沖海戦において、大和以下の日本艦隊を率いていた栗田提督が突然躊躇したことにより実現しなかった、レイテ湾突入作戦のことを言っているらしい。迷わず突っ込んでいれば、米軍の上陸部隊と輸送船団を撃滅できる可能性は確かにあった。ちなみに、大和の同型艦“武蔵”はこの時、米軍機の集中攻撃を受けて沈んでいる。


リンチェナ
>エヴゲーニー
あなたの意見に大いに賛成ですね。今日に至るまで、日本人は皆“武士道”を枕頭の書としているのですが、この本は、日本の戦士のほとんど全ての振る舞いを説明しうるもの。私には日本人の友人(22歳の男性)がいるのですが、この本を全巻揃えています。

彼自身がそれを全巻読んだかどうかは分かりませんが、こと自らの尊厳が問題になった場合、この書の知識が表に出てくるわけです。かように“武士道”は素晴らしい本なので、是非一読されることをお勧めいたします。精神修養のためにもねw。

※ これはブリャート・モンゴルの女性名で、モンゴル圏によくある男性名“リンチノ”の語尾に“-a”を付けたもの。ロシア語の名詞には性の区別があり、ロシア人の女性名も語尾が「-a」で終わる“女性名詞”が使われるのが普通なのだが、その影響か、旧ソ連圏内の他民族の間では、男性名、女性名を問わずその固有名の語尾に「-a」を加えて女性名とする場合がある。生活言語として、普段からロシア語を使っている地域ほどその傾向は強いかも。

なお、ロシアに住むブリャート・モンゴル人は今なお大部分がチベット仏教の信仰を保っているものの、都市部では言語的にかなりロシア語化が進んでいて、ブリャート語を話せない人が多い。

それはともかく、この人の言っている“武士道”は決して新渡戸稲造が外人向けに書いたアレではない模様(そもそも、原書は何冊にも渡るような長いものではない)。あたかもコーランか仏典のような、”ブシドー”なる大著の聖典が存在するかのように勘違いしているような気がする。



リンチェナ

ところで、2005年にこの最も華麗な(そして最強の)巡洋艦についての映画が作られました。私がこれまで見た映画の中でも、心からお勧めしたい作品です。あなた方を感動させるのは間違いないと思うし、あなた方の日本観、いやそれどころか人生観までも変えてしまうかもしれません。

※巡洋艦じゃないだろうw。


マクシム@「戦艦大和は世界最強」の管理人
>リンチェナ
それは“オトコ・タチ・ノ・ヤマト(男たちの大和)”のことですね?


リンチェナ
>マクシム
そうです。


アンドレイ
>リンチェナ
俺もその映画みました。なんというか、本当に暗いストーリーだった。それよりも、とにかく大和の美しさと大きさの方が記憶に残っていますね。


アザト
いったい何が分からないんだ?敗北が間近になった日本が大和を敵にやったら、相手が受け取れなかったというだけのことだろ。

※イラン=テュルク文化圏ではよくある男性名で、元々はペルシア語で“自由”を意味する。この人もカザフ人らしい。


イワン
そうだ。意味はあった…最後の出撃へと大和を送り出した日本人にとってはな。明らかに意味はあったんだ。残された全ての者たちにとっては…問題だろう…。でも、それは重要なことなのか????


プロニカ
大和は戦いの最中か、あるいは最低でも戦いに臨んだ状態で沈まねばならなかった。日本海軍の主要な象徴の一つとして、大和には、日本人が敗者となるような戦いが終わった後まで生き延び、海の上に浮いているような権利は無かったんだよ。

※何だか草鹿龍之介みたいなことを言っている。wでも、当時の海軍上層部の意図はこの書き込みで言い尽くされているような.....。


ヴィターリー=マズール

俺には大和とヴァリャークを直に比較・研究する必要があるように感じるな。軍人の名誉に係わる問題に直面する中で、いずれも立派に任務を遂行したということで。

※日本では“ワリャーグ”として知られる、帝政ロシア海軍の軍艦。日露戦争の緒戦、仁川沖海戦では艦の数で圧倒的に勝る日本海軍と交戦し、戦闘不能となる。でも、艦長であったルードネフは降伏を潔しとせず、鹵獲を防ぐため艦を自沈させた上、当人と乗組員らは脱出に成功。船は日本側によって引き揚げられ、結局戦利品となった。

ちなみに、“ヴァリャーク”とは、かつて北欧から移住して現地のスラヴ人たちを支配し、ロシア国家の源流とされる“キエフ・ルーシ”を建国した“ヴァイキング”のロシアでの呼び名。操船術と船戦に優れていたと言われる。


マクシム@「戦艦大和は世界最強」の管理人
そうでもないんじゃないかな....。ルードネフには選択の余地があったけど、イトー・セイイチ(伊藤整一)とアリガ・コウサク(有賀幸作)にはなかったわけで。

※ ルードネフは“ヴァリャーク”の艦長。仁川沖海戦の際は重症を負いながらも脱出に成功し、中立国経由で無事ロシアに帰還した。一方、伊藤整一は沖縄に向かった大和を中心とした艦隊の司令官、有賀幸作は大和の艦長で、いずれも大和が沈んだ際は脱出を試みず、運命を共にした。


アンドレイ
なら、ルードネフにはどんな選択肢があったんだ?降伏するか、それとも降伏して捕虜になるのを拒否するかってこと?


