今日の秋櫻写

こちら新宿都庁前 秋櫻舎

禎子さんのきもの

2013年09月02日 20時14分03秒 | きもの

お暑うございます。
低気圧が上にあるからかな、ものっすごく体が重いし、
凄まじくねむい・・・。

月1でイベントをさせてもらっている
「青山ゑり華」さんのニュースペーパーをよんでいたら
編集後記にこんな風なやり取りが紹介されていた。

スタッフSさん「昼食後のこの時間からこそ睡魔との本気の闘いだー!」
社長「他のもんと闘え!」

すてきですねー。
どっちにも共感するし(笑)


さて本日は7月のつれづれにも
ゲストとしてお招きした冨田禎子さんのおきものを。

ていこさんと読みます。











すべて草木染である。
しかも一反一反にコーティングされてるかのような
エネルギーがすごい。
実物を見た方は「この写真、いけてない!」って
きっと思うだろう(すみません)。

禎子さんは、山崎青樹先生のご子息に草木染を学び、
染織作家として活動しておられるのだけど、
その創作意欲と作品の美しさがすばらしいのだ。

美しさがすばらしいって変な日本語だけど、
でもそんな感じなのだ。

禎子さんは自然界から生まれる色を
さらに探求していく。

使うのは群馬産の生繭座繰糸のみ。
それを植物染色し手織りしていく。

一番の特長は何だろうかと思うに、
ワタシはすぐにこれだといえる。

透明感と仕事の丁寧さ。




こんなに丁寧な仕事ってなかなかお目にかかれない。
手間暇をかけるのも制約がなく、
それはやっている本人がかなりハマっているからだ。
塩漬け繭の志村さんと同じだ。

正直にいうと、ワタシから見ると禎子さんは
ほとんど売ることに躍起じゃない。
だからだと思う。
作品が生き生きとしているだけではなく、
ぬくぬくしているのは。

ぬくーいの。
タオルケットにまるまって
すやすや眠る赤ちゃんみたい、というか。
作品がとっても安心しているオーラを出しているのだ。
安定しているでもいい。

もうひとつ、禎子さんと話していてわかったこと。
どうしてこんなに美しいだけではなく、
透明感のある反物をつくれるのか。

禎子さんは染織に出会うまで、看護師をしてらした。
看護師といえば激務である。
しかもその勤務していたのが
救急外来がひっきりなしにくるところだったという。
犯罪関係や瀕死の状態の患者が次々と運び込まれる、
そういうかなりヘビーな環境に長きにわたって務めていらしたのだ。
ストレスもかなりのものだったという。
そうだと思う。

これをきいたとき、ワタシはあの透明感が腑に落ちた。
この世はバランスである。
振り子が片方にふれるほど、もう片方にも同じだけふれる。
そういうことだと思う。
きれいなものだけを見ている人がつまらないのも、
悲惨なことだけを知っている人が窮屈なのも
そういうことなんじゃないかな。

ちなみに看護師時代は、休日になれば、家で爆睡するのではなく、
銀座に出て呉服屋や個展できものや帯をみていたそうだ。
それが一番ストレス解消になったし、そして
「きれいだったから」。








左が禎子さん。
お話してみると分かるのだけど、
そのままですごくニュートラルな方である。
あと、お赤飯をつくるのがめちゃめちゃ上手!


これはつれづれでの様子。





みなさん、その美しさにうっとりだった。





染料の材料になる植物もお持ちくださった。
それを反物と合わせながら、解説してくださるのだった。
「へえ、これがこの色に」なんてね。






この日は絵羽になったものはすべて
まとわせてくださったのだけど!
その軽さに皆さん騒然。

「上等なものは軽いんです」

以前に志村さんからきいた言葉で
あまりに的を射ていると思ったのでよく覚えている。

上等なものは軽い。

だって考えてみれば、きものも帯も、
漆器も陶器も、落語だって!
ものすごーくいいものはとても軽い。

あ・・・人間もそうかも。そうなのかも。
体重じゃなくて。
心が軽い。
軽いから自由に動ける。

自由な心。正直な心。

一等いいね。

軽い人になるために、ワタシ稼業がんばろっと!


というわけでございまして
禎子さんの作品は秋櫻舎でも今後ご紹介していきますので、
どうぞみなさまその節はぜひぜひいらしてくださいね。
あの透明感は必見、必感ですよ。



冨田禎子(とみた・ていこ)プロフィール
46歳で看護師を辞め大塚テキスタイルデザイン専門学校入学。
染織の道へ入る。結城奥順で手織機を購入し指導を受ける。
山崎青樹氏の子息に植物染色を学ぶ。
毎年、銀座清月堂画廊での作品展に参加。横浜市在住。愛犬家。