中国電力が工事の一時中断を決めた上関原発

2011-03-23 | 政治

上関原発建設計画:反対議員が中止要請 町長「一存で決められぬ」 /山口
 上関町3月定例議会で16日、一般質問があり、中国電力が工事の一時中断を決めた上関原発について、反対派議員が埋め立て工事の中止を要請するよう求めたのに対し、柏原重海町長は「推移を見守り判断したい」と答弁した。原発推進の理由に議会の誘致決議があるとして「工事の中止要請は一存では決められない」とも述べた。
 清水敏保議員の質問に答えた。清水議員は、2月21日の埋め立て工事再開後の作業が強引だとして、工事の中止を要請するよう求め「誘致決議は承知しているが、今回の事故で(議員の)考えが変わるのでは」と指摘。柏原町長は「工事中断の間、どうすればいいのか、冷静に議員にも考えてほしい」と述べるにとどまった。
 議会は冒頭、出席者全員が黙とう。柏原町長は、原発工事への慎重な対応を求めたことに対し、中電からは福島第1原発の事故について上関住民への説明を最優先し、工事を一時中断するという回答があったことを報告した。【小中真樹雄】毎日新聞 2011年3月17日 地方版
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東日本大地震と盲人・病者・高齢者・・・の方々、そして原発の恐怖/ 中国電力 上関原発 強行建設工事2011-03-14 | 社会
  『島と海と原発』多様な生き物 「豊かな海を守って」環境保護団体--調査や中止要望
中日新聞2011/03/14
 中国電力(広島市)が瀬戸内海の長島(山口県上関町)に建設中の上関原子力発電所に反対の声が強まっている。反対派住民や環境保護団体などは、周辺の生物多様性が失われると懸念。予定地に近い祝島(同)では、太陽光発電などによってエネルギーの完全自給を目指す試みも始まった。巨大地震による福島原発事故の影響も出そうだ。(白井康彦)
 建設計画が明らかになったのは1982年。以来、地元では推進、反対両派の激しい対立が続く。予定地の長島田ノ浦から、海を挟んで西方約4㌔の祝島では現在、反対派の数が圧倒的。長島、祝島を含む上関町全体では推進派の方が多い。(中略)
 99年から、「長島の自然を守る会」の依頼で生物学者らが現地調査したところ、ウミスズメ類のカンムリウメスズメや、最小のクジラのスナメリ、海藻のスギモク、無脊椎動物の一種のナメクジウオなどの生息を確認。同会代表の高島美登里さんは「『奇跡の海』を守りたい」と訴える。
 原発から排出される温排水影響を懸念する声も強い。京都大フィールド科学教育研究センターの向井宏特任教授は「瀬戸内海は閉鎖性海域。温排水で生物の存在に深刻な影響が出かねない」と強調している。
 中国電力は、上関原発計画に関する環境影響評価書を2001年、経済産業相に提出。「環境保全に万全を期す」とし、「周辺環境への影響は少ない」と説明した。これに対し、日本生態学会や日本鳥学会、日本ベントス(底生生物)学会は2000年から、建設工事の中断や適正な環境影響調査を求める要望書を繰り返し提出。日本自然保護協会も今年2月、「強引な建設工事に抗議し、計画の中止を求める緊急声明」を発表した。
 予定地の長島田ノ浦では、反対派の阻止行動で中断していた埋め立て工事を中電が2月21日に再開した。中電は作業員を大量動員。祝島の反対派は漁船、「虹のカヤック隊」と呼ばれる町外からの若者らはシーカヤックを使い、海上と浜辺で体を張って工事進行を阻止した。
 もみ合いの中、23日には反対派の2人が負傷し、病院へ。24日以降、中電側は大掛かりな行動に出ていないものの、反対派は「中電はまた工事を強行しようとするだろう」と警戒を解いていない。
 今月7日夜にも、祝島の港近くに反対派住民らが集結。月曜日恒例のデモ行動には島民500人弱のうち、80人ほどが参加し、「原発反対」「きれいな海を守ろう」と声を合わせた。大半は高齢の島民だが、全国各地からやってきた応援団の若者らも交じる。島の主産業は漁業と農業。お年寄りらは「原発ができて魚がとれなくなったら生活できん」と話した。(以下略)