マクシム@「戦艦大和は世界最強」の管理人
そういうことだ。


アンドレイ
じゃあ、大和は?もし彼らがどこにも航行を開始せず、全乗組員ともども捕虜になっていたとしたら?もちろん、彼らが抵抗しなければ、というか彼らが降伏を欲した場合の話だけど。でも、実際の彼らは狂信的だったわけで….。


マクシム@「戦艦大和は世界最強」の管理人
彼らは軍人だったんだよ…命令を受けた、な。


アンドレイ
いや、それは分かるんだ。でも、彼らは抵抗をやめ......停船して降伏することもできたろう…..

※そんな“戦艦大和ノ最期”はイヤだw

というか、雷撃機や急降下爆撃機に攻撃されている最中に、どうやって降伏するのか。手旗信号とか?w



マクシム@「戦艦大和は世界最強」の管理人
>アンドレイ
……..あんた、兵役って就いたことあります???

※ソ連時代以来、ロシアでは、成年男子全員に兵役の義務がある。


アンドレイ
>マクシム
ああ、あんたがどの方向に話を持っていこうとしているかは分かるよ。でもまあ、戦時には、全ての命令が遂行されるわけじゃない…..降伏する兵も多いだろ….。

※第二次大戦時のソ連赤軍の軍規は日本軍のものに劣らず、というかそれ以上に厳格であり、戦意の無い兵はしばしば味方の督戦部隊に射殺されていた。また、一旦敵軍の捕虜になった兵は、スパイの疑いをかけられて帰国してからも収容所送りになったりしていた。この人は歴史を知らなさ過ぎる。


アンドレイ
スターリングラードでは、パウルス(元帥)指揮下のドイツ軍は最後まで戦うように命令されていたにも拘らず、その大半が降伏した…そういうもんだ。一つの例だけどw。

※ その時降伏したドイツ兵の殆どはソ連国内の収容所で命を落とし、生きてドイツに帰れたのは僅かだった。捕虜になってからは共産主義者に転じてソ連を支持し、戦後東ドイツで余生を全うしたパウルスもその一人。


イワン
みんな、スターリングラードについてとか、日本人をドイツ人と一緒にするのはやめてくれ。カミカーゼは目前の状況でどうこうって話じゃない…。日本人の生活様式から生じたものなんだ。すべての生活の….。


アンドレイ
あれだな。生活様式について、というのもまた論争的な問題だな。どこにも行き場が無く、後退もできなかったとしたら…彼らはもちろん、狂信者ってことになる….。あと、もう一つ論争的な問題があるんだ。

というのも、それを強制されたと語る人間が多いからで….大勢の人間が洗脳されていたとか、鎖で飛行機につながれていたとかね….自発的にカミカーゼ攻撃に参加した人間は少なかったのかもしれない…。


イワン
まあ、誰が自発的で誰がそうでなかったかなんて分からないんだろうけどな。こうした行動が特に自発的でなかった可能性は十分にある。“洗脳”は一日でなされるものじゃない。もし、ある人間に子供のころから“天皇”、“武士道”、“テンノー・ヘイカ・バンザイ!”と吹き込んでいけば、彼の中ではそういう生活様式が出来上がっていくだろう。

でも、もしそういうものが無かったとしても、自らの目標から目をそらすカミカーゼは一人もいなかったろうし、彼らが己が任務を悔いることも無かったと思うんだ。


アンドレイ
そうだな。同感だよ。

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議論の内容はともかくw、ある意味冷戦の遺産であるインターネットを使って、旧ソ連圏の諸々の民族が戦艦大和の水上特攻の意味について語り合う.とか、.まさかそんな時代が来ようとは...。何とも感慨深いものがありますw

こちらにとって印象的だったのは、カザフ人やウズベク人といった中央アジア系の連中の意見が、総じて辛めでシニカルなことでした。

自分自身の経験でも、あちらの人間とこの手の話題について話すと、意外と文学的というかロマン主義的に”特攻”を語りがちなロシア人に比べて、中央アジア人は反応が非常にドライだったという印象がありますね。

特に、カザフ人とかクルグズ(キルギス)人みたいな元遊牧系の人たちがそんな感じなのです。以前、あるクルグズ人の知人と飲んでいる際に言われたのですが、彼の場合、“故郷を守るために命を捧げる”とか“城を枕に討ち死にする”みたいなことを美徳とする感覚が、心の底から理解できないのだとか。”逃げればいいじゃないか!”みたいなことを言うわけです。

逃げるってどこに?そんな簡単に.言うなよ、と思ってしまいますが、考えてみれば、彼らの御先祖は1920年代辺りまで、つまり爺さんかその前の代の辺りまで遊牧もしくは半遊牧生活を送っていたのでした。それまでの伝統的な部族同士の戦争では、負けた側が相手の傘下に入るか、散り散りになってユーラシア大陸を逃げられるだけ逃げ、新たな良い牧地を見つけたらそこで再集結したり、他の部族を加えて再起するのが普通だったわけです。

