さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

「坤為地」(その1)牝馬の貞

2024-08-23 | さわやか易・講座
「乾為天」と並んで、もう一つの特別は卦である「坤為地」に進みます。三十二の陰卦を代表する卦です。ですから、例えば一番下の爻は初六ですが、全ての初六はこの性質を含んでいると考えて良いのです。陰の性質は柔でもあり、柔の代表でもあります。
乾為天が天ですから、坤為地は地です。地は天にも負けない偉大な存在です。地はあらゆるものを蓄えています。あらゆる資源、動物、植物、鉱物、全て地が保有しています。
聖徳ある皇帝の道を説いたのが「乾為天」であるならば、「坤為地」は皇后になる女性の道を説いたものでもあります。又、臣下の道を説いたものとも言えます。
 
「坤は元亨利、牝馬の貞。君子、往く攸(ところ)有り、先んずれば迷い、後(おく)るれば主を得。西南に朋を得、東北に朋を喪ふに利し。貞に安んずれば吉。」
「坤為地」の卦辞です。「乾為天」の卦辞は「元亨利貞」でした。「坤為地」は「元亨利」の後に「牝馬の貞」とある。この「牝馬の貞」が重要である。貞は正しい、堅い、守るを意味するが、牝馬が加わることによって、なおさら「貞」を強調しています。馬の中でも特に牝馬は従順で、大人しく、素直であるとされています。その徳が重要だというのです。
「元亨利」までは乾為天と同じですが、何故同じ徳になるのかというと、「坤為地」は「乾為天」の徳を100%受け入れているからです。素直に従順に受け入れているので、同じ徳になっています。
 
「君子、往く攸(ところ)有り、先んずれば迷い、後(おく)るれば主を得。」
「坤為地」の徳は「乾為天」に従うことが第一ですから、何事も「乾為天」の前に出てはいけない、常に「乾為天」の後に行うことが務めであるということです。皇后は常に天皇の後に従い、臣下は君主の後に従うのです。
この教えは老子にあります。「先んずれば迷い、後(おく)るれば主を得。」はそっくり老子が使っています。老子が易を学んでいたことは間違いありません。老子の教えは、時世に先立たず、時世に順応し、時世について行くことが処世法です。
 
「西南に朋を得、東北に朋を喪ふに利し。貞に安んずれば吉。」
ここの「西南」と「東北」ですが、文王の八卦方位によれば、西南は坤(地)であり、東北は艮(山)になっています。坤(地)は平坦な地を表し、艮(山)は急峻な高い山を意味することから、西南を故郷とし、東北を働く場所すなわち公とみます。つまり、故郷では大勢の朋に囲まれていたが、公の場所では朋はいない。又、嫁ぎ先では昔の朋とは会えなくなるという意味です。公の場所では親戚、縁故、学生時代の友人など、私情を持ち込まない方が良い。持ち込んではいけないという意味もあります。
 
「貞に安んずれば吉。」ここでも最後に貞で結んでいます。昔も今も、人間社会は危険や誘惑が多いもの、人生を穏やかに暮らすことが一番望ましいが、難しいことでもある。ですから、なるべく正しく、堅く、慎重に平穏を守れば吉ですよと念を押している。

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