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祝島の激突にみる電力会社の非合理と民主党の失敗
マル激トーク・オン・ディマンド第517回(2011年03月12日)
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
 中国電力は先月21日、上関原子力発電所(山口県)建設のための海面埋め立て工事を、1年3カ月ぶりに再開した。建設予定地の対岸に位置する祝島の漁協をはじめとする反対派住民や全国から集まった若者らは、海上にカヌーや漁船を出すなど抗議活動を行い、工事を強行する中国電の職員らと衝突、けが人も出た。緊迫する祝島にいま、何が起きているのか、飯田哲也氏と神保哲生の現地リポートを交えて、日本のエネルギー政策の問題点と世界の趨勢、なぜ民主党政権がエネルギー政策の転換に失敗したのかを議論した。
 10年前NGO環境エネルギー政策研究所を立ち上げ、一貫して日本のエネルギー政策の転換を求めている飯田哲也氏は、上関原発の建設について「他のあらゆる原発建設計画の中で最も非合理」で、「まったく無意味な原子力施設」と断じる。
 そもそも中国電は「電力余り」で、関西電力などに余剰電力を買い取ってもらっている状態だ。中国電は電力需要量は増えるという計画を根拠に、原発建設が必要と説明しているが、実際には販売電力の実績は年々減っている。今年末には「島根原発3号機」という巨大な原発が完成予定で、その電力ですらまるまる余る可能性がある。今後、中国地方の人口減少とともに電力需要、利益率が下がる中で、上関原発への投資は回収できるのかという根本的な疑問が残る。
 中国電がこのような非合理な経営をできるのは、電力会社が市場を地域独占しているからに他ならないが、飯田氏は各社がおのおのの独占を守るために「暗黙の助け合い」を行うなど事実上の談合組織のような調整を行っている、と明かす。
 中国電が原発建設を強行するもうひとつの理由は、他社に比べて石炭(火力)による発電の割合が高いことにある。CO2排出の比率を各社と横並びに合わせるという、真に馬鹿げた、本末転倒の論理だ。そもそも原発は、リスクをとれる東京電力や関西電力など規模の大きな会社が国の産業政策として進めてきた。弱小電力会社はコストの安い石炭を使わされてきた面がある。こういった産業政策のひずみを考慮せず、中国電が「CO2削減」に背中を押されてしまっている、と飯田氏は指摘する。
 民主党政権は、「2020年までにCO2を25%削減」、排出量取引、地球温暖化対策税、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入を09年マニフェストに掲げた。しかし、この政策転換に失敗した原因について飯田氏は、経産大臣に適任者を登用できず、エネルギー族と呼ばれる旧民社党議員や経産省官僚にエネルギー政策の主導権を握られたとみる。
 世界の再生可能エネルギー利用の流れは一層加速している。投資額は年30~50%の割合で増加しており、ドイツでは政府機関などの複数の団体が「2050年までに自然エネルギーを100%にする」という目標を昨年相次いで出した。アメリカでは、原子力発電によるコストより、太陽光発電のコストが安くなったという研究結果も発表されている。
 祝島の住民は、飯田氏が代表を務める環境エネルギー政策研究所と「祝島自然エネルギー 100%プロジェクト」を立ち上げる。デンマークのサムソ島が10年かけて達成したといった先進例にならい、住民が使用するエネルギーをすべて再生可能エネルギーによってまかない、地域の自立を目指す取り組みだという。飯田氏は、原発しか選択肢がないという原発推進派の住民に、そうではない選択肢があるのだと気付いてもらうきっかけにしたい、と話す。
 祝島の漁民は漁業補償金の受け取りを拒み、中国電の原発建設に徹底抗戦する構えだ。地域主権の先行きはどうなるのか。地域からエネルギー政策の転換を試みる飯田氏に、神保哲生と宮台真司が聞いた。


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