ここ百年のあの辺のカザフ人たちの辿った運命を見ても、

1916年に帝政ロシアに対し大反乱を起こし、鎮圧されると名目上中華民国の領土だった新疆に逃げる。
      ↓
革命で帝政ロシアが潰れたことで、新疆からまたソ連領となった中央アジアに戻る。
      ↓
スターリンによる強制的な定住化と恐怖政治を逃れて、数万人が新疆へと逃亡。
             ↓
1960年代、文革による民族文化への弾圧と混乱を避けるため、再び数万規模のカザフ人が中央アジアに戻る。

何だか逃げたり戻ったりの繰り返しですよ。

文化的な土壌の違いを痛感した次第です。見てくれはモンゴロイド系で、一般的なロシア人よりもはるかに我々にちかいんですけどね....。



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18 コメント

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Unknown (御神楽)
2009-09-07 08:17:12
 リンチェナの言ってる「武士道」って、もしかして葉隠の事じゃないかな?
 通常、現代語訳は一巻、長くても二巻程度で終わってしまうけど、元々は十巻近くあった筈だから。
 中身も、心構え以外に説教や逸話、生活の心得、振る舞いや身だしなみまで多岐に渡っているから、リンチェナの言ってるそれに近いかも。
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Unknown (Unknown)
2009-09-07 12:44:27
特攻隊の奴らが狂信者か・・・
遺書とか読んでみるとガチで冷静な大学生とか自由主義者のお兄さんとか結構居るんだが
あと逃げればいいっていうけどどこに逃げりゃ良いんだよ
世界中がほぼ敵みたいな状態で周り中海に囲まれた島なのにさw
遊牧系の人間からすれば理解できないのか・・・残念だ
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Unknown (Unknown)
2009-09-07 14:38:24
「アンドレイ、てめえ~」と思っていたら、最後はよかったな。
イワンいいな。イワン。

「逃げればいいじゃないか!」という意見は理屈では分かるけど、感情的には納得行かないな。向こうからすれば、その逆なんだろうけど。歴史の違いは面白い。
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Unknown (にょろ)
2009-09-07 18:07:12
なんか雰囲気が目一杯2chに似ている気がします。特にアンドレイ。
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Unknown (裸族のひと)
2009-09-07 22:58:57
>中央アジア人は反応が非常にドライだったという印象がありますね。

結局のところ、中央アジアの遊牧民で戦前に近代的な国家体制を持てなかった人々は、国家に対する執着や帰属意識を持てないのでしょう。

つまり自分達の国を持たざる民族が、自分の命以上の価値を国家に対して持てなくなったという事かな。
良い悪いは別として、国家を持ったユダヤ人とは対極的ですねぇ。世界中に散らばって住んでいるユダヤの人々は、同じ様に考えているのだろうか。華僑もそうだけど、ちょっと違うような。

それにしても命を賭けて守りたい自国が無いのは、どこか”コスモポリタン=地球市民”を是とする人々とダブって見えるのは俺だけかね。

とにかく平和で有りさえすれば良い、もし攻められたら逃げればいいじゃないっていう考え方だよね。なんだかなぁ。
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Unknown ()
2009-09-07 23:32:05
葉隠ってのは実はそんな大層なものじゃなくて
「俺もそんな武士になれたらいいなあ」程度の軽いニュアンスなんだけどねw
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Unknown (Unknown)
2009-09-08 00:35:47
ヴァリャークもマンジュールみたいにいずれ北欧を征服しようとして名付けられたのかな?
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Unknown ()
2009-09-08 22:20:47
まあ、中央アジアってそもそもまともに独立したのはソ連崩壊してからですし・・・
ソ連の政策によって宗教も禁じられ、民族としての自覚を持たないままここまで来たわけですから、近代的な国家の概念がないんでしょ
あと、ロシア人が特攻隊にシンパシーを抱くのってアメリカと闘ったからってところもあるんですかね?
あのクソ生意気なアメ公に一泡吹かせたみたいな
似たような理由で中東では日本の人気が高かったりするらしいですよ
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Unknown (Unknown)
2009-09-08 23:15:50
負けたら逃げればいい
中共と同じメンタリティーですな

遊牧匪賊に比べれば日本人とロシア軍人は考えが近いのかもしれないね 
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Unknown (裸族のひと)
2009-09-10 00:52:54
>管理人さん
スレ違いですが、最近産経ニュースの【冷戦終結20年現場を訪ねて】(1~10)で旧ソ連諸国のレポートが連載されていて中々興味深いです。

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090803/erp0908030825001-n1.htm

また【地球人間模様】@ロシア元KGBスパイ 民族と歴史が翻弄 も面白かったです。もしこの辺で良いネタが有りそうでしたら、宜しくお願いしまーす。( ´ー`)y─┛~~

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090813/erp0908131415008-n1.htm